店舗物件の具体的な探し方と全体の流れ

初めて店舗物件を探すときに、「間違った」探し方になってませんか?
アパートやマンションなど住宅賃貸物件と同じような探し方で通用する部分も多少はありますが、「店舗」特有の視点や知識は絶対に必要です。

事前に正しい探索方法や流れを知っておかないと、時間とお金で大きな”損”をしかねません

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物件探し〜契約までの疑問を解消いただけるよう、不要な損やリスクを抱えないよう、10年以上の経験を持つテナント物件の専門家が解説しました。

どんな事前準備が必要か、契約までどのような流れになっているか知っておきましょう。

賃貸契約までのおおまかな流れ

店舗物件を探したことはなくても、住居の物件探しならご経験があるのではないでしょうか。
基本的な流れは、住居も店舗も変わりません。

アパート・マンションといった住居用物件を探する時、どんな手段をとりますか?
住みたい街の駅前の不動産屋さんに訪問し、条件を伝えて、物件紹介を受けるもちろん、事前にHOMESやSUUMOやATHOMEなどの不動産ポータルサイトで物件を調べ、希望物件を扱っている不動産会社に問い合わせするのが一般的ですね。

そして、良さそうな物件を内覧→申し込み→貸主審査→OKであれば賃貸借契約締結。これが賃貸借契約の基本的な流れで、店舗も住居と変わりません。

では、順を追って確認していきましょう。

「出店すべき」物件の条件を考える

この部分が実は最重要
店舗ビジネスの生命線はやはり物件。
しかし、「とにかく繁華街や駅近で出したい」などやみくもに物件を探すのはNG
だれもが関心を持つ一等立地の物件でもいいのですが、見つかりにくいうえに経済条件も高額になりがち。また、ライバルも多く、取得できるとも限りません。

自店のビジネスが成り立つ可能性が高いのが「出店すべき、良い物件」です。どのようなものか、徹底的に考えていきましょう。

例えばラーメン店を出店したい場合。

・どのような方をターゲットにするのか
・ターゲット層の集客が狙えるエリアはどこか
・設定した売り上げ計画が達成できそうか
・価格設定はターゲットに支持される価格帯か
・コストが膨らみ過ぎていないか


出店する側の思惑や計画によって、出店すべき物件は異なります。
まずはご自分の事業計画・コンセプトをもとに、物件探しの諸条件をしっかり固めることが第1歩。

開業しようとしている業態・店舗が商売を継続していくために、どんな物件でなければいけないのか、希望のすべては満たせなくとも「絶対に外せない要件は何か」を考えましょう。

加えて、夢物語にならないために、もう一歩踏み込みます。

物件契約にかかる費用をふまえ、「エリア」「予算」「予算に合った物件の質」をチェックし、現実と乖離しない条件をつくっていきます。

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物件契約にかかる費用(物件取得費用)

物件取得費用の目安としては、賃料の10カ月程度。

取得費の内訳は以下の内容をご覧ください。

①保証金・敷金
保証金は貸主に預けるお金。償却分以外は、解約後に返ってきます。

②仲介手数料
物件を仲介した不動産会社に支払う手数料で、賃料の1ヶ月分。

③礼金
貸主に対して支払うお金。こちらは上限なく貸主が設定できます。

④前家賃
賃料は前払いのため、契約時に初月の分を支払います。

上記4つの支払いを完了しなければ、物件を借りることができません。

物件取得費(契約時)で大きな割合を占める、「保証金」。
通常1ヶ月賃料×〇ヶ月分と設定され、この「〇ヶ月」については物件によってかなりばらつきがあります。

飲食店舗の保証金の標準は、賃料の6ヵ月~10ヶ月
マンションなど住居不動産より高めの設定には2つの理由があります。
1つは、商売で使用する店舗物件は、滞納など賃料の未払いリスクが高いから。
売上に波が出た月や赤字月は、どうしても家賃が支払えなかったりするケースなど。

2つめに、退去時のスケルトン戻し工事費用の補填として。
退去時は借主(テナント)がスケルトン戻しを行い、家主に返却する契約が一般的。
万が一、解体工事が行われなかった場合、家主は保証金から充当して工事を行います。
解体工事には1坪あたり5〜10万円のコストがかかるため、リスクヘッジのための保証金が高額になりがち。

保証金を減額してもらう替わりに、「家賃保証会社」に加入する、他の諸条件と抱き合わせで交渉なども考えられます。ご自分の懐事情(物件取得予算)と照らし合わせましょう。

また、居抜きの場合は造作譲渡料と、それに関する手数料がかかります

⑤造作譲渡料
造作譲渡料は前テナントから内装設備などの店舗造作を買い取る代金。

⑥造作譲渡に関わる手数料
取得対象がスケルトンではなく居抜き店舗の場合、造作譲渡の手数料を紹介元の業者に払う場合があります。

この造作譲渡手数料は、業者や物件により大きく異なります。
造作譲渡の手数料がかからない場合もあれば、譲渡金額の5〜10%や1件30〜50万円など。その都度、確認しましょう。

家主によっては、保証会社へ加入を求められることも。
保証会社は、賃料の支払いが滞った際に、家主(貸主)へ支払いを行う会社です。
借主は加入時に、家賃の0.5~1ヶ月分のお金を保証会社へ支払う必要があります。

賃料

賃料は、「広さ(坪数)×坪賃料単価(1坪あたりの価格)」で構成されます。
一般的に好立地であるほど、坪あたりの単価が高額になっていきます。

エリアによって、ある程度の坪単価相場が醸成されているので、物件サイトをチェックし、出店希望エリアの賃料相場を知ることから始めましょう。
予算と照らし合わせれば、そのエリアでの出店が現実的かどうか判断できます。

また賃料相場を把握することで、「物件判断の物差し」ができます
いざ物件探しを始めた時に、目にした物件が「割高」か「割安か」「なぜこの賃料か」ということが判断できます。

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坪単価は、広さにより上下します。
一般的には小さな店舗(10坪以下)であればあるほど、坪単価は割高に。
特に、20坪以下の店舗は個人開業者が扱いやすいサイズのため人気があります。

広さ

店舗の「広さ」をどう考え、決めるべきか。
広い店舗であれば、それだけ客席を確保でき、客数をベースにした売上計画が容易に達成できそうな気がします。

しかし、本当にそうでしょうか?

店内が広いだけに賃料も高めに、席数が増えれば人件費も増えていくもの。
オペレーションをよほど上手く組まないと、売上に対してコスト高になり、売上があっても利益が上がりにくい店舗に。

まずは、ご自分がお考えになっている店舗の在り方からしっかり考える必要があります。

極端な話、おひとりでカウンター越しに接客し、ピーク時にホールに従業員1名入り、MAX2名で回すお店なら、5坪で十分です。

同じ居酒屋開業でも、コンセプト・業態・オーナーの考え方によって必要な広さ・坪数は異なるもの。

「従業員は雇わず、自分1人できりもり。カウンターだけの店でお客様と会話を楽しみたい」
「広い座敷をつくって宴会に対応できるお店をやりたい」

『どのような店にしたいか』から、適切な規模を考えましょう。

すでに計画している売上から必要な広さを知りたい場合は、”席係数”を使って計算できます。

売上高=坪数×席系数×満席率×回転率×客単価

「席系数」は、1坪に設置できる席数のことで、目安は1坪あたり1.3〜1.5席。
高級店でゆったりめの配置であれば1。詰めて座っていただける店では1.8にします。

「満席率」は、座席稼働率。
満席時にどの程度の空席があるかを示します。満席であっても、全ての席がキレイに埋まることはありません。4人テーブルに2人組のお客様が座っているケースも想定されます。目安は0.6〜0.7です。

「回転率」は、1時間当たりにお客様が入れ替わる回数。
滞在が2時間なら0.5、30分なら2です。

出店エリア

開業・出店エリアは、自店ターゲット客層やお店のイメージを考慮して検討します。

立地には大きく分けて、3つの立地属性があります。
①オフィス立地 ②住宅立地 ③商業立地

①オフィス立地
新橋や丸の内など、オフィスが密集してあるエリア。
サラリーマンやOLのランチ需要が多いものの、オフィスが休みの土日祝は厳しく、売上が伸びにくい傾向があります。

②住宅立地
居住者が多いエリア。
地域に根差したお店や主婦層をターゲットにする店舗にとっては好立地。
①③の立地に比べ、遠方など外部からの流入はそこまで見込みにくい傾向があります。
世帯の年代構成や所得により、好まれる業態が異なります。

③商業立地
池袋や渋谷など、商業施設が集まっているエリア。
平日・休日ともに、遠くからでも人が集まります。
人通りも多く商売もしやすい一方、競合店との競争が激しく、賃料も高額になりがちです。

キレイに3つに分かれているわけではなく、オフィスと住居が半々の割合であるような立地もあります。
どのようなエリアが「自店の」出店に向いているか、ターゲットに合わせて考えましょう。

物件を探す

物件探しの下準備が済んだら、いよいよ不動産屋などを使って物件探しをスタート。

・下準備チェックリスト
自店が出店する店舗物件の「外せない」条件が明確になっている
資金準備(融資)の計画・算段ができた
賃貸契約に必要な連帯保証人候補から内諾を得た

2店舗、3店舗目と経験を積むごとに意思決定のスピードは速くなりますが、やはり最初の1店舗目となると慎重になることも多いでしょう。
しかし、「良い物件であればあるほどスピード勝負」だということを覚えておいてください。

居抜き物件サイト「店舗そのままオークション」で扱う約半数の物件は、募集開始~2ヶ月以内に契約が完了します。

裏を返せば出店検討時は常に新着物件にアンテナを張り、「これだ」という物件が出てきたら内覧と申し込みはスピーディーに進める必要があります。
即内覧→(内装現調)→予算確定→申し込みまで一息に行わなければなりません。

たとえ同じ物件で競合が現れても、準備周到でスピーディーにやり取りできるが優先されるのは必然。
申し込み時に必要な、連帯保証人の準備や契約に必要な資金の手当てなど、具体的な物件探し前にしっかり準備してきたことが大きな差に。

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物件を探す方法

物件探しは、色々な手段があります。
それぞれに長所・短所がありますので、ご自分のスタイルにあう手段はもちろん、事情が許すなら、より多くの手段で探すほうが断然有利です。

インターネット

まず、インターネットでの探索です。サイトごとに特性はさまざま。
居抜き物件・店舗物件を専門に紹介しているサイト、不動産という括りの中で一部店舗物件を紹介しているサイト、居抜き物件の中でも「飲食店」や「美容業」に特化するサイトなど。

1つのサイトに絞らず、複数のサイトを見るようにしましょう。
賃貸物件には、複数のサイトで紹介されているものもあれば、特定のサイトのみで取り扱われているものも。

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条件に合うものが見つからなくても、近しい物件を扱っているようであれば、サイトに登録しておきます。新着物件のお知らせや希望条件の物件が出てきた際のお知らせなどを発信するサイトであれば、受動的に情報をとることができます。なかには、新着物件お知らせのメールだけチェックする開業希望者もいるほどです。

出店エリアの不動産会社を活用

出店エリア(駅)をピンポイントで決めているのであれば、該当エリアの物件情報に強い、地場の不動産業者で物件を探すのも一つの手段。
これだけ世の中が進んでも、インターネットとは一線を画し、まだまだ地場のネットワークだけで商売が成立している会社も多いのが不動産業です。

コンセプトや資金手当て、保証人準備などが整っている方であれば、うまくいけばネットには出回っていない情報が拾えるケースも。希望エリアの不動産屋を訪問してみるのも物件探しの有効な手段です。

知り合いからの紹介

自分の周りにいる方に、開業のために店舗物件を探していること、具体的にどんな条件で探しているかを伝えておくことで、希望の物件に巡り合うこともあります。
「自分が通う店舗のオーナーが高齢で後継者を探していたので、自分がそのまま引き継いだ」
「SNS経由で物件紹介してもらった」といったお話もあります。
とにかくアンテナ高く情報収集し、また情報発信しておくことが、同じ物件を探すライバルに差をつけるポイントです。

物件を内見(内覧)

気になる物件が見つかったら、実際に物件を見て検討を進めましょう。
足を運んで物件を見ることを、内見・内覧と言います。

内見の流れ

「立地・経済条件」を踏まえ、出店を検討できると判断してから内見を行います。

まず直接物件に訪問し内見させてもらう前に、まずは物件の所在地から立地条件を確認しましょう。
下見した上で内覧できればベターですが、人気物件であれば、下見している間にライバルに検討スピードで負ける可能性もあります。

だからこそ、所在地さえわかれば「その立地なら自分の条件に合う」と机上で判断できるくらい、事前にエリアを熟知していることが重要になります。
事前に現地を下見する余裕がなくても、Googleのストリートビューで駅・路線・周辺施設などの確認もできます。

次に経済条件です。賃料・保証金・造作費用などを合算した初期投資総額は、ご自身の経済条件に見合った物件でしょうか。

減額交渉の余地がある、予定資金を増額できる見込みがある、など予算が合うならGOですが、乖離している場合は内覧しても申し込みには至らないでしょう。

「立地・経済条件」を踏まえ、検討に乗ると判断したなら、情報元に内覧希望の旨を伝えてください。その際、候補日程を複数伝えておくと調整がスムーズです。特に物件が営業中店舗の場合は内覧可能時間が限られていることも少くありません。
飲食店でいえば、アイドルタイム(14時~17時くらい)に内覧可能な店舗が多いことは知っておきましょう。

申し込みはしないが、相場やエリアの把握などの参考や勉強のために物件を見ておきたい場合はどうすべきでしょうか。

お店が営業中であれば、お客様として来店してみるのも一つの手段。
内見する店舗のスタッフが、後継テナントを募集していることを知らない場合もあります。
従業員への声かけや写真撮影など、店舗側の迷惑につながるような立ち振る舞いはNGですのでご注意下さい。

内見でのチェックポイント

日程調整も終え、いよいよ内覧です。事前情報に加え、「現地でしか取れない情報を確認」が重要!

内覧に立ち会う不動産業者に、雨漏りなど建物や周辺のトラブル有無などを確認することができる機会なので、しっかりと活かしましょう。

特に居抜き物件はスケルトン物件よりも、現場でしっかり確認するべき点があります。
引き渡し状態(機器類等の有無)、引き渡し時期、内装の雰囲気などを確認。
譲渡対象の機器類は、動作の確認をご自身で行い、正常に使えるかどうか見極めます。

引き渡し状態の確認ができれば、この物件で出店すべきか判断がつけられるようになります。
ご自分の店舗完成までに、「どの程度の改装が必要か」「追加準備が必要なものは何か」を具体的に計画できるようになるからです。

機器類や備品類の準備については自身で予算立てはできますが、「改装」については内装会社から見積もりをいただかなければなりません。

懇意にしている業者の都合が合い、内覧に同行してもらうのがベターです。予算感も早めにでることで、迅速に判断できます。

もし内覧時に同行できなければ、再度内覧を不動産会社に設定してもらい、現調を行います。
内装会社に現場で改装の内容をしっかり伝えて見積もりをもらえば、出店費用が明確になります。

入居申し込み

内覧を経て「この物件で開業したい(できる)!」となれば、次は入居申し込みです。

入居申し込みというと重々しく感じるかもしれませんが、「書面で」提出しないと物事は進みません

申し込みはスピーディーに

じっくり検討した上で手を挙げたい気持ちはわかりますが、申し込み順に審査が行われる物件も多数あります。

迷っているうちにライバルが先に手を挙げ、自身は2番手となってしまうリスクも。2番手以降の方はあくまで1番手の次になるので、1番手が審査で落ちない限り審査の土台にものれません。
複数のライバルが手を挙げるであろう好物件であればあるほど、スピードが大変重要です。

ここまででお伝えしたことの全ては、「申し込みの意思決定をスピーディーに行うため」と言っても過言ではありません。
どうか各種準備は、物件探しの前に実施しておくようにしてください。

申し込みは取り下げられる

申し込みそのものには費用はかからずキャンセルも可能です。この点はよく勘違いされますが、申し込みを書面で提出することにハードルを感じる必要はありません。

交渉や希望条件は申込時に伝える

賃料や保証金の減額、入居時期の相談など、ご自身の希望条件は申し込み時点で必ず伝えておきましょう

譲れない希望条件がある方は、ここでしっかり意思表示しておかなければなりません。
しかし、条件交渉や賃料減額が100%不可な物件や状況もあります。
例えば「家主様が交渉を拒否している」「他の候補者がいて、減額交渉すると成約できる見込みがなくなる」など。
書面提出する前に、交渉相談余地の有無や塩梅は不動産業者に相談してください。

申し込みに必要な書類

物件の入居申し込みの規定フォームは不動産業者ごとに異なります。まずは申し込み用紙は早めにもらっておきましょう。

必要な書類は、法人と個人で異なります。

「法人」の場合
・法人謄本
・連帯保証人予定の個人(代表者)の個人証明書(免許証や健康保険証)

「個人」の場合
・借主と連帯保証人の個人証明書(免許証や健康保険証)

なお、外国籍の場合は「外国人登録証」や「在留カード」を、個人証明書に替わり提出してください。

融資を行う場合

契約時に必要な費用を融資で用意しようと考えている方は、申込書提出時に以下の2点を不動産業者に伝えておく必要があります。

①融資確定の上で、契約を進めたいという希望
②融資実行までのスケジュール

融資実行までに要する期間は対象金融機関によっても異なります。入居申込書提出と同時に、金融機関にも報告し、融資を受ける手配も開始しておきましょう。

家主審査(入居審査)

入居申込書を預かった不動産業者は貸主に報告をおこない、申し込み者の内容・与信を見て審査します。

賃料帯に対して借主・連帯保証人の収入で支払い余力があるかチェックします。
個人開業の場合は申し込み時に事業計画を求められることも。計画に妥当性があるかなど「この申し込み者に物件を貸して大丈夫か」という点を審査します。

審査結果が出る期間には、物件や家主や不動産業者の対応スピードによりバラつきがあります。
早ければ即日で返答がきたり、交渉があったり複数の申し込み者がいたりするケースでは1ヶ月かかることもあります。

借りる側の入居者としては、貸主の懸念やリスクを軽減し、安心感を与えられるような補足資料を提出することを考えましょう。

経歴に自信がある方であれば経歴書。ビジネスモデルで強みを訴求できる方は事業計画書。コンセプトに特色がある場合は貸主が懸念しそうな事を先回りして払拭できるようなコンセプトシート。いずれにせよ「この人に貸しても大丈夫」という材料を提示することが肝要です。

物件契約(賃貸借契約)

貸主さんの審査を経て、晴れて審査合格の連絡を頂いたら、いよいよ賃貸借契約です。

ただしハンコをついて終わり、とは考えるべきではありません。

どんな事情にせよ、契約書に署名・捺印で契約は成立してしまいます。
契約形態・年数・賃料・保証金だけでなく、退去時の原状回復の内容や保証金の償却・解約予告期間など、チェックする項目は多岐にわたります。

隅々までチェックし、理解できない箇所や疑問を持つ箇所は、契約前にしっかり確認し、納得の上で契約締結しなければいけません。

そのため、契約当日にはじめて契約書を見るという事態は絶対に避けてください。
事前に契約書を取り寄せ、内容を確認しましょう。

契約に必要なもの

契約時に必要な「契約金」は、不動産会社から「精算書」という形で振込先の案内をもらいます。

大抵は契約日の契約時間前や契約前日迄の入金を求められます。
(契約と同時、もしくは契約後の入金でも構わないというケースも)

融資を受ける予定の方は、約束の期日までに振り込みできるよう融資を受ける金融機関への根回しが必須です。

また契約時に提出を求められる書類があります。
「法人」の場合
・登記簿謄本
・印鑑証明
・連帯保証人分の書類(住民票・印鑑証明書・身分証明書・収入証明)
・連帯保証人承諾書

「個人」の場合
・契約者の住民票(印鑑証明書)、身分証明書、収入証明
・連帯保証人分の同様書類(住民票・印鑑証明書・身分証明書・収入証明)
・連帯保証人承諾書

物件によってケースバイケースですが、各種証明書類は役所で入手する必要もあります。
事前に不動産業者さんに確認しておきましょう。

なお火災保険や店舗舗総合保険が指定されている場合は、契約時に同時加入のケースが多いです。
指定の保険がない場合でも、加入後速やかに保険証書の提出が求められます。

店舗資産譲渡契約(※居抜き物件の場合)

居抜き物件の場合は、前テナントを売主とした「造作売買契約」を締結するケースもあります。

内覧時に確認した機器類が、しっかり譲渡対象リストに盛り込まれているか確認しましょう。
賃貸借契約と同じく、契約内容に不明点などがあれば質問・確認してください。

居抜きの造作売買では、売主は契約後の責任を負わない旨を契約内容に盛り込むのが一般的。契約書上では「瑕疵担保責任は負わない」との記述になっています。
(瑕疵担保責任=欠陥があった場合に売主が保証すること)

契約の翌日に不具合が起きたとしても、売主に責任追及はできません。
内見時の動作確認に不安がある場合には、ハンコをつく前に必ず確認するようにしましょう。

物件の引き渡し

鍵を渡された時点で、物件の引き渡しは完了です。
契約時に鍵を渡されてご自分で物件にはじめて入ったり、契約終了後に不動産業者と共に物件に入るなどさまざま。

契約開始日=物件引き渡し日が標準ですが、稀に契約開始前に鍵を預かり、物件に立ち入ることができるケースもあります。
ただし契約開始前は保険適用期間前ですので、注意が必要です。

引き渡しの注意点

スケルトン物件のトラブルはあまりありませんが、居抜き物件では、トラブルが露呈する場面です。
・あるはずの機器類がない
・ゴミが残されている など。

こういった事態を防ぐため、「造作売買契約」を結ぶ前に引き渡しの状態を確認しておく必要があります。
譲渡対象の物品をリスト化しておくと、売主・買主の間で相違が生まれずスムーズです。

必要な手続き

問題なく物件の引き渡しを受け、ようやく本格的に開業に向けて諸準備が始まります。
オープンまでやるべきことが多いですが、抜け漏れなく手配して開業準備を進めましょう。

・工事の前に「保健所」「消防署」へ相談
飲食店の開業には保健所と消防署、それぞれから許可を得る必要があります。
どのような工事をする予定か、工事前に相談するようにしましょう。指定の基準を満たしているか教えてもらえます。
なお、収容人数が30人未満の場合、消防署への届出は必要ありません。

・インフラの開通手配
電気、ガス、水道、TEL、インターネット

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物件探しの下準備から引き渡しまで解説しました。
まず最初の1歩は、出店すべき物件の条件を考えることです。
まとめやすいツールを用意しましたので、ぜひご利用ください。

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