居抜き物件とは。居抜き開業のメリット・デメリットと注意点

居抜き物件とは

居抜き物件の活用が当たり前になった、飲食店開業。
どの店舗物件を取得するかで、飲食店経営の成否は大きく分かれます。

前店舗の厨房設備や内装をそのまま使用する居抜き出店は、初期投資コストを大きく削減することができます。

しかし低投資出店・早期回収をしやすい一方、居抜きのような中古店舗での開業は注意すべき点もあることも事実です。

ここでは居抜き物件のメリット・デメリットや契約関連、居抜きの価格設定のカラクリや物件の見極めポイントなどを解説します。

居抜き物件について正しく理解し、損やトラブルのない開業に繋げましょう。

居抜き物件とは?(居抜きの意味)

居抜き物件とは、「前テナントの内装や造作設備が残っている店舗物件」のことです。
一方、建物の躯体だけのコンクリートむき出しの何もない状態は「スケルトン(物件)」といいます。

店舗は「スケルトンで借り、原状復帰してスケルトンで返す」が当たり前でした。しかし、ここ10年で激変。飲食店は居抜きでの出退店が一般化しつつあります。

居抜き物件では前テナントが残した内装や造作設備などをそのまま使うことができます。
既存の設備を利用するため、出店費用を抑え、早期に営業が開始できるというメリットがあります。

中には内装工事費をほぼかけず、ほぼDIYで出店する開業者もいらっしゃいます。

業種業態によりますが、雰囲気・設備の合う居抜き店舗を見つけ、厨房はもちろんテーブル・イスなどもそのまま利用し、看板だけ変えてオープンしてしまうのです。

注意:すべての「居抜き」物件で機器が揃っているとは限らない

「居抜き」と言っても、店舗の状態には個々に大きな差があります。

簡単な手直しだけですぐに開店できる店舗がある一方で、厨房設備だけあるいは内装のほんの一部だけが残っている状態でも「居抜き」と表示されることがあります。

残っているものが床・壁だけで、厨房設備などが一切なくても居抜き物件と言われていることがあるのです。

その場合でも水道・ガス・排気などの基礎工事が不要であれば、コストダウン効果もある程度見込めます。

入居時に、どのような物品・設備が引き継ぎ対象なのかしっかりと確認しましょう。

造作譲渡とは?

居抜き物件の造作や設備は、家主ではなくテナントオーナー(借り主)の所有物です。
それを新たに入居する方へ譲渡・売却することを「造作譲渡」といいます。

居抜き物件で出店するには2つの契約が必要

居抜き物件で出店するには、2つの契約が必要です。

ひとつは家主と交わす「賃貸借契約」、こちらは「不動産」に関わる契約。

もうひとつは前テナント(借主)と交わす「造作売買契約」、こちらは「動産」に関わる契約をそれぞれ結ぶ必要があります。

『物件(不動産)を借ります』という契約を家主と、『中の設備(動産)を買います』という契約をテナントオーナーと交わすということです。

出店者(開業テナント)・閉店者(撤退テナント)の双方にメリット

居抜き物件のマッチングには出店・閉店オーナーの双方にメリットがあります。

出店者(開業テナント)は、「初期投資のコストダウン」「工期が短く早くオープンできる」メリット。

閉店者(撤退テナント)は、「解体工事費(現状回復費)を免れる」「設備造作を売却できる」メリット。

居抜き物件の募集は、テナント(借主)が賃貸を解約する前に造作の引き継ぎ先を募集するもの。

賃貸借契約で、テナント(借主)は閉店や移転で店舗を閉める場合、解約日までにスケルトン戻し(または原状回復)の義務を負っています。

そのため、撤退テナントにとって居抜きでそのまま引き継いでもらえれば「解体工事費用を免れる」ことに。造作譲渡を無償で行ったとしても、撤退費用のコストダウンにつながります。

造作譲渡はなぜ「無料」「高額」など、値段に差が出るのか?

居抜きで売却先を探しているオーナー様の事情は、案件によって大きく異なります。
1日でも早く・多少安くてもお店を売りたい方もいれば、希望金額で売れなければ事業をそのまま継続するつもりの方も。

以下で解説する理由が絡み合い、無料~高額まで居抜きの譲渡金額が決定することとなります。

・無料で譲渡されるケース

以下①~④の理由もしくはそれらが複合したケースの場合、無料で譲渡されることがあります。

①運営継続が困難
病気のため一刻も早く譲りたい・シェフが辞めて営業できないなど、事情はそれぞれですが、結論としては「運営継続が困難な事情がある」もしくは「余計な出費を止めたい」という2点が理由です。

店舗を借りている限り、毎月賃料がかかります。店を開けられない場合は売上も立たずにお金だけ出ていくため、「無料でもいいから早く手放したい」という撤退オーナー様です。

②買い手候補が少ないと見込まれる店舗
特殊な設備や立地や大型店であればあるほど、検討者は少なくなり売却確率も低下します。
立地や設備などに変更を加えることは難しいため、少しでも検討者を増やすために譲渡金額を無償で行う場合があります。

③解体工事・原状回復工事の費用が大きい
物件により異なりますが、飲食店の解体工事費用は坪当たり5~10万。

例えば50坪の店舗が居抜き買い手が見つからない場合、工事費だけでも250万~500万のコスト負担となります。

大型店舗であるほど、売却できなかった場合の万が一の費用負担が大きいため、
「無料でもいいから早く居抜きで譲りたい」といった考えです。

④テナントが退去済み
テナントが造作を残したまま退去し、居抜き物件になっているケースです。
この場合は「残置物扱い」であることが多く、無料の代わりに貸主様も一切責任を持ちません。

基本的に、不用品の撤去や物品の安全性の確保など、すべて新しい入居者が負担します。

・高額で譲渡されるケース

意外ですが、「設備など、大きな投資金額をかけたお店」や「新しいお店」が必ずしも高額で売却されるわけではありません。

「需要と供給のバランス」「売り手側の懐具合(余裕度合い)」の2つが譲渡金額の設定に影響します。

①買い手候補が多数いる場合
立地が良い・使える設備が揃っている・家賃が安い・周辺マーケットが良いなど、検討者が多い物件ほど造作譲渡が高額で設定される可能性が高まります。

買い手側の資金に余裕がありどうしてもその物件を取得したい場合、募集金額よりも高値で入札されることもあります。

そのような物件では、譲渡金額の減額交渉をした瞬間に候補から外されることもあるので交渉は慎重に行うべきです。

②余裕があり、今すぐ売却する理由が弱い
収支がとんとんや黒字である店舗や、運営者に資金余裕があり多少の赤字が大きな影響ではない場合は、「今すぐ」手放す理由にはありません。

その場合は「高額で売れればよし」と高値で設定される場合があります。

居抜き物件で出店するのにかかるお金(費用)

飲食店開業に必要なお金は大きく分けて4つあります。

①物件取得費
②内装工事・設備費
③開業諸経費
④運転資金


居抜きを使うと、②内装工事・設備費のコストダウンに繋がり、初期投資を抑えることができます。

投資を抑えることができれば、最重要である④運転資金も確保しやすくなります。
なぜ運転資金が最重要かこちらの記事を確認ください。

物件取得費は、賃貸借契約+造作譲渡料

居抜きの物件取得費は「物件を借りる」費用(賃貸借契約)と造作譲渡料(手数料含む)を合わせたものです。

賃貸借契約にかかる金額の目安は、賃料の9~12ヶ月分
礼金・保証金・仲介手数料・前払い賃料がかかります。

居抜きの場合はそれに加え、造作代金がかかります
目安としては、50~300万円ですが、物件により大きく異なります。
また居抜き店舗の取得には造作代金の他に手数料がかかる場合があります。
造作代金の10%や20万~50万ほどなど業者や物件により異なりますので確認しておきましょう。

※注意すべき視点
物件取得費を1円でも安く抑えることは重要ですが、「店舗経営を成功させること」が最も重要です。安かろう悪かろうでは意味がありません。

商売として見込みが立ち、投資回収ができるかどうかを、物件を見比べる際の視点として持っておきましょう。

内装工事・設備費のコストダウンができる

既存の設備を活用して店舗を作りあげるのと、0から作るのではコストが大きく異なります。

まず1坪あたりの工事費用に大きな差があります。

スケルトンからの投資コスト:50~80万円/坪
居抜き物件を活用した投資コスト:5~50万円/坪

出店する業態と相性の良い居抜き物件を取得できれば、内装工事費・設備費は下がります。

水道・電気・排気などのインフラの容量が十分で基礎工事が不要、厨房設備がそのまま使える、店の雰囲気が一致した内装など。

居抜きで飲食店を開業するメリット&デメリット

メリット

①出店費用を抑えることができる
居抜き物件で空調や厨房機器・テーブル・音響施設などの備品を引き継ぐことにより、初期投資を大幅にダウン。内外装の工事費用も抑えることができます。

スケルトン物件からだと10坪の店舗でも500~800万円の工事費用が必要ですが、投資コストを半分以下に抑えることも。

ただし厨房などの店舗設備がどこまで使えるのか、メンテナンスがどれくらい必要な状態かは注意すべき点です。あくまで中古ですので、長年使われたものほど故障リスクはあります。

最低限、内覧時や引き渡し前に譲渡対象の機器がきちんと動くか確認しておきましょう。

②利益の出やすい経営を実現
初期投資を抑えれば返済も軽くなり、損益分岐点(黒字になるための最低売上)も低くなります
低投資・早期回収の経営がしやすくなります。

また投資コストを抑えた分、安価でメニュー提供しても利益を残しやすく、他店との競争に負けない強い店舗を作ることができます。

③物件契約からオープンまでの期間を短くできる
新築ではなく改装であれば施工期間を短くでき、ガスの引き込みや配管などの基礎工事も不要な場合もあります。

賃貸借契約を結ぶとオープン前でも賃料(空家賃)が発生するため、できるだけ速やかにオープンすることがムダな出費を抑えることにつながります。
居抜きでは短期間でオープンすることができるので空家賃のロスを減らすことができます。

④業態によっては、前テナントの客も取り込める可能性がある
前のテナントと近い業態であれば、以前の店舗のお客様が来店する<確率は高くなります。

店舗の改装中に張り紙を貼り、オープン日と業態内容を伝えておくことで、そういったお客様を着実に取り込んでいくことで、販促費用をかけずにお客様を獲得することも可能です。

デメリット

①店内レイアウトの変更がしにくい
居抜き物件はスケルトンに比べレイアウトの自由度が低く、自由に作り上げることができない場合もあります。
イメージ通りにするために「一旦解体⇒施工」とすると、解体費用分の投資が余計にかかります。

契約前に内装会社に相談し、自分のイメージする店舗が作れるかどうか検証しておきましょう。

また、居抜きの最大のメリットである投資コストの削減を活かすために、理想のレイアウトにこだわりすぎず現状の店舗をどう使うかという視点も忘れてはいけません。

②建物や設備をそのまま使うため、起こりうるトラブル
居抜き物件を引き継ぐと、全て中古設備ということ。
使ってすぐに、もしくは使用する前に厨房機器が故障する可能性も0ではありません。契約前には動作チェックを行い自身の目でしっかり確認しましょう。

居抜きの譲渡はそのままの「現状渡し」が基本のため、契約完了後は自分の責任になります。

また、機器については「リース契約かどうか」「支払いのリース残はないか」の確認も行っておくとトラブル防止になります。

③前テナントの評判やイメージを引きずる可能性
万が一、前のテナントが近隣や顧客に悪い印象を与えていた場合は、ご注意ください。
テナントもオーナーも新しくなったことを知ってもらわないと。その悪い印象を引き継ぎかねません。

特に同業種など似通った業態で開業する場合は、オーナーが変わったことを周知し、イメージ刷新に努めましょう。

居抜き物件の探し方

居抜き物件は「居抜き店舗専門」の物件サイトで探すべきです。

HOMES・スーモ・アットホームなど住宅専門の賃貸サイトは、居抜き物件や店舗物件探しには適しているとは言えません。

下の居抜き店舗専門サイトは全国に対応し、9万人の方が利用しています。
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