飲食店のオーナー(店長)の資質と心構え
個人で飲食店を開業する場合には、お店のオーナーが店長を兼ねていることがほとんどです。
オーナーが現場に入らない場合には、オーナーとは別に、店長を雇い入れる必要があります。ここではオーナー店長であるか雇われ店長であるかに関わらず、「店長」としてやるべきこと、「店長」の心構えなどについて、触れてみたいと思います。
店長の仕事とは?
店長の仕事を一言で言えば、「ヒト」・「モノ」・「カネ」を使ってお店をより良くしていくこと、です。
店長はお店のリーダーであり、お店の経営者です。ですから、お店を持つ経営資源を有効活用して、いかにお店の集客力・収益力を高めていくか、ということを常に考え、それを実現していくことが、店長の最も大切な仕事と言えます。
具体的には、
ヒト
- スタッフの教育・指導・訓練・育成
- スタッフのシフト管理・勤怠管理
- スタッフのモチベーション管理・健康管理
- スタッフマニュアルの作成・改善・指導
- 食材・備品の仕入れ・発注管理
- 商品力・品質の維持・改善
- 店内の衛生管理
- 店舗設備の状態管理
- 売上管理
- 原価・人件費管理
- 現金管理
- 目標管理・売上分析
- 集客・販促の企画・ツール作成・実施管理
- オペレーションマニュアル等の作成・改善
- オーナーへの実績報告・改善提案 (オーナーと店長が分離している場合)など
上記のようなことが店長特有の仕事として挙げられますが、実際には、人が足りなければホールで接客することもありますし、キッチンに入ることもあります。皿洗いやゴミ掃除をすることあるでしょう。しかしながら、忘れてはいけないのは、店長は「店長のすべきこと」あるいは「店長にしかできないこと」をやるべきであって、誰にでもできる仕事は、できる限り、他のスタッフに任せるようにする、ということです。
「できる店長」になるために
「できる店長」とは、「店舗にある経営資源を活用して、お店の集客力・収益力を高め続けることができる店長」である、ということができます。
では、「できる店長」になる為には、何が必要でしょうか?
一般に、「できる店長」には、最低限、下記のような資質・スキルが必要と言われます。
(1)店内のすべてのオペレーションをひと通り自分で行うことができる。
(2)スタッフの性格やスキルを的確に把握している。
(3)店舗運営における計画数値、適正な数値を把握している。
(4)お店の売上・費用・利益等(計数)の見方、分析の仕方を知っている。
(5)経営者の視点で物事を考えることができる。
経営資源を有効活用するには、まず、自店の経営資源が何か?を的確に、詳細に把握している必要があります。
例えば、「ヒト」であれば、単純に、ホールが何名、キッチンが何名ということではなく、「○○さんはこんな性格で、こういうスキルを持っていて、こういうことにやりがいを感じている。
趣味は○○と○○で、人当たりがよく、お客さんに好かれるタイプ」というように、ひとりひとりのスタッフの性格や能力、働く目的などを詳細に把握し、その「人間力」を最大限に発揮できるのは、どのポジションか、誰と組み合わせれば相乗効果を発揮できるか、誰と一緒に仕事すれば不足する部分を補い合ってお互いに切磋琢磨して成長していけるか、ということまで考えてシフトを組んでいく、ということです。
「モノ」に関しても同様で、自店の厨房設備にはどれぐらいのスペックがあって、どういうキッチンレイアウトになっていて、在庫発注点はどれぐらいが適切で、食材はそれぞれどれぐらい日持ちするのか、そういうことが分かっていないと、作業の生産性を高めたり、食材ロスを少なくするといった改善を行っていくことができません。
また「カネ」の部分もとても重要で、店長が、いかにスピーディに、且つ、正確に店舗の数値を把握し、それを適正に評価・分析し、店舗運営にフィードバックしていけるか?によって、お店の業績は大きく変わります。月次よりも週次、週次より日次、日次よりも時間単位で、お店の数値の変化を把握し、いち早く改善の手を打っていけるかどうかで店長の力量が問われます。
そして、これらの有効資源を活用する上で非常に重要なのが、店長としての「人望」です。
幾ら深い知識や高いスキルがあっても、他のスタッフから嫌われていたり、疎ましがられたりしていたのでは活用しようにも活用のしようがありません。結局のところ、飲食店は「ヒト」で回っていますから、スキルや知識を磨くだけでなく、店長としての「人格」を高め「人望」を得る為の努力も怠らないようにしたいところですね。
「できる店長」であるかどうか
自分が、あるいは、雇い入れた店長が、「できる店長」になっているかどうか、を評価・判断するには、次のような項目をチェックするのが良いでしょう。
(1)きちんと利益が上がっているか?
(2)スタッフが活き活きと満足して働いているか?
(3)お店がいつもキレイで清潔であるか?
(4)店長が常にお店の経営状態(収益状況)を把握しているか?
(5)リピーターが増えているか?
上記の全てに○が付いていれば、おそらく「できる店長」と考えて問題ないでしょう。
もし、1つでも×や△が付くようであれば、店長のマネジメントに、まだ何かしらの課題があります。×や△を○にするために、何をしたら良いかを考え、それを実行するようにしましょう。