写真左 柴様/右 店長 岩崎様

脱サラし、50歳で高校の同級生と飲食店を開業した柴様。開業の経緯や、準備期間4ヶ月のスピード開業でどんな準備をしてきたか、立ち上げの苦労から現在の業績まで赤裸々にお話しいただきました。また、これから開業を考えている方にはできるだけ少額投資での開業を勧める柴様。その背景には自身が1600万もの借金を背負うことになった過去がありました。

ゆらりオーナー柴様

脱サラ開業!高校の同級生と始めたそば屋

開業に至った経緯を教えて頂けますか

脱サラして開業に至った1番のポイントは、50になって仕事がなかったことです(笑)

私が仕事を辞めて休んでいた50歳の時に(岩崎氏と)会って、ちょうど2人とも職がないタイミングだったんです。この歳だと雇ってくれるところもなかなかないわけですよ。35ぐらいまでって求人は大体年齢で制限されるじゃないですか。

柴様と一緒に開業された店長の岩崎様はそばの道に就いてから30年の熟練者。

柴様と一緒に開業された店長の岩崎様はそばの道に就いてから30年の熟練者。

私は飲食とは違う別の畑で働いていましたが、彼(ゆらり店長 岩崎様)は30年近く歌舞伎町で立ち食いの蕎麦から普通の蕎麦までやっていました。
年齢がいってしまうと、シルバーじゃないですけど体が動かないという風に見られてしまうそうです。
僕は蕎麦屋は年齢は関係ないんじゃないかと思っていたんですが、彼に聞いたらお店によってはそうでもないみたいで。

そこから、「自分たちでやるしかない」となったんです。高校の同級生同士だったので、他の同級生も応援してくれて、この店を始めた頃は月に2回10人ずつ位集まってくれました。未だに使ってくれています。

そば処ゆらりでは、こだわりの十割そばを提供。

30歳で1600万円の借金!そこから50歳での再出発

柴様ご自身の飲食のご経験は?

ずいぶん前の話になってしまうんですが、初めのきっかけは学生時代のアルバイト。それが飲食店で、その後結構長く勤めたんです。アルバイトから正社員になって、他の飲食店からも声がかかりそちらでも働きました。

23、4歳の時にお金も貯まり、その時勤めていたところの社長さんに「自分で店をやりたい」と話したんです。そうしたら「お前はやれるから」と言ってもらって、「あるだけのお金でいい」と仕出し弁当屋を譲ってもらったんです

お弁当イメージ

その弁当屋が初めての開業なんですね?

そうですね。そのお店は、お弁当を作っているパートさんも知っている仲で、そこからスタートしました。
ただ、それだけでは飽きてしまうんです。なのでそこから様々な飲食店経営に手を出しました。
さらに飲食店だけではなく学習塾経営に手を出すなど、色々な事業をやりました。まぁ、時代が良かったんだと思います。売上も上がっていき、様々な事業をやりながら、自営業で7年ぐらい過ごしました。

20代~30歳までの自営業は法人にしてやっていたのですが、最後は尻すぼみになってしまったんです。1つずつお店を閉めていった時に結局1600万円ぐらいの赤字、借金が残ってしまったんです。その時は実家に2年間戻ってダブルワークでかなり働きました。夜は配送、昼は電気関係の会社です。それでなんとか返せました。

返済を終え、そのまま電気関係の会社で50まで勤めて辞めました。体を壊してしまったんです。それで、1年間お休みをして、「さて 、何をしようか」と再出発したのがこのお店なんです。

開業準備から二人三脚で取り組み、開業を決心してからなんと4ヶ月で開店。2年間の営業で順調に売上を伸ばす。

準備期間4ヶ月のスピード開業、その裏側とは?

開業に向かってまずどのような準備をされましたか?

「こうやってやるんだ」とガチガチに決めて、1年も2年も準備したわけではありません。
彼と初めて相談をしたのが6月ころ。「じゃあ、やろうか」と言って物件を探し始めて、色々な セミナーや勉強会 に行ったりしました。
大森さん(弊社開業アドバイザー)のセミナーもその時に行ったんです。そこから、なんとか10月のオープンという形で間に合いましたね。

お店の前で。開業アドバイザー大森と柴様

まず参加したのは税理士さん、社労士さんが講師だった「助成金」のセミナー。その時はお金なんて200万円もなく、「開業のお金はどうしようかな」なんて言ってたんです。
それで大森さんに相談したら、創業融資としてお金を借りるという手段もありますよというので、「借りてやって(開業して)みよう」ということで今があります。

セミナー開催の様子【全国主要都市で開催】

公庫(日本政策金融公庫)で借りましたが、実はその存在自体を知りませんでした。
教えてもらうまでは、手持ちのお金で「どうしようか」と思っていました。でも今考えても、物件の取得ぐらいはできたでしょうけど、その後どうにもならないですね。
こんな大きさの店ではなくて、立ち食いでもっと小さな店になっていたかもしれません。

物件探しはいかがでしたか?

私は小平市で、彼は練馬に住んでいるのでどちらかの自宅の近くでやるともっと楽だとは思うんですが、こればかりは仕方ありません(笑)
物件探しでまずやったのが、居抜き物件サイトに出ている物件をずらーっと車で周ることです。色々探しましたね、練馬や高田馬場なども見ました。
場所を確認し、条件が良さそうであれば中を見せてもらってという動きを1か月半ぐらいやりましたね。
それをやりながら、「メニューは何にしよう」「必要な備品は?」という話を詰めていました。

実は始めから1本入った、このような店舗物件を探していたわけではありません。最初は大通り沿いの物件も見ていました。
鍋屋横丁(本店舗付近の商店街)のところに空いてる蕎麦屋の物件がある、という情報を彼が持ってきてくれて、そこで決まりかけていたんです。
表通りに面した店で、ここより家賃が10万円ほど高かったですね。交渉して2~3万円家賃が下がればそこにしよう、と言っていたんですが、ダメだったんです。
そこで急きょ探して、ぽつっと空いてたのがここなんです。

この物件は安いというメリットは良かったのですが、場所が奥まったところにあるのがネックでした。でも、思ったんです。
「結局お店というのは引っ込んでいても、時間はかかるけど口コミなどでお客さんは入ってくれるなぁ」と。なので、あえて経費・固定費の安いここに引っ込んで、やっています。

集客はまずなんでもやってみて、良いものを残す

店舗は表から少し入っていますが、集客としてはいかがですか?

場所が引っ込んだ分、当初想定していた売上よりは低くなりました。
1年目は辛かったです。でもやはり売り上げも徐々に上がってきているので、この場所を選んで後悔していることはありません。
前年が低いというのもあるんですけど、着実に伸びています。知られた分だけ売上が上がるような、のっかっていく形です。来年もまた少しでも上がってきてくれればいいですね。

新規の客全員を100%でリピーターにしようと思っても無理な話です。同じものを出しても、「美味しい」という人もいれば、「口に合わない」という人もいて、仕方ない部分なんです。なので、普通のお店は新規のお客さんを常に取り込んでおかないといけません。そっちにも気を使っています、お金を使って広告も出しながら。

どのような集客方法をされていますか?

1番初めは「食べログ」をやっていました。それを見て「ぐるなび」が営業に来て、「ホットペッパー」が来てという流れでした。まずは何でもやってみようと思っていたのでやりましたが、いざお客さんに聞いてみると見てないんですよ。まぁ、蕎麦屋なので40~50代のお客さんが多いからですかね。中には調べて来る人もいるんですが、それは少数派なのかもしれません。

あとは、「グルーポン」もやりました。5000円のものを半額で提供する、といった形です。半額のうえ、クーポン会社にも払う手数料もあるのでなかなか厳しいですが(笑)
クーポン会社も飲食店が大体30%前後の原価率で組んでるのを知っているんで、「空いている時間に少しでも入った方がいいじゃないでしょうか」と言うんです。確かにそれはそうなんです。
材料も回るし、お金も回っていくので。それで始めて、かれこれ1年ぐらい経っています。

良いところは、クーポンは事前予約なので調整がある程度きく、ということです。
普段来てくれている近隣の方が来る日というのはある程度分かるものですから、そこを避けて来てもらったり、ですね。
クーポンをバンと出すと200枚ぐらい売れるんです。
それを3か月以内に使ってくださいという形なんですが、どうしてもクーポンの使用期限の最後の方にまとまって来ちゃうんですね。
そこは、クーポンの会社と相談してなるべく来店がフラットになるように協力してもらいました。

ゆったり座れるよう工夫された店内。カウンター席もあり、計24席ほど。貸切利用も受付。

昼は蕎麦屋、夜は蕎麦居酒屋として営業

営業時間はどのようにされていますか?

現在はランチとディナーでやっています。
ランチが11~15時、ディナーが16~22時で21時30分にラストオーダー。
合間の15~16時は中休みとしていますが、お客さんが入ればそのままお店は開けています。
土日はわりとお客さんもゆっくりされるので、14時頃に来たお客さんが一杯飲むということになると中休みはなくなります。でも、食事で800円より1杯で700円の方が手間もないですしありがたいですよね(笑)

週の2日ほどはラストオーダーの時間にお客さんもいないので、そういう時は早く帰ります。22時閉店にしていても、22時30分までお客さんがいる日もありますから、バランスですね。定休日は月曜日にしています。

ここは事業所あり、住宅ありの立地です。不思議と金曜日は忙しくないんです。平日は事業所の方、土日は近隣の方が家族連れで来てくれます。平日よりは土日ですね。昼間から飲むというのもあるからかもしれませんが。日曜日は21時頃になるとぱたっと皆さん帰ります。

夜はお酒も扱ってらっしゃるんですか?

蕎麦屋だけだと、正直キツいです。ラーメン屋さんも今は、夜はラーメン居酒屋したりするでしょ?それが正解かな、と思います。
居酒屋メニューも用意してます。夜だけでいうと7割が飲んで食べてという方です。食事だけという方は3割です。
昼食べて安くて美味しいというので昼だけくる方、夜だけ家族で来る方もいます。昼に来て、夜も使ってくれるような方もいます。この近くの事業所の方なんです。

夜メニュー

夜は色々な銘酒をお安く楽しめる日本酒きき酒セットや一品メニューなども充実。

そこの方たちは始めから来てくれていましたね。
始めは女性が2人で来て、会社の中で店のことをを話していただいて、ぞろぞろと来てくれるようになりました。今は飲食店が増えたのでちょっと変わりましたが、当初は社員食堂みたいでした(笑)
そこのメンバーでいっぱいになっちゃうみたいな。今でも夜、週に1回来てくれています。

長くやってくると、色々な団体の方たちが定期的に使ってもらえるようになりました。
月に1回のグループもあれば、年に1回忘年会はここでやってくれるグループもあるんですよ。

大晦日には売上2.5倍!売上は季節によってどう変わる?

開業されてもうどのぐらい経ちましたか?

10月で2年になります(インタビュー当時は2014年8月)。
現状、売上は月商150万円いくといい方。今は1日6万円ほどなので、これが1日7~8万円ほどの売上になるとうま味が出てきますね。そのぐらいであれば2名体制でいけますし。

1番辛いのは初年度の11月でした。月商70万円ぐらいでしたから。12月になって100万円を初めて超えたんですよ。
最後の2日でボンといったのはありますけど。
やっぱり蕎麦屋は晦日と大晦日は強い。普段の2.5倍、1日15万円くらい売れたんじゃないですかね。

1年目は晦日も初めてで何も分からなかったので、通常通り何でも注文出来るようにしていました。そうしたら、1杯だけ飲む方もいる、ツマミ頼んでゆっくりしたい人もいる、それでも蕎麦は食べたいということで中はかなり混乱しました。

なので、翌年はメニューを大幅に絞ったんです。そばとつまみを各5種類ほどにして選んでもらうような形です。昨年の失敗を生かし、上手く回りました。大晦日は2回とも店を出たのが年明けてからでしたね。元旦になってから「お疲れ様」と帰りました。

表通りから15Mほど入ったところにある「そば処 ゆらり」
一切繋ぎを使っていない十割そばを求めて来店する方も多いそう。

2年目はそれで年商1300万円。2年目はまぁまぁです。前半は少し弱かったのですが、後半上がってきました。
上がってきたのは、リピーターさんが多くなったというのもありますし、新規の集客も順調にいった結果です。このあたりの住宅は多いのでもう少しいけると思うんです。近隣の人が月1回でも来てくれればな、と思っています。単にまだまだ知られていないのでこれから頑張っていきたいと思います。

これから開業する方へアドバイス

開業者の先輩としてどのような開業をすすめますか?

私が思うのは少ない投資で開業スタートして、それを回収しながら3・4年で返す。
その後貯金して、また新たに始めるのがいいんじゃないかと思います。この年齢だから、そう思うのかもしれないですけど。

30代でお金が借りられるというのはすごいことです。それだけ何か持っているということですもんね。経験や、もちろん貯めたお金だったり。
公庫もお金の貯め方をチェックして、自己資金の2倍(※昨年制度変更があり、現在は9倍)貸すんですものね。
もちろん、借りる額が大きれば返済も大きくなりますけど、そこは選択ですよね。

私たちの開業は、合計で340万円です。この金額なら万が一コケてもなんとかなるかな、という考えはありました。
これが1000万円とかいってしまうと、自分の家を手放さなければいけなくなるかもしれないですよね。
340万円の内訳としては、物件契約に100万円、厨房機器120万円、内装工事費70万円、小物など雑費で50万円です。

内装工事費用70万円は破格じゃないですか!?

自分たちでかなり(工事を)やってます。
元々ここは、夜メインのお店でダイニングバーでした。奥に少しだけ残ってますが、壁が全てレンガ調のタイルだったんです。
その壁を塗るかどうか迷ったんですが、結局クロスを壁1面にぐるっと貼りました。貼っても取れてきて、後から貼りなおしたり色々やりましたね。ボンド突っ込んでみたり(笑)
今はなんとか落ち着いたので良かったです。

左下がカウンター席で、左上が厨房との布の間仕切り。

このカウンターも全部、前の店舗のものをそのまま使っています。
厨房との間仕切りを入れたぐらいです。間仕切りは1番安いので布にしました。
音はちょっと伝わりやすいのでそこが気になるところです。

とても格安で作成したとは思えないお手製看板。

看板は木の土台だけ買って、文字はインターネットでデザイン文字をやっている方に作ってもらいました。
何度かやりとりして直してもらって、5000円くらい。
それをプリントアウトして更に拡大をし、買った土台に張り付け、なぞって、という形でやりました。自分で作るのは結構楽しかったです。

水道工事はさすがに自分では無理でした。ここの厨房機器はホシザキさんのを入れているので「水道屋さん紹介してよ」と教えてもらいました。それ以外はほぼ自分たちでやっていますね。

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「そば処 ゆらり」の今後とは?

今後、どのような店舗を目指していきたいですか?

お客さんを待つだけでなく、自ら売りに出ていきたいと思っています。
たとえば蕎麦の配達。店舗では天気が悪いと来客が減りますが、そんな日には「宅配してほしい」というニーズがありますので。
あとお年寄りだと外出が辛いですから、電話1本で持っていけば喜ばれると思うんです。
それで「毎週この曜日に持ってきてほしい」といったような契約がとれると経営も安定もしますしね。

もうひとつの形として、専門店の十割蕎麦というより軽い感じにしてメニューも今より絞る。
吉野家もやってますよね、牛丼と蕎麦。あんな感じで、かつ丼・天丼・牛丼に蕎麦をちょっとした容器で食べてもらう形もありかな、と。合わせてテイクアウトもやったり。

スーパーでも蕎麦は売っていますし、多分あれは5も入ってない(蕎麦粉の割合)と思うんですが蕎麦が好きな人は買いますし、乾麺でもいっぱい食べたいという人はいますし、色々な人がいます。

なので店舗のやり方は1つではない思っています。このお店はこのお店で、テイクアウト・配達などもやっていきたいと思っています。
ここは我々の同級生が集まってくれる場所なので、永く残していきたいですね。
その為にも毎日笑顔で仕事が出来る様、『頭』『身体』フル回転でがんばります。

インタビュー店舗 「ゆらり」

開業情報
物件取得 100万円
内装 70万円
厨房機器 120万円
備品 50万円
初期販促 0円
坪数 14坪
席数 24席
売上 150万円
店舗情報
住所 東京都中野区中央3-34-1 プラム鍋横 1F
(新中野駅3・4番出口より徒歩3分)
電話 03-3381-7212
営業時間 《火曜日~日曜日》
11:00~22:00(21:30(LO))
11:00~15:00 16:00~22:00(21:30(LO))
ランチ営業、日曜営業
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