飲食店のコンセプト作りを5W1H・事例付きで解説【無料ツール付き】

コンセプト作り

飲食店開業の最初の一歩は、メニュー作りでも店舗デザインを考えることではありません。

「お店のコンセプトを明確にすること」

最初のコンセプトで、あなたの飲食店経営の成否が決まるといっても過言ではありません。

資金さえあれば(とりあえず)開業はできます。
ただし安定的に利益を残し、商売を継続するにはコンセプトが不可欠。

お客様が「来店したい」と感じる魅力をどう作るか?

コンセプトこそお店の「魅力そのもの」かつ「土台」

ただし、今回目指すのはキャッチコピーの作成ではありません。
有名どころの例を出すと、吉野家の「うまい、やすい、はやい」、スターバックスの「サードプレイス(第三の場所)」。
これらは、エンドユーザーにコンセプトの魅力を端的に伝えるための言葉です。

土台には「誰に・どんな商品を・どんな風に」提供するか、店舗経営を支える戦略があり、まず考えるべきはその土台です。
飲食店開業の成功率を高めるためには「戦略を練る」=「コンセプト作成」が必要です。

「みんなの飲食店開業」では年間200件を超える開業相談をいただいており、累計では6500件の飲食店のコンセプトを詳しく分析してきました。

オープン後にすぐに経営が軌道に乗るお店や、多店舗展開を実現したり100店舗超のチェーンになるお店など、優れたコンセプトの店舗も数多くありました。

その一方、誤ったやり方でコンセプトを作ってしまい、もしくは明確なコンセプトがなく、開業すらできずに苦労している方も多くいらっしゃるのです。

本ページでは初心者にも分かりやすく、定食屋(飯場 松の葉)を開業した先輩オーナーとカフェ開業で相談に来られたコンセプト作りの実例もふまえながら、飲食店のコンセプト作りを解説します。

プロが使う飲食店のコンセプトシートを無料でダウンロードできますので、ツールを使いながらコンセプトを明確にしていきましょう。

コンセプトシート

▶コンセプトシートダウンロード(無料)

なぜ「コンセプト」を最初に決めるの?

お店のコンセプト

飲食店のコンセプト作りとは、メニューや内装/外装デザインを考えることではありません。

子どもを遊ばせながら、パパ・ママはゆっくり食事を楽しめるイタリアン

ふわふわ絶品わらび餅が古民家で楽しめる和カフェ

低温でじっくり揚げたトンカツを800円で楽しめる

仕事を頑張ってきた人が、帰り道にふらっと立ち寄る定食屋

コンセプト作りは、5W1Hに沿って考えるのが基本です。
「なにを・だれに・どこで・いつ・いくらで・どのように・だれと・なぜ」提供するか検討していきましょう。

飲食店開業の、すべての起点となるのがコンセプト。

コンセプトがすべての原点

店舗のコンセプトが不明確だと、開業のあらゆる場面で迷いやブレが生まれやすくなるもの。

・どこのエリアで物件を探せばいいか
・開業コストはどれくらいかけるべきか
・どんな雰囲気の内装/外装にすべきか
・メニュー内容と価格をどうするか


開業という目標へ向かって一直線に進むために、最初にコンセプトを作りこんでおきましょう。

店舗コンセプトシートを使って要素を整理する

コンセプトシート

実際に手を動かしながら、店舗のコンセプトを整理していきます。
まずコンセプトシートをダウンロードして、お手元にご用意ください。

▶コンセプトシートダウンロード(無料)

本コンセプトシートは2枚組です。
まず1枚目から順に埋めていきましょう。

1枚目は、ベースとなるアイデアと5W1Hを書くシートです。
まず中心のマスに、理想の店舗像を思いつく限り書き込みましょう。

続いて、5W1Hの要素を周囲のマスに書いていき、中心のマスに過不足があれば、追加・削除を行います。

以下は飲食店のコンセプトシート記入例です。

コンセプトシート

上記のシートでは文字が小さいため内容を下記に補足します。

何を 誰に どこで
国産・無農薬・無肥料栽培の安心・安全な野菜、無添加食品を用いて、毎日厨房で手作りした手料理や、飲むと百薬の長となる健康酒を提供。

ティータイムは、デトックスやリラックス効果の高い、無肥料・無農薬ハーブで作ったハーブティーや、オーガニック珈琲を提供。
スイーツも野菜を原料にした、人参のパウンドケーキや、小松菜やほうれん草のブラマンジェを提供
ビジネスマン・OL
業界人
アレルギー体質の方
健康志向の強い方
不健康な方
メタボにお悩みの方
ブライダルをお控えの方
出産をお控えの方
一人でも可
同僚や仲間と
知人友人と
健康志向のOL女子会にも
宴会はなし
仕事が忙しく栄養バランスが崩れがちなビジネスマンや業界人の多いオフィス立地

20坪前後、席数30席~36席(テーブル主体)

カウンター席の代りに、10名着席できるセンターに
区切りの設置できるオーバル大テーブル

干し野菜を作ったり日光にこだわりたいので地下はNG
テラス席が設けられればよりGood
いつ コンセプト いくらで
ランチタイム~ディナータイム

午前中はデトックスの時間と捉え、モーニングは提供しない。

オフィス立地なので週末は定休日。

そのかわり、イベントや企画等でレンタルスペースとして利用。契約農園とのコラボイベントや、農作業手伝いなども予定。
・飲食同源
・天然素材
・国産・無肥料・無農薬
・地産地消
・伝統調理
・お腹だけでなく知識も
・料理教室
・百薬の長
・ベジタリアンもOK
・マクロビではない
・無理をしない
・ストイックでなく楽しく
・アースカラーを基調
・コミュニティ食堂
・シェア・交流の場
ランチタイムは1000円前後のランチメニュー

ディナータイムは、お料理2000円、ドリンク1000円程

デザートは、400円前後で
どのように 誰と なぜ
自慢の国産無肥料・無農薬野菜はサラダバーにて終日食べ放題。

お料理も惣菜を多めにしてテイクアウトにも対応する。

宴会需要を取り込まない代わりに、独身男性や女性をターゲットにしたアフター5の料理教室や自然食勉強会ダイエットセミナーなどを開催する。
同郷でこだわりの野菜作りをしている個性的で愉快な農業仲間と、そこに集まる素材にこだわる個性派料理人、野菜ソムリエ、フードコーディネーターなど、業界経験者と一緒に理想の食堂を実現したい。 利益追求の果てに、農薬・化学肥料・食品添加物は当たり前の現代社会にあって、真に安全な食とは何か、食品を提供する飲食店の有るべき姿とは何か考えた。
結果、お客様にご来店いただいた際に、いつでも安心、安全で、栄養価に優れた、食べると健康になる食品を提供できる食堂を作りたいと思いました。

そのため、最も過酷な環境で生活をしていると想定した都心のオフィス立地営業することで、多くの現代人の助けになると考えました。地方の美味しい農産物のPRも兼ねます。

2枚目は、店舗のキャッチフレーズを作るシートです。

1枚目で浮き彫りになった店舗のウリや特徴を4つ書き出します。
2枚目のマス、A・B・C・Dへそれぞれ書き入れます。
空いているマスへは、組み合わせたフレーズを記入します。たとえば、ABとふってあるマスでは、A「食堂」・B「健康」を組み合わせ、「健康キッチン」というフレーズができました。

最後に出来上がった4つのフレーズを組み合わせて、中心のマスに記入してみましょう。
店舗の特徴を表したキャッチフレーズが完成します。

▶コンセプトシートダウンロード(無料)

5W1Hで店舗のコンセプトを具体化

5W1Hでコンセプトを検討

why なぜ 創業目的・目標・夢
who 誰に ターゲット顧客
what 何を 商品/メニュー
where どこで 立地/物件
when いつ 営業時間/開業時期
how どうやって 接客/サービス

各項目をひとつずつ言語化し、お店のイメージを固めていきます。

掘り下げて言語化したあとは、すべての項目で整合性がとれているかを確認。

「自分がやりたいこと」と「ターゲットとなるお客様のニーズ」がズレていると来店は望めません

5W1Hに基づいたコンセプトは、何度も書き直して、納得性の高いものに仕上げましょう。

では具体的に5W1Hに則って、実際のお店(飯場 松の葉)のコンセプト作りを追体験してみましょう。

コンセプト事例 松の葉

『飯場 松の葉』 忙しいビジネスマンの心と体を和食でホッと癒す

why なぜ(創業目的) ・『和の魅力』を伝えたい
・「ご飯ってこんなに美味しかったっけ?」と改めて気づいてもらいたい
who 誰に(ターゲット顧客) ・忙しいビジネスマン
・近隣の居住者・従業者など地元の大人向け
what 何を(商品) 炊き立てご飯と出汁から作るお味噌汁、和のおかず
where どこで(立地) 日吉
when いつ(営業時間) 11:00~15:00 17:00~21:30
how どうやって(サービス) ホッと心と体を癒されるような接客

事例)広告代理店のキャリアウーマンが和食店で起業した理由

開業事例 松の葉

店舗コンセプトを解説する前に、理解が進みやすいように開業の背景を少しご説明します。

日吉にオープンした「飯場 松の葉」は、炊き立てのご飯と出汁から作るお味噌汁など和のおかずにこだわる和食店。

懐石料理のような華やかな場ではなく、肩のこらないホッとできる日常のひと時を提供します。

開業されたオーナーシェフ松本久美子さんは、いわゆる「脱サラオーナー」で、元々は大手広告会社のキャリアウーマン。

「松の葉」のコンセプト作り、それに合わせた出店戦略は見事の一言。年間100件以上の出店支援を行う弊社の開業コンサルタントも舌を巻くものでした。

why(なぜ)「和の魅力」を伝えたい

「松の葉」が伝える和の魅力

why なぜ(創業目的) ・『和の魅力』を伝えたい
・「ご飯ってこんなに美味しかったっけ?」と改めて気づいてもらう

松本さんが『忙しいビジネスマンがホッと心と体を癒されるような』お店の出店を目指すようになった経緯からみていきましょう。

広告会社でガムシャラに働くこと、約20年。
立ち上げから携わってきた会社が株式上場を果たしたのを機に退職した松本さん。

退職後は人生の充電期間と位置づけ、大学に再入学。
大学生と料理教室の講師という二足のわらじを履き、新たな可能性を模索する中で、たどり着いたのが飲食店開業でした。

これまで積み上げてきた知識・経験に「和の魅力」「料理」を付加し、自分にしかできない新たな仕事を考えられないか?と自分自身に問いかけ続けました。

忙しいビジネスマンがホッと心と体を癒されるような、「和」を軸とした飲食店を開業・運営・経営することが、今の自分に最もふさわしいんじゃない?

開業のきっかけであり、店舗のコンセプトの根幹になったのです。

who(誰に)忙しいビジネスマン

「松の葉」のターゲットはサラリーマン

who 誰に(ターゲット顧客) ・忙しいビジネスマン
・近隣の居住者・従業者を対象とした地元の大人向け

自らの経験から、忙しいビジネスマンをターゲットに。

サラリーマン時代、「たまに夕食を取ろう」と思うと飲食店の選択肢が少なかった

中華料理屋でレバニラ炒めにライスを頼むか、「てんや」の天ぷら定食か

ちゃんとしたご飯・お味噌汁の食事がしたい、と思った時に寄れる店にしよう

what(何を)炊き立てご飯と出汁から作るお味噌汁、和のおかず

「松の葉」メニュー

消費者の動向が変化している今なら、「手作り」「毎朝、出汁をとる」「化学調味料、不使用」は商売として武器になるはず

同時に和の食事の持つ素晴らしさを伝えたい、という想いを叶えることができる!

飲食店で実務経験を積むため、都心の人気和食店へ勤務。キッチン補助のアルバイトを始めました。
一流の料理人と実際に仕事をともにすることで、料理の腕だけでなく、お店の事業コンセプトもますます磨きが。

飲食店で5年の経験を積み、いよいよ開業に向けて動き出します。

この5年間に培ったスキルと前職の経験があれば、「わたしならでは」の飲食店を作ることができる!

where(どこで) 日吉

日吉駅看板

松本さんが出店に選んだ町は、地元の日吉。
日吉は単に地元だからという理由だけではなく、客層、客単価、競合状況がコンセプトと合致するエリア。
一緒に働く仲間が無理なく通える立地であることもあり、候補地に定めました。

where どこで(立地) 日吉

松本さんが目指すのは『忙しいビジネスマンがホッと心と体を癒されるような』お店。

日吉には5つの商店街があり、多くの飲食店があるものの、その多くは慶応大学生をターゲットにした安価路線の店と分析。

地元の大人向けの店が意外と少ないことに気づきました。

続いて、競合を調査。

日吉エリアでターゲット層がバッティングする店が「どのような商品を」「いくらで」提供し「どのような評価」を受けているかチェック。

ライバル店の調査結果もふまえ、戦略的にコンセプト・価格設定・提供メニューをまとめました。

作成されたコンセプトシートを見れば、第3者からもビジネスモデルが一目瞭然。

不動産屋も松本オーナーの意図を汲んだ物件を紹介、金融機関もスムーズに融資を実行することができたのです。

「飯場 松の葉」は作成したコンセプトの通り、多くのお客様から愛されるお店になっています。

松本さんが辿った準備〜開業のより詳しいストーリーは「みんなの飲食店開業」の別記事で紹介しています。

参考記事:広告代理店キャリアウーマンが和食店で起業!そのしなやかな出店戦略を紐解く【飯場 松の葉】

お店のコンセプトと採算性を両立させる

売上・経費を計算

このように、店舗のコンセプトを作れば、やりたいことがより明確に見えてきます。

もしかしたらアイデアがあふれ、「やりたいことが多く、おさまらない」ということになるかもしれません。

そういった場合は、自信と勝算があるプランに絞り、お客様に何を一番アピールすべきか十分に検討しましょう。

コンセプト作りで重要なのは、シンプル&コンパクト。
きちんとターゲットを絞り、何でも屋にならないことです。

多種多様なメニューで、老若男女のお客様をお一人様利用からカップル、ファミリーまで取り込みたい

こうなってしまうと、リスクを負うばかりでお店が成り立ちません。

・まとまりが無いメニュー構成になり、お客様に「何屋」か認識してもらえず集客しづらい
・取り扱う食材が増え、発注・在庫管理も煩雑に。食材ロスが出てしまうリスクも高い
・オペレーションが複雑になり、より多くのスタッフが必要に。人件費があがり、利益を圧迫


コンセプト作りとは、やりたいことを明確にするのと同時に「やらないこと」も明確にすることでもあります。

コンセプトを何度か書き直していくうちに、本当にやりたいことがはっきりしていきます。

納得がいくコンセプトができたら、第三者にチェックを受けることをおすすめします。
身近な家族や友人はもちろん、プロのチェックも入れておきましょう。

練りに練った店舗のコンセプトが、採算性の面では改善の余地があるケースも。

こじんまりとしたスイーツ&カフェを開業したい!内装はナチュラルな雰囲気で、落ち着いてゆったり過ごせるお店がいいんです

少し計画を練り直す必要があるかもしれませんね。仰るような来店客数があったとしても、月8万円の赤字に…

これ、実話です。

お客様から愛されそうな良かれと思って作った店舗コンセプトも、経営視点で考えると改善の余地が残されていることもあるのです。

カフェ開業のコンセプト作りは特に注意

カフェ

店舗コンセプトのご相談で、コンセプトをいちから練り直すことをおすすめしたケースをお話します。

ご相談にいらしたのは、カフェ独立をご検討中の30代後半の女性。
勤めていた企業を退職し、カフェに勤務。
日々お店に立ち、現場経験を積んでいるところでした。

錦糸町周辺で、こじんまりとしたスイーツ&カフェをやりたいんです

OLさんの憩いの場として、気軽に利用でき、ゆっくりと寛いでもらえるお店にしたい

アルコールは出さず、純粋なカフェとして、静かで落ち着いた空間で美味しいコーヒーを飲みながら読書などを楽しんでもらいたい

立地 錦糸町 駅から5分以内、路面
広さ 10~15坪・15~20席
商品 自家製ケーキ、キッシュ、コーヒー&ティー
営業日数 25日稼働(日曜定休)
営業時間 10:00~17:00
人員 オーナー+アルバイト1名
客単価 600円

お話をお伺いし、コンセプト作りで注意すべき点をお伝えしました。

とても魅力的なお店で、お客さんとしては自分も行ってみたいのですが、経営者としては注意が必要です

・気軽に利用・アルコールを出さない
客単価が低い

・ゆっくりと寛ぐ・読書を楽しむ
滞在時間が長い、回転率が悪い

カフェや喫茶店でありがちなのですが、客単価が低いのに滞在時間が長いため、客数も伸びにくい。
「儲かる構造」とは逆のお店は、売上/利益も確保が難しいと言えます。

結局このカフェの収支モデルを作ってみると、想定通りになったとしても月8万円の赤字になってしまうことが発覚したのです。

・想定売上 54万円
営業日数×席数×回転数×客単価=月間売上
25日 x 18席 x 2回転 x 600円 = 540,000円/月

・想定コスト 62万2500円

項目 金額 算定方法
食材原価 13万5000円 売上の25%
人件費 15万7500円 時給900円×7時間×25日
家賃 20万円 10坪×坪2万円
水光熱費 8万円  
その他経費 5万円 衛生費/火災保険/通信費など
62万2500円  

収益が成り立つ計画に練り直しましょう

ランチ営業に取り組んでみてもいいですし、

昼のコンセプトはそのままに、バー要素を足してカフェバーにする方法もあります

勢いや想いだけでは事業はできません。
商売として成り立つかどうか、きちんと数字を使って検証しましょう。

コンセプトや開業のお悩みは、【無料】個別相談会でお伺いしています。
満足度は98%!過去4年間で7000人以上の方に店舗経営に役立つ情報提供をさせていただきました。
専門コンサルタントが個別の状況に合わせたご提案をいたします。

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お急ぎの方・少しだけ聞いてみたい方

コンセプト作りまとめ

コンセプト作りのポイントをまとめます。
・コンセプト作りとは、「何を」「どのように売る店」か考えること
・5W1Hで明確なコンセプトを作る
・コンセプトを作ったあとは第三者のチェックを入れる

文中で紹介したお役立ちリンク

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