飲食店開業に必要な金額の目安・調達方法・計画作り

開業時の資金繰りについて考える

飲食店開業に必要な資金については、大きく分けて、「開業資金」と「運転資金」があります。
「開業資金」は文字通り、開業時に必要な資金を指していて、「運転資金」は、開業したお店を継続的に運転(営業)していく為に必要な資金のことを指しています。
具体的には、人件費、仕入原価、家賃、水道光熱費、広告費といったお店を運営していく為に必要な経費全般を「運転資金」と呼んでいます。

一般に、差しあたり開業時に準備しておきたい資金量としては、「開業資金」+3ヵ月分の「運転資金」と言われています。
「投資計画」や「事業計画」を作成する中で、必要な「開業資金」と1ヶ月当たりの「運転資金」については既に明確になっているはずですから、仮に「開業資金」が1000万円、1ヶ月当たりの「運転資金」が150万円だとしますと、開業前に準備しておきたい資金総額としては1450万円ということになります。

コツコツと貯めた自分の貯金(自己資金)が、これに満たない場合、当然ながら、不足する分は、どこか別のところから調達してくる必要があります。
仮に先ほどの例で、自己が500万円だとすると、残り950万円(1450万円-500万円)を調達しなければならない、と言うことになります。

親族や親類に頭を下げてお金を借りる、共同経営者を見つけて共同でお金を出し合う(共同出資)、これから立ちあげるお店(事業)に共感し、資金援助してくれるスポンサーを探す、など色々な資金調達方法が考えられますが、飲食店での開業を目指す人にとって、最もメジャーな資金調達方法は、「公的融資の活用」です。

ここからは「公的融資の活用」を中心に、具体的な資金調達の仕方を見ていきましょう。

どんな資金調達方法があるの?

資金調達計画とは、要は、「誰から」、「幾ら」借りるか、を計画するということです。
そこで、まずは、資金調達にはどんな方法があるのか、改めて、整理してみましょう。

①公的融資

飲食店開業時の資金調達方法としても、最もメジャーな資金調達方法です。
公的というぐらいですから、国や地方自治体がお金を貸してくれる融資制度で、一般の金融機関に比べ、

①金利が安い
②無担保・無保証でも借りることができる
③審査基準が緩い

という利点が挙げられます。一方で、

①借りられる金額に上限がある
②審査期間や融資実行までの期間が長い


というデメリットもありますので、その辺りを考慮して利用する必要があります。公的融資には、大きく、以下の2つに分かれます。

(1)日本政策金融公庫 (旧名:国民生活金融公庫)
国(所管:財務省)が運営する金融機関(特殊会社)です。
日本政策金融公庫が実施する融資制度の中で、飲食店開業時で利用できるのは「新規開業ローン」と呼ばれるもので、この内、最も人気があり、多くの方が利用されているのが、無担保・無保証でも申請が可能な「新創業融資」となります。
個人での開業をお考えの方にとっては、最も利用しやすい融資制度と言えますが、創業資金の1/3以上の自己資金が必要なこと、融資限度額が1000万円であることなどに注意が必要です。

■参考 : 新創業融資
借入限度額 : 1000万円まで
自己資金要件 : 創業資金の1/3以上
返済期限 : 7年(設備投資資金)、5年(運転資金)
利率 : 2.5~3.9% (無担保・無保証の場合)
※ 利率は金融情勢によって変動する場合があります。

(2)地方自治体融資制度(制度融資)

各地方自治体(都道府県、市区町村)が実施する融資制度です。
制度融資は、各地方自治体とその地域の信用保証協会と指定金融機関の三者協調のうえに成り立っている融資制度で、各地方自治体の中小企業者が金融機関から融資を受けやすくするための仕組みになっています。
制度融資は、実施する地方自治体によって融資内容・審査基準が異なり、また利子補給などの特典が付くことで低利子で融資が受けられるなどの特徴があります。
日本政策金融公庫と並び、独立開業者に優しい融資制度の1つで利用者も多いです。

②民間金融機関

市中銀行や信用金庫のことですが、新規の個人開業者は「ほとんど相手にしてもらえない」と思った方が良いと思います。
民間銀行の場合、過去の実績(決算、返済実績、経歴)などをしっかり見て、与信(貸して良いかどうか)の判断を行いますので、新規の独立開業の場合信用を補完するだけの”過去の実績”があることが少ない為、融資が受けられる可能性は低くなります。
法人や個人事業主で過去の実績がある場合は、融資額の大きい民間金融機関を利用されても良いでしょう。

③親・兄弟・親類からの借入

金融機関を利用しない借入として、多くの方が利用するのが親・兄弟・親族などの縁故者からの借入です。
お金を貸す方は、利息収入を期待して貸すわけではないので、返済期日や利息など、交渉しだいで融通が利きやすいのが利点ですが、一方、何かトラブルが生じると、場合によっては、離縁や絶縁など、人間問題に発展する危険性もありますので、注意が必要です。
例え、親兄弟であっても、お金の貸し借りをする際には、きちんと契約書(借用書、金銭貸借契約書)を交わすようにした方が無難です。
なお、親兄弟から借り入れた資金は、あくまで「借金」ですから、公的融資を利用する際の自己資金には算入されませんので、ご注意ください。また、親兄弟から「もらったお金」(贈与金)も、自己資金とみられない認めてもらえないケースがありますので、注意が必要です。

④出資を募る

友人知人、取引先、あるいはベンチャーキャピタルなどから出資を募る、という資金調達方法もあります。
ただ、出資する側は、当然、それに見合うリターンを期待して出資の判断をしますので、しっかりとした事業計画はもちろんのこと、「成長性」や「独自性」、「競合優位性」など、ビジネスの成功確率が高いことをしっかりとプレゼンテーションできるようでなければ、通常、出資は受けられません。
これから立ち上げる事業に自信のある方は、チャレンジしてみても良いかも知れません。

⑤リース・割賦

リースや割賦も資金調達方法の1つです。お金そのものを調達するのではなく、設備機器の調達に必要なお金をリース会社やクレジット会社に立て替えてもらって、それを後払いしていくやり方です。
お店の開業の際に出て行く現金を少なくする方法として、よく知られていますが、リースや割賦を提供する側からすると、お金を貸すのと同じことですから、やはりきちんとした与信審査があります。個人の場合には連帯保証人も必要になる、と考えておいた方が良いでしょう。
借入の場合と同様、元本と利息の支払い(リースの場合にはリース料という名目になります。)をしていくことになりますので、当然ながら現金一括で支払うよりは、結果的に、多くの支払いが発生することになりますので、運営開始の「資金繰り計画」と照らし合わせて、ご利用に当たっては、運転資金不足にならないように、慎重に検討することをおススメします。

必要額と資金調達方法が分かったら、早速、「誰に」、「幾ら」借りるのか、という資金調達計画を立ててみましょう。

資金調達計画を立てる!

資金調達計画は、開業時の必要資金の総額を、「誰から」「幾ら」調達するのかを具体的な計画にするために作るものです。それほど難しいものではありませんので、まずは、サンプルを見てみましょう。

資金調達計画表

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まず、改めて、開業に必要な資金総額を計算します。この際、運転資金を忘れないようにしましょう。
次に、そこから「自己資金」を差し引きます。これが、外部から調達しなければならない「必要調達額」となります。2-(2)で、「誰から」「幾ら」調達するのかを記入していきます。
この際、融資申請した額が満額実施されるとは限らない、など、ある程度、リスクを想定して考えておくことが重要です。1つでも計画がズレてしまったら、全ての計画が台無しということにならないよう、第2、第3の手段を予め考えておいた方が良いでしょう。
最後に、2-(3)で「残り必要調達額」が0円になっていることを確認しましょう。ここにまだ1円以上の金額が表示されているようですと、まだ調達額が足りていません。もう1度、調達方法と調達額を見直してみましょう。

これで、「資金調達計画」の作成は完了となりますが、もう1つ、合わせて作っておきたいものがあります。
それが「返済計画」です。当然ながら借りたお金は返さなければならず、金融機関からの借入であれば、利息の支払いも必要になります。お店はきちんと利益を出しているのに、借金を返済していったら、いつの間にかキャッシュがなくなってしまった、という事態(こういう状態を”黒字倒産”と言います。)を避ける為にも、返済計画は、必ず、作っておくようにしましょう。

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