なぜ個人の独立開業者が「恵比寿駅徒歩1分物件」に出店できたのか?

わたし高橋が、東京・恵比寿で独立開業で居酒屋出店を志してから閉店するまでの、さまざまなしくじりと後悔、解決策をつづっていく当コラム。

前回のコラムでは、効率的な物件探しについてお伝えしました。

参考記事:仕事を辞めたのに、開業したい物件が見つからず6カ月経過

上のコラムにあるように先走って仕事を辞めてしまい、物件探しと家事に勤しむこと半年。
ようやく見つけることができました……

やりたいと思える物件が!!
そして契約を勝ち取れる物件が!!!


長かった。

実に、長かった。

今回は、『最速で物件を紹介してもらえたテクニック』と『出店を即決できた理由』をお話しします。

不動産会社から好立地物件の紹介を受け、出店

わたし高橋が出店した物件は、恵比寿から徒歩1分のロケーション
ターミナル駅かつ駅の近くという好立地の物件です。
インターネットなどを使って自分で探し当てたのでなく、不動産屋から紹介してもらいました。

内覧時に不動産会社(客付業者)の方と関係をつくっておいたことが功を奏し、この物件を真っ先に紹介してもらうことができました。

この『真っ先に』というのが大きかったですね。
おそらく紹介されるタイミングや申し込みが数日遅れていたら、他の人に取られていたでしょう。

物件紹介はしてもらって「当然」ではない

わたしがどんどん物件を紹介いただいたのは、下地づくりがあってこそ。
紹介してもらえるよう不動産会社の方と話したり、彼らがわたしに合った物件を紹介しやすくなるツールを用意するなど。

店舗不動産においては、物件は紹介してもらって「当然」ではありません

良い物件があったら、即出店したいので、紹介してください!

内覧を担当してくれた不動産屋に物件紹介をお願いするケースが多いと思います。
わたしもこんな感じでお願いしましたが、積極的に物件を紹介してもらえた試しがありませんでした。

心の底から不思議でした。

出店者が契約しないと不動産会社は仲介手数料をもらえないのに、なぜ紹介してくれないのか?

答えは実に簡単。
「良い物件を紹介して」だけでは、不動産会社は紹介のしようがないから。
出店する業態や目指すスタイルによって『良い物件』は異なります。人によって『良い物件』の定義が大きく異なるため、おいそれと紹介できないのです。

「賃料が高くても良いから、とにかく人通りの多いところに出店したい」

「借り入れはせず、手持ちの500万円で開業したい」

「完全予約制のお店だから、空中階もOK、視認性も関係なし」

業態によってターゲット顧客によって、それぞれ希望の条件は異なるはず。なのに、『良い物件』とだけいわれても不動産会社も困りますよね。

「恋人が欲しいから、良い人がいたら紹介して」なんて頼まれるケースを想像してみてください。物件を紹介する不動産会社の気持ちや立場を理解しやすいのではないでしょうか。

しかも頼まれたから紹介したのに「ちょっと●●だから違うかなー」と軽く断られますよね。どんなに真剣に人選して紹介したとしても。

そうされると『「●●はNG」って最初に教えてよ』と紹介するのが嫌になりません?
わざわざ労力かけて紹介するのは割に合わないと感じますよね。

そのため、出店者がしなければいけないのは、不動産屋が出店者に物件を紹介しやすくなるような環境づくり
紹介しやすいよう希望条件を整理し、理想と現実をすり合わせて判断ラインを提示するべきです。
『良い物件』という曖昧な言葉を使ってはいけません。

名刺の裏作戦が成功のカギ

わたしが不動産会社と話すときには、以下の点に気を付けていました。

・条件は具体的に伝える
・本気度を伝える(紹介すると成約しやすいと感じてもらう)

口頭だけでは忘れられる可能性があるため、物件探し用の名刺の裏に要望を記載しておきました。

ちなみにその時に記載した内容は以下の通り。

・出店費用は1500万以内(運転資金300万は別)
・出店は和食居酒屋(魚介中心のメニュー)
・駅から3分以内(メイン通り沿いであれば3分以上可)
・坪数は15~20坪が理想(客席を25席以上作りたい)
・賃料は立地次第(50万以上も検討)
・1階店舗希望(空中階・地下も検討)


この名刺を使うようになってから、週1-2件、物件を紹介してもらえるようになりました。
今まで0件だったことを考えると、大きな変化です。

複数の不動産会社と関係をつくりながら、粘り強く物件を探すこと3カ月。

ついに好立地と言える物件を真っ先に紹介してもらうチャンスに恵まれました。

この『真っ先に』、というのが大きかったですね。
おそらく申し込みが数日遅れていたら、他の人に物件は取られていたと思います。

物件契約はスピード勝負!

内覧したその場で申し込みを入れ、無事契約に至ることができました。持ち帰って数日検討します、なんてせずにすぐに申し込みを入れたのには理由があります。

物件探しは2段階に分かれている

そもそも物件探しには、2人の意思決定者が登場します。

① 自分が、出店したい物件を探して入居を申し込む
② 家主が、審査を行い貸し出し可否の判断をくだす


「(自分が)やりたい!」だけではダメなんです。
家主からOKをもらわなければ、出店は叶いません。
わたし高橋も、いくつか物件を申し込んでいましたが、すべて没に。
理由は以下の通り。

・家主審査で落ちた(理由は教えてもらえませんでした)
・先に申し込んでいる一番手がいるからと断られた
・複数申し込みが入り、他の人が選ばれた


法人や既存店持ちと比べ、個人の独立開業者の信頼度は無いに等しいと痛感。
開業予算(自己資金+決定済み融資)総額1800万円を用意していても、世間の評価はなかなか厳しいものがあります……

内覧したその場で申し込み

さて、出店した物件に話を戻しましょう。

恵比寿徒歩1分の好立地物件の紹介を受け、すぐに内覧。
内覧したその場で申し込みを入れられたことが最大の勝因でした。
この物件の家主さんは、一番手の申込者を優先してくださる方だったのです。

事実、私の後に何件か申し込みが入っていたそう。もし申し込み順ではなく、与信などを重視する家主さんであれば、競り負けていたかもしれませんね。

スピード勝負に勝てたのは、「検討物件に合わせた経営戦略を練る」訓練を積んでいたから。この思考訓練の詳細は前回お伝えした通り、気になる方は前回記事をご参照ください。
⇒ (前回記事)仕事を辞めたのに、開業したい物件が見つからず6カ月経過

物件を紹介してもらったあとは、すぐに以下の3ステップに移ります。

① まず住所を聞いてすぐに立地と周辺を調査
② 固定経費と集客プラン・売上を試算
③ 内覧では席数と工事費用だけを確認


内覧前にできることはすべてやり、内覧は最後の設備などの確認のみ。
事前に内覧で即決できるだけの準備をしておけるかが、物件を獲得できるかどうか成否を分けます。

「まあでも、恵比寿駅の駅チカで良い物件だったら、そりゃ〜即決できるでしょうよ。」

なんて思った方はいませんか?実はそうでもないのです……

理想からいうと70点の物件で出店

内覧の場で即決しているので、理想からしても100%の物件だったと思われるかもしれません。しかし、実際はそんな都合のいい物件は出てきません

今回の恵比寿の物件も悪くない物件ではありましたが、自分の理想からいうと70点くらい。

それでも決断できたのは、物件を探すなかで不利な条件を逆手に取る考え方を身に付けていたから。
70点の物件に対して、足りない30点を戦略で補えると判断できたのです。

出店を決断した店舗物件の具体的な条件は?

出店した物件の条件は以下の通り。

① 場所は東京都渋谷区の恵比寿。
② 駅から歩いて1分。
③ 7階建ての5階、約17坪。
④ 元事務所のスケルトン。
⑤ 賃料はその頃の相場より安め。

それぞれの条件をどのように解釈し、決断したかひとつずつ振り返ってみます。

① 場所は東京都渋谷区の恵比寿。

① 場所は理想通り。
恵比寿駅はどこからでも来やすい場所。JR山手線だけでなくメトロ日比谷線も通っており、恵比寿駅の利用者はもちろん、周辺駅の人にも利用してもらえると考えました。

歌舞伎町・渋谷・六本木・赤坂などで働いてきた経験から思うところもあり…。
『学生相手は疲れるわりに実入りが少ないな』
『キャバクラや風俗が周囲に多いのは嫌だ』
『サラリーマンの会社利用客だけを相手にするのはつまらない』

雰囲気がよく、さまざまな客層を狙える恵比寿はまさに理想の街でした。

② 駅から歩いて1分。

駅からの距離は理想以上
恵比寿駅はホームから改札がすぐなので、駅ホームから店まで歩いて2分足らずです。

新宿や渋谷は駅を出るだけでも数分かかりますよね。
電車で来てくれる人にとっては、大きなターミナル駅よりも行きやすい場所だと考えました。

③ 7階建ての5階、約17坪。

5階の物件は、理想とは全く異なります

大多数の出店者と同じく、1階路面店が理想でしたし、せめて2階か地下がいいなと思ってました。

しかしネット集客とリピーター獲得を重視する経営方針だったため、戦略次第でどうにかできる部分と判断しました。

④ 元事務所のスケルトン。

物件の状態は理想と異なりました。本来であれば、居抜きで出店したかったところです。
スケルトンから内装工事を行った結果、17坪の物件で700万円かかりました。

スケルトンから工事をしようと決断できた理由は、いままでの物件探し経験にあります。
半年間物件を探してきましたが、そのまま使える居抜き物件に出会えていなかったですし、居抜き物件が必ずコストダウンに繋がるとは限りません

使えない部分を「解体⇒施工」とすると、解体費用分の投資が余計にかかります。
大幅な改装や什器の入替を行うと、意外と内装コストがかかることも、物件を探すなかで学んだこと。

懇意にしていた内装業者から、中途半端に再利用を考えるくらいならスケルトンの方が安く済む場合もあると教えてもらっていましたが、施工金額を上げたいがためのセールストークではありませんでした。

一方でスケルトンならではのメリットもあります。やはり、自分の理想通りに店を造れること。

居抜き物件では、店内レイアウトの変更がしづらく、スケルトンに比べると自由度が下がります。業態によっては、作業・移動の動線がとりづらく非効率なオペレーションになったり、そのために余計な人件費がかかることもあります。

⑤ 賃料はその頃の相場より安め。

賃料は相場からは安く設定されており、うれしい限りでした。
実際にもう少し高くても申し込みしていたような物件でしたから。
スケルトンから飲食店を作ると大変だろうからという家主さんの好意で、相場より少し安めに設定してくれていたとのことでした。

これは客が付きづらいと言われる、3階以上の空中階が持つメリットかもしれません。

まとめ:物件探し4つのポイント

このように、苦節半年、ようやく物件を決めることができました。

・自分にとっての「良い物件・希望条件」を定義する
・希望条件を名刺に記載し覚えてもらう工夫を行う
・内覧後すぐに決断できるように事前準備を怠らない
・100%理想の物件はない。不足点を埋める施策を考える


もし不動産会社との関係づくりにお悩みなら、まずは「希望条件を記載した名刺作戦」がおすすめです。わたしは本当に効果がありましたから。

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