店舗物件における「定期借家契約」「普通借家契約」の違いとメリット・デメリットとは

「定期借家契約」と「普通借家契約」

物件資料を見るときに、チェック箇所が住所・坪数などの基礎条件と賃料・譲渡金額・保証金などの経済条件だけになっていませんか?

それだけでは、あまりに危険です。

「契約形態」や「契約種別」の欄にも重要な箇所があるのでしっかり確認しましょう。

そこに書かれているのは、「普通借家契約」か「定期借家契約」かの契約形態の違い
賃貸借契約には普通借家契約と定期借家契約の2種類があり、貸主(家主)がどちらの形態で貸すか決めています。
契約形態によって、「契約更新ができるか」「中途解約ができるか」など、借主(出店する)側の負担に大きな違いが出てくるのです。

物件契約前に、2つの契約形態の違いは必ず覚えておいてください。

2つの契約形態の違いはもちろん、定期借家契約のメリット・デメリットや、実際に定借で契約している店舗オーナーの事例も交えて解説していきます。

定期借家契約と普通借家契約の違い

定期借家契約と普通借家契約の大きな違いは、「契約更新」と「中途解約」にあります。

契約更新

普通借家契約は定められた契約期間が満了する際に、賃貸契約を更新できる契約です。借主が解約を希望しない限り、引き続きそこで商売が継続できます。

一方、定期借家契約は契約期間満了とともに、”必ず”契約が終了します。借主は物件から退去しなければなりません。貸主(家主)が契約期間をコントロールできる契約です。

定期借家契約の特性を理解せず契約してしまうと、以下のような事態が起こりかねません。

困っている男性

「1500万もかけて工事して、理想の店を作ったのに、解体して退去するのか…」

困っている女性

「3年営業してやっとお客様がついてきたのに、移転してまたイチからスタートか」

中途解約

普通借家契約の解約を行うには、借主から貸主(家主)へ解約したい旨を伝えます。これを解約予告といいます。
解約予告をいつまでに行わなければいけないかは、契約内容により異なりますが、3~6カ月前の告知を求められるケースが多く、解約予告期間中の賃料は支払い義務があります。

定期借家契約の中途解約は、原則できません契約期間中は満了日まで借りることが前提となっています。
ただし、解約について特約がある場合はそちらに従います。
※特約がなくても中途解約ができる法律がありますが、これは住居が対象。店舗賃貸物件にはあてはまりません。

店舗物件における定期借家契約と普通借家契約の違い一覧

  定期借家契約 普通借家契約
契約方法 文書による契約。
契約書とは別に「更新がなく、期間の満了により終了する」旨を説明のうえ、書面で交付
文書でも口頭でもよい
契約期間を1年未満とした場合 1年未満の契約も可能 期間の定めのない賃貸借契約とみなされる
賃料の値上げ・値下げ 請求できるものの、特約が優先される 請求できる
更新 期間満了により終了 貸主に正当な事由がない限り、借主は更新し続けることができる
借主による中途解約 原則は不可。特約があればその定めに従う 契約内容に従う

双方の合意があれば、定期借家契約でも再契約できる

前述のとおり、定期借家契約は更新なしが基本。
借主が契約継続を希望しても、貸主が「ノー」と言えば、契約通り解約・退去しなければいけません。

しかし、貸主・借主双方合意で、再契約が可能な場合があります
ただし、普通借家契約の更新と異なり、大きなコストがかかることにご注意ください。

再契約のため、通常の更新よりもコストがかかる

新たに契約を交わすため、礼金や保証金を請求されます。
前契約で預けている保証金については、償却分を除いて返金されます。
再契約の実務では手間を省くため、返金せずに再契約分としてそのまま充当する処理が一般的。その場合、償却分のみ補てんします。

経済条件などが大きく変わる可能性がある

以前の契約を承継するものではなく、新たな契約です。
その時の相場に応じて条件見直しを行う貸主が多く、家賃額などに大きな変更がある可能性があります。
再契約をするかどうかの前に、条件面の確認は必須です。

定期借家契約を交わす前に確認しておくべきこと

普通借家契約にくらべ、借主に不利な点が多い定期借家契約。
理想とする立地・賃料条件の物件と巡り合えたのに、もし契約形態が定期借家契約だったら。どのように検討を進めるべきでしょうか。

再契約ができるか

定期借家契約の最大の懸念点は再契約できるか。
(前提として、期間満了時に貸主が再契約を認めなければ、退去しなければなりません)
どの程度の確率で再契約が認められるかは物件によりそれぞれです。
不動産会社へ問い合わせる際、「再契約が認められるか」「なぜ定期借家契約なのか」確認してみましょう。

課長っぽいサラリーマン

「建物が古くなったから3年後に取り壊す予定なんだ。再契約はできないけど、退去するときに解体工事の費用負担はありません」

穏やかそうなサラリーマン客

「トラブルを起こした入居者に出て行ってもらえなくて困ったことがあって、念のために定期借家契約にしているんだ。マナーを守れる入居者さんなら、基本的に続けてもらっているよ」

貸主側にそれぞれ理由があります。そこを確認することで、再契約の確度が読み取れる場合があります。

契約を引き継ぐ場合は、残りの契約期間に注意

現テナントさんと「契約名義の変更」を行い、定期借家契約を引き継ぐケース。
新規の契約ではない場合は、契約期間に注意してください。引き継ぎのため、契約期間の残存期間もそのままです。

3年の定期借家契約で2年居住した物件を引き継いだ場合、残り期間は1年です。
1年後には退去しなければいけません。

定期借家契約のメリット

定期借家契約は基本的に更新がないため、設備投資の重い飲食店には不向きとされています。投資を上回るメリットを感じ、出店に踏み切る場合も。

(千葉県内で出店したテイクアウト店のケース)
定期借家契約のリスクを理解したうえで、出店を決めたテイクアウト店の店舗オーナー。10年の定期借家契約のため、再契約は行われません。

シェフの女性

「10年の間に投資を回収し、利益が残せる確信があったので、出店しました。更新料もないため、良い選択ができたと思います」

定期借家契約のメリットを解説してきます。

周辺相場より賃料が割安なものがある

契約更新と中途解約ができない点から、定期借家契約は入居者に敬遠されがち。
「賃料を下げて入居者を誘致しよう」という家主の考えから、周辺相場より賃料が安く設定されていることがあります。
実際に、3年間の定期借家契約の物件で、相場より半額で募集がかかっていたことがありました。

更新料がない

普通借家契約の店舗物件では2年に1度、賃料1カ月分の更新料がかかるのが一般的。(※契約内容によって異なります)
ですが、定期借家契約は更新がないため、更新料がかかりません
10年の定期借家契約だった場合、賃料5カ月分の更新料が浮くことに。

家主審査が比較的通りやすい

万が一、悪い入居者(賃料の支払いが滞る・周りとトラブルを起こす)が入居しても、定期借家契約で期間満了を迎えれば、そのまま退去してもらえます。
家主からみると普通借家契約より安心感があるため、審査も容易になる傾向があります。

さいごに

普通借家契約とは違う部分も多い定期借家契約。
事前に内容を理解しておくことが重要です。

出店候補物件を見つけたら、契約種別の欄もあわせてチェックすることをおすすめします。

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