吉野家の居酒屋は成功するのか?

7月9日に吉野家ホールディングスは、既存の店舗のスペースを活用してちょい飲み需要を狙う、居酒屋「吉呑み」を展開することを発表しました。

以前から吉野家グループでは釜焼きピッツァ店や蕎麦店など新業態をオープンさせていましたが、今回は既存店の空きスペースを使うそうです。

さて、みなさんはこの吉野家の新たな戦略、成功すると思いますか?

この新たな戦略を検証してみました。「回転率が悪くなるだけじゃないか?」などという考え方もあるかもしれませんが、ガンバレ!日本の飲食店のスタッフの見解としては、大成功とまではいかないがある程度、既存店の収益を押し上げるのではと考えています。

そう考えた一番のポイントは、空きスペース・空き時間を使った二毛作業態であること。これが一番のポイントかと思います。これらを一つ一つ考えていきたいと思います。

1、売上げ増にも関わらず家賃はそのまま

繁華街は坪家賃が高い

釜焼きピッツァ店、蕎麦店の出店とは全く違うのは既存店の2階などを使っている点です。既存店の空中階の空きスペースを活用していくのがメインということで、新規出店とは違い新たに家賃が発生しません

吉野家が出店する、いわゆる「一等立地」は1坪あたりの家賃は少なくとも3万円以上。

それどころか一坪5万円以上のところも珍しくありません。通常の吉野家のお店は25坪〜35坪ほどありますので、毎月の家賃が100万以上のところも珍しくないのです。

とはいえ、この新たに居酒屋として営業をすることによって、通常の営業に支障が出てしまうことはないのか?

実はそれはあまり考えられません。というのも、恐らく「吉呑み」として営業する店舗も、最も来店数が見込めるランチではこの吉呑みである2階も通常の吉野家のように営業するはずです。

逆に言うと、どうしても牛丼・そば・うどんなどの単品食事業態はランチはいいものの、ディナーでの客数は落ちるとも言えます。ということは当たり前ですがディナーの時間帯の席の稼働率はどうしても低くなります。

簡単に言ってしまうと「来店数が少なくなるため売上げが減ってしまう」のです。その暇になりやすい空き時間・空きスペースを上手く活用した戦略と言えます。

固定費はそのままで売上は上がる、そんな可能性が十分あります。

2、同じ吉野家でも「利用動機が違う」客層が取り込める

生ビールをジョッキで飲む男性

あくまで今まで吉野家に来店する人は「ご飯食べよう」という動機です。

メニューの中で牛丼だろうが定食だろうが牛鍋膳であろうが、そしてたまにビールを注文する人もいますが、基本的な来店動機は変わりません。

しかし今回は明確に店名に「呑み」と入れています。既存の吉野家にアルコールメニューを増やしていくこととはかなり違う意味合いを持っています。お店に入る前から「飲もう」という意識が既にあるからです。

吉野家の来店客100人の中でアルコールの注文率はどれくらいでしょうか?そこまで多くありません。

一方、想像するまでもなく「吉呑み」に入る人は注文率ほぼ100%だと思われます。これは「ご飯食べよう」ではなく「お酒飲もう」という全く違うお店だと言えます。利用動機が違う客層を取り込めるのです。

ちなみに吉呑みのメニューは生ビール300円、枝豆160円、刺身310円など非常にリーズナブル。でもアルコールと組み合わせれば客単価は1000円は軽く超えそうですね。

牛鍋膳が吉野家の業績改善の一つである単価向上に一役買ったことは有名ですが、それ以上の効果も見込めるかもしれません。とはいえ金額的にもちょい飲みで考えても安い部類でお得感は十分ありそう!

しかもあくまで通常の牛丼メインの吉野家とは1階と2階でスペースが完全に分かれているため、通常の食事利用のお客様の回転率は落とさないであろうことが想像できます。

神田店でのテストを終え、今後は東京・愛知・大阪・福岡の主要都市で20〜30店舗の出店を目指していくとのことです。

3、同じような考え方は、既存の飲食店でも使える!?

開いている時間帯の活用

このような吉野家さんの戦略は、今やっている店舗経営者も参考にすべきところがあると思います。1階・2階とフロアが分かれていなくとも、例えば時間帯で考えてみるとどうでしょうか?

既に夜は居酒屋でランチは別のラーメン店として経営しているお店、夜はバーで昼はカレー専門店として営業している店、2毛作業態として空き時間・空きスペースを活用している飲食店は数多く出てきています。

このような業態では、同じように家賃が追加発生しているわけではありませんので、8〜10%ほど利益率が高い経営が可能です。(飲食店の家賃比率は業態によるが通常8%〜10%ほど。その分の費用がかからない)

皆さんも今のお店の空き時間や空きスペースの活用を考えてみてはいかがでしょうか?

参考:空き時間と空きスペースを活用した飲食FC ※クリックしなくても大丈夫です笑

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