オープン前販促

飲食店の集客は開業してからだけ、というわけではありません。店舗をオープンする前の内装工事中、もしくはそれ以前からオープン前販促を打つことで来店客を増やすことはできるのです。

たとえば、淡路町駅徒歩3分の場所にオープンした『とんかつ小料理 やまぶき』
目立ちにくいビル3階に出店しながらも、順調に集客して立ち上げたお店です。安定した黒字売上まで半年〜1年かかるお店も少なくないなか、開業からわずか2カ月で黒字を実現。

【実例】『とんかつ小料理やまぶき』

オープン前から取り組んだ販促手法は、A看板での告知。
オープン前からA看板を道に出しておき、どんなお店がいつオープンするか、告知を徹底。看板にはクーポン付きのチラシを付け、お客様が手に取ってくれるよう工夫をしました。

チラシは無くなったら補充を繰り返し、最終的に2000枚をオープン前に配布。オープン前からコストをほとんどかけない0円集客で2000人の見込み客にお店を知ってもらえたことと、「とんかつ小料理やまぶき」の早期立ち上げとは無関係ではありません。

オープン直後から売上に初速をつけたい場合、オープン前の集客は非常に有効です。

オープン前販促では、いつどこにどんな店舗がオープンするのか、当日期待感をもってご来店いただけるような内容を打ち出す必要があります。
お店がオープンするまでのストーリーや、お店にかける思いやこだわりなどを盛り込み、共感を誘う内容が効果的。

「へぇ、こんなお店がオープンするんだ!行ってみたいなぁ!」
「共感した!応援しよう!」

事前にこう思ってもらえれば成功です。

スムーズな立ち上げを実現するオープン前販促の具体的な実施方法について実例を交えながらお伝えします。

まずはオープンまでのスケジュール確認

まず新規オープン日までのスケジュールを明確に設定・確認しましょう。
いつまでに、どのような販促を行う必要があるのか。販促計画を考えていくうえで、スケジュール管理は必須です。

店のオープン準備にかかりきりになってしまう、初期販促を実施できず最初の集客に苦労する飲食店も少なくありません。
オープンまでにすべきことが多いからこそ、いつ何をやるか、スケジュールを立てておきましょう。

・レセプションで知人を招待し、店をお披露目
・スタッフとのロールプレイング
・プレオープンで実践練習を積み、クオリティーを高める

以下は25日間でオープン準備を行った場合のスケジュール例です。

レセプションの招待状は早めに準備して郵送しておかないと、迷惑がかかるな。

ショップカードはレセプションで配れるよう準備しておこう。

グランドオープンに仕掛けられるようチラシを手配しよう。

まずはオープン日までのスケジュールを立て、各イベントに間に合うよう販促物を手配しましょう。

注意!オープン販促は諸刃の剣

新しく誕生したお店は「新しい」というだけで目立ちますし、準備期間中も周辺住民注目の的になっています。
工事しているお店を見ながら「どんなお店ができるんだろう?」と楽しみにしている方は少なくありません。

ちょっとした特典を付けたオープニングチラシを配ったり、オープニングキャンペーンとして割引やドリンクサービスなどを実施すれば、オープン直後でも来店数をグッと増やすことは難しくはありません。

しかしオープニングキャンペーンは、”劇薬”になることもあるので注意が必要です。

集客効果が高いだけに、使いどころに注意しないと、逆に店舗経営をピンチに追い込むリスクもはらむ「諸刃の剣」なのです。

悪い噂(悪い口コミ)の要因になりかねない

オープン当初は慣れないオペレーションで、どうしても料理提供などにも時間がかかったり、ミスが発生することもあります。

過度なオープンキャンペーンで店の運営キャパシティーを超える集客を行うと、提供時間・味・品質・接客のどこかしらに問題が発生することも。当然、お客様が不満足を感じてリピートしてくれることはありません。

せっかく来てみたけど、料理が少し冷めててガッカリ

忙しいのはわかるけど、店員さんの態度が悪いから、もう行かない

料理出てくるの遅いし、レジもだいぶ待たされたな~。あの店は避けたほうがいいかも、って友達にも教えてあげよう

味はいいけど注文取りにこない。こりゃ、評価は2点だな。食べログにコメントしとこう。

リピーターを捕まえるどころか、お店に悪い印象を持つお客様を一気に増やし、悪い噂(口コミ)をバラ撒くような結果になりかねません。

お客様の受け入れ体制を整えておく

前述のようにオープン販促をかけると、想定以上の来店があることも。不慣れなスタッフが対応しきれない可能性も十分あります。

・1品1品つくるのに、想定以上に時間がかかる
・お客様を待たせているという焦りから、オーダーやレジ打ちでミス

販促を仕掛けるグランドオープンをいきなり迎えるのではなく、練習のために1ステップ設けることをおすすめします。来店いただいたお客様に満足していただけるよう準備を整えておきましょう。 それが本番前に行うレセプションやプレオープンです。

レセプションや招待客のみで運営するお披露目会。満席になるくらいの客数を招待しておき、ピーク時のオペレーションを疑似体験しておくことがコツ。

レセプション・プレオープンはオープン前の試運転。実戦を体験できる貴重な機会。レセプションやプレオープン期間に出た問題点は必ず書き出し、スタッフ全員が確認できる形にしておきます。

ご自身の気づきやお客様の意見も含めて一覧にしておき、すべて解決したうえで、グランドオープンを迎えましょう。

特に確認しておくべきオペレーションは3つ。

①仕入れ・仕込み・バックヤードのオペレーション
・食材や飲料の仕入れは十分か
・厨房機器類の動作確認

②接客・ホールのオペレーション
・ミスなくオーダーがとれているか
・お客様に行き届いたサービスができているか

③厨房・キッチンオペレーション
・衛生面に問題がないか
・料理の提供時間は守れているか

この3つ全てが連動して動き、はじめてスムーズな営業ができます。

練習ではうまくいっているものも、多数のお客様を相手にするとうまくいかなくなることも。
レセプション・プレオープンでしっかりチェックしましょう。

こちらのチェック表のひな型は無料でダウンロードいただけます。
ぜひご活用ください。

プレオープンチェック表

レセプション・プレオープン・グランドオープンの3段構えにすることで、オープン販促のリスクはかなり減らすことができます。

オープン時の集客アイディア

お客様を受け入れる体制を整えることができたら、集客も積極的に仕掛けていきます。代表的な手法をまとめてお伝えします。

インターネット対策

せっかくお店に行こうと思ったお客様が「道に迷って来れない・場所が見つからずに失客」してしまうのは必ず避けたいところ。

お店の場所・営業時間・電話番号などの基本情報は、お客様が調べた際にすぐ出てくるよう準備しておきましょう。

Googleマイビジネスへの登録

グーグル検索やグーグルマップで検索したとき、お店の候補が出てきますよね。
これはGoogleマイビジネスに登録している店舗です。

無料かつ集客効率にも大きな影響を与えるので、グーグルマップの登録は必ず行いましょう。
営業時間や電話番号、ルートの情報を Google 検索や Google マップに掲載されるだけでなく、最近ではグーグルマップから写真付きの口コミを投稿されることも多く、集客への影響が大きくなってきています。

登録方法は別ページで解説しています。あわせてご確認ください。
飲食店集客に効く!Googleマイビジネス(マップ)の登録方法と活用のコツ

食べログの基本情報登録(無料)

食べログからの有料集客を考えていない方も、基本情報の登録は無料です。
住所や電話番号や営業時間をオーナー様みずから登録することで、正確な情報を載せることができます。

見慣れているお客様が多いため、食べログページから場所の確認ができると喜ばれます。

SNS

twitterやfacebookなど、無料で取り組めるSNSの運用を検討してみましょう。
SNSは自店舗のアカウントをお客様にフォローしてもらうことで、無料で継続的に告知することが大きなメリット。新規だけでなく、来店いただいたお客様に再来店してもらうのにも非常に有効です。

オススメは内装工事の段階など、開業前からSNSのアカウントを立ち上げておくこと。徐々にお店ができあがっていく過程を知ってもらうことで親近感・愛着がわきます。

知人・取引先へのメッセージ

知人や取引先へオープン告知を行う時に、メール・SNS・封書・ハガキなど送付手段はさまざま。しかしここはお店の第1歩として、封書できちんと送付がオススメです。

手間はかかりますが、手書きのメッセージを付けるとより気持ちが伝わり、実際に店に足を運んでもらいやすくなります。

【実例】本八幡にオープンしたフレンチレストラン『Lupin(ルパン)』

開業をサポートした弊社担当者に、こんな手書きのメッセージを添えたオープン案内を頂戴しました。

もちろんお取引先でありますので、弊社担当はオープンにかけつけました。当日オーナーにお聞きすると、手書きの案内状を見た方の来店率は非常に高いものだったそうです。

チラシ(ポスティング・ハンディング・折込み)

地域密着経営を目指して、住居立地で開業する店ではとくに有効なのがチラシでの販促。ポスティング(投函)・ハンディング(手配り)・新聞折り込みと、3つの方法があります。

・ポスティングは周囲に住んでいる人・働いている人へアプローチ。
・ハンディングは店前や近隣を通る人へのアプローチ。
・新聞折込はその名の通り、朝刊夕刊にチラシを差し入れるアプローチ。

チラシ活用はどの手法を使うべきか「ターゲットの年齢層」が重要です。
財団法人新聞通信調査会が2016年に行った調査によると、新聞購読世帯は40代以上が多数。
年齢層が高いほど購読率が高く、30代46.5%、40代65.5%、50代77.7%となっています。

中高年齢層には有効なアプローチ策になりますが、20代にお店を認知してもらうには、新聞折込は有効な策とは言えません。

ちなみに新聞折込チラシの反応率は一般的に0.3~0.5%。
もし反響が少ないようであれば、紙面の見直しを検討しましょう。

冒頭でお話しした『とんかつ小料理 やまぶき』は、A看板と一緒にチラシを置いておくだけで、2000枚の配布に成功しています。これは手間のかからないハンティング施策として、工事期間中から店舗前に並べておくだけでも有効です。

あえてオープン販促をしないという選択も

前述のとおりオープン時は販促をしかけやすいタイミング。しかし、あえて広告宣伝やキャンペーンを行わずオープンする手法もあります。
これを「サイレントオープン」といいます。

慣れないオープン時期は何かと問題が起きがちサイレントオープンは急激にお客様を呼び込まない分、トラブルやクレーム防止に効果があります。

開業時にサイレントオープンを選択したお店をご紹介します。

サイレントオープンした「ワインカフェ門前仲町」

2017年10月2日に新しくオープンした「ワインカフェ門前仲町」のオーナーの小原さんは、食大手チェーンで24年勤めあげた大ベテラン。オープンわずか1か月ほどで早くも経営を軌道に乗せることに成功しました。

オープン販促はせず、サイレントオープンでのスタートでしたね?

はい。来店してくれた一人一人の方を大切にもてなしたい、と思ったんです。

小原オーナーは長い飲食店経験のなかで「ひとりひとりのお客様」の大切さを痛いほど知っていました。

勇気を出して初めてのお店に足を踏み入れたお客様に、最大限のおもてなしを提供する。
あえてジワジワと認知を広げていくサイレントオープンの道を選びました。

ただしサイレントオープンは認知がゆっくり進むため、店舗が軌道に乗るまで時間がかかってしまう可能性もあります。

そこで、小原オーナーは余裕をもって運転資金を準備。
開業資金の目安としていわれる固定費6カ月分を上回る1年分を用意していました。
6カ月で立ち上げることを計画では目標としながらも、念のため1年かかっても耐えられる資金を準備しておいたのです。

長い飲食業経験が活き、結果的には当初の計画よりスムーズにお店を立ち上げることができました。

過度な集客を避けるため広告宣伝は行っていませんが、集客に積極的でなかったわけではありません。お金をかけない集客の基本はきっちりとおさえていました。

それは、入店を迷っているお客様がいたらそっとドアを開けること。

無理にお誘いしませんが、入店を躊躇されているようなお客様には、声を掛けるようにしていますね。

今、来ていただいている常連さんも、ほとんど最初はそんな感じです。意外とみなさん、背中を押してくれるのを待っていたりするでしょう?

実は「ドアを開けて声をかけるだけ」をやっていないオーナーやスタッフは多いのです。もしやっていないなら、今日からでもお声がけしてはいかがでしょうか。

ワインカフェ門前仲町のスムーズな立ち上げ方については、別記事で詳しくまとめています。よろしければご参照ください。

飲食業界24年のプロが、開業直後にもっとも「警戒」することとは?【ワインカフェ門前仲町】

お店をスムーズに軌道にのせる

飲食店のオープン日は単なるスタートに過ぎません。お店の経営をスムーズに軌道にのせるため、どのようにオープンするかが重要です。

広告やキャンペーンをうち、にぎやかなグランドオープンにするもよし。
(グランドオープン前にプレオープンで実践練習をすることをおすすめします)
サイレントオープンでゆっくり立ち上げるもよし。

広告宣伝をする場合は、スタッフのトレーニングも念入りに行いましょう。

レセプション招待状・プレオープンチェック表ダウンロード

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