飲食店の開業までには、物件を見つける・資金を用意する以外にも多くのステップがあります。
スケジュールと全体の流れをしっかり把握しておかないと、後手にまわってしまうことや、場合によっては不要な損もしかねません。
そこで必要なのは、6500店舗の開業支援の成功・失敗事例から生まれた「飲食店開業の理想的なスケジュール」。
開業計画からオープンまでを1年間で想定し、その流れをフローチャートで紹介します。
”みんなの飲食店開業”特製のフローチャートで全体の流れをつかみ、「いつ、何をすべきか」必要な手順をスタート前に知っておきましょう。
もちろん実際の工程の中で、日程がズレや遅れも出てくることもあるかもしれません。
例えば条件に合う物件が「すぐに出てくる」ことも「なかなか出てこない」こともあります。
そんな時に基礎となるスケジュールがないと、どれほどのズレや遅れがあるのか分かりません。
その結果重要な対応が遅れ・オープンが遅れ・売上を失う、これこそが最も恐れるべきことなのです。
スケジュールと流れを掴みながらも、ズレや遅れに対応できるよう準備しておくことが重要。
- 早まっても対応できるよう、計画や構想はあらかじめ練っておく
- 長引いても対応できるよう、生活費を多めにとっておく
まずは、基本的な流れ・手順を順を追ってみていきましょう!
1年前:コンセプトづくり&情報収集
全ての原点はコンセプト!まずはここを決める
飲食店開業は、まずは明確なコンセプトがないと始まりません。
もしコンセプトが固まっていないと、
- 開業にいくらかかるかわからない
- 開業すべき場所や物件の広さもあいまいなまま
- いくら売り上げたら利益ができるのかわからない
いわばコンセプトは家を建てるときの設計図のようなもの。
まずはコンセプトをつくり、計画的に開業を進めていきましょう。
コンセプトの作り方
最終的に目指すのは、5W2Hの具体化です。
「なぜ・誰に・何を・どこで・いつ・どうやって・どれだけ」を明確に答えられるようにします。
難しく考えることはありません。
手作りベーグルがおいしいカフェがいいな
こだわりのコーヒーを飲んでほしい
サラリーマンが帰りに寄ってくれるような定食屋がやりたい
まずはどんなお店がやりたいのかザックリと思い浮かべることが第一歩。
具体的にベンチマーク(参考に)している店などあれば、
上記の視点でどのようなコンセプトにしているか考えてみても良いでしょう。
次に、自店の5W2Hを考えます。
Why? | なぜ? | 創業目的/夢/想い |
Who? | 誰に? | ターゲット顧客は? |
What? | 何を? | 商品/メニュー/客単価 |
Where? | どこで? | 立地/物件 |
When? | いつ? | 開業時期/営業時間 |
How to? | どうやって? | 接客/サービス/自社業態/FC |
How much? | どれだけ? | 売上規模/店舗数 |
これを1つずつ考え、コンセプトシートにまとめます。
こちらのシートは無料でダウンロードいただけます。
情報収集も同時に行う
飲食店で働いてきた方であっても、日々の運営と開業は全くの別物です。
開業となると、今まで経験したことないことばかり。
「物件探し」や「資金調達」、「集客」など。
チェーン店や多店舗展開企業で開業・開発担当でもしたことがない限り、未知数のはず。
知らないだけで、『見過ごしていた・損した』という事態を避けるため、事前の情報収集は必須。
やり方がわからないまま進んでは、お金も時間もロスしてしまいます。
インターネットでも様々な情報がとれるようになりました。
しかし、その信用度はサイトによって大きく違います。
自分で開業やそのサポートをやったこともないような方が情報を切り貼りしている薄っぺらいサイトも見かけます。
情報は鵜呑みにせず、「誰が」その情報を発信しているのかを確認するようにしましょう。
書籍はインターネットより信用度は上がりますが、最新情報でない可能性も。
また、著者が自分の提供するサービスに繋げようという意図で書かれた書籍も少なくありません。
「誰が」「どういう意図で」「いつ」発信した情報か、注意が必要です。
セミナーや勉強会を利用するのも1つの手です。
疑問点が聞ける、リアルな事例が得られるなどメリットも。
しかしながら具体的なノウハウより商品説明が多い、そんな実りのないセミナーも残念ながらあります。
具体的に何を解説するか、過去参加者の声・満足度を確認してから参加することが良いでしょう。
ほとんどの情報には良くも悪くも、バイアス(偏り)があります。
「いつ」「誰が」「どんな目的」で情報を発信しているのか。
情報の信用度をはかりながら、情報収集を進めましょう。
10ヶ月~6ヶ月前:事業計画書の作成
コンセプトが決まり、ある程度形が作れたら、事業計画書を作っていきます。
事業計画書の作成は、作ったコンセプトに具体的な数字を落とし込んでいく作業です。
事業計画は一発で作るものではなく、良いものができるまで何度も変更し練り直されるもの。
作り直す前提でまずはトライしてみます。
手を動かし実際に作ってみないことには、どこに問題があるかわかりません。
皆様の頭の中にある商売を、形としてアウトプットすることで初めて分かることがあります。
これは私どもが事業計画作成をお手伝いするなかでよくあるケースです。
- 計画通りの売上を上げても、利益が残らない
- メニュー価格を高く設定しすぎて、想定以上の客単価に
- お金に余裕がなく必要な人員が雇えない
- オフィス立地なのに、平日と休日を同じ売上予測にしてしまった
初めてで全てうまく行くことはありませんので、修正すれば良いのです。
2度・3度作り直し、『これなら成功する!』と確信が持てるレベルのものを作りましょう。
事業計画の作成のポイントは、設定した「数値の根拠を明確に」すること。
売上予測を300万円とした場合、なぜ300万円売り上げることができるか。
その時の客数は?客単価は?回転率は?根拠となる物件周辺のマーケット状況は?
それぞれの数字を論理的に説明できなければなりません。
店長をしていたA店では200万円売り上げていました。今回開業する△△駅の規模を考えると確実にクリアできます。商圏比較はこちらのデータです。
事業計画書の詳しいつくり方はこちらで解説しています。
「事業計画書作成」の解説
事業計画書のサンプルのダウンロードはこちらから。
6ヶ月前:物件探し
コンセプトに合った物件を見つける。
これがもっとも開業を進めるうえでハードルになりやすく、またスケジュールもズレやすいところです。
出店候補地を決める
「お店に来てもらいたいお客様」が多くいるエリアがどこなのかを考えます。
場所ありきではなく、取り込みたい顧客を想定したうえで物件を探すのが基本です。
場所によって、それぞれ異なる特性があります。
オフィス立地・商業立地・住居立地、それぞれの特徴を掴みましょう。
イメージが膨らまないようであれば、基準となる町を見つけ「似た場所はないか」不動産会社に聞きましょう。
店舗を扱っている不動産会社であれば、把握しています。
候補となる場所・駅・沿線をリストアップします。
1駅のみなど、探索場所を限定し過ぎると物件が出てきません。
物件探しが長期化する恐れがあるため、注意しましょう。
物件の探し方
物件を探す方法は、主に3つあります。
- インターネットで探す
- 不動産会社へ依頼
- 自分の足で探す
物件を探し始めたタイミングは現職に就いていて、あまり時間がとれないかもしれません。
そういった場合は、不動産会社を積極的に活用していきましょう。
3つのうち、どれをすべきかという話は正直できません。
「良い物件」は奪い合いなので、全ての方法で徹底的に探すべきです。
「良い物件」をみつけるためには、ある程度の数、物件をみる必要があります。
前述のとおり、奪い合いで、スピード勝負です。
物件を多くみることで、「見る目」が養われます。
地域ごとに賃料や敷金の相場が違います。
それを掴むことが第1歩です。
多くの物件を見るという点では、インターネットは非常に便利です。
もし、出店候補地がある程度決まっているようであれば、
家賃条件や物件が出やすいエリアかどうかなどの相場観を掴むためにも1度見てみましょう。
9万人が利用する居抜き物件サイト「店舗そのままオークション」
セミナーで物件の探し方を徹底解説
ここでは詳細は割愛しますが、「物件の探し方」ひとつにもノウハウが必要です。
みんなの飲食店開業でも物件の探し方について無料セミナーを開催しています。
今までの参加者は1万人を超え満足度は95%以上。
物件探しに苦労する開業者様から『もっと早く来ればよかった…』とのお声も少くありません。
2ヶ月前:内装工事・メニュー構成を決める
内装会社の選び方
店舗は1度作ると、やり直しができません。
せっかく開業するなら、イメージを具現化し使い勝手が良い内装を作ってくれる業者さんを選びたいですよね。
①実績がある会社を選ぶ
設計・施工会社と言っても、あくまで住宅がメインで飲食店の施工経験がない会社も。
知り合いの業者だからといって、無理にお願いしてもお互い不幸な結果に終わることもあります。
店舗内装に慣れていない建築会社では、価格・質の両面で専門会社に劣ることが少なくありません。
施工実績を見せてもらい、気に入った会社に見積もりを依頼しましょう。
複数の会社に見積もりをもらい比較しておくことも重要です。
これを相見積もりといいます。
ただし慣れない施工会社だと、見積もり後に追加工事が発生し結局高値になる場合もあるので注意しましょう。
②コンセプトをきちんと伝える
理想のお店作りには、内装業者と「自分の理想」や「譲れないポイント」を共有する必要があります。
コンセプトはきちんと説明しましょう。
目指すべきベンチマークの店舗があれば、実際にそのお店の写真を見せるなど、より具体的に伝えることが重要です。
口頭よりは文章、文章よりはビジュアルで伝えることを心がけましょう。
③要望・相談にのってくれる会社を選ぶ
コストダウンや消防の手続きなど、相談しなければいけない事項が出てくるかもしれません。
ちゃんと相談にのってくれる会社かどうか、
理想を言えばこちらの懸念事項や起こりうるリスクに先回りして具体策を提案してくれる業者がベストです。
施工の一部を自分でやり、コストダウンに成功した開業者もいます。
参考記事:店舗の内装工事を自分で行う時(DIY)のメリット・デメリットと注意点
メニュー構成を決める
メニューは提供方法も含め、早めに決めておく必要があります。
なぜなら、メニューブックや食器の発注、仕入れ先探しが控えているから。
コンセプトをもう1度見直し、お店にあったメニューを考えましょう。
定番メニューだけではなく、必ず差別化できるメニューも組み込みます。
メニューにおいての差別化は、味・価格だけではありません。
SNSが発達した現在であれば、インスタグラムやFacebookなどでシェアされやすい
ビジュアル・盛り付けのメニューはどんなものかという視点も持っておくべきです。
考えたメニューはカテゴリーに分けて管理しましょう。
例えばイタリアンなら、前菜・パスタ・ピザ・サラダ・デザートなどです。
それぞれのカテゴリーごとに何種類メニュー化するのか。全体を見つつ、偏りがないように調整します。
次に価格設定です。
一般的にいわれている目安は、原価率30%で提供できる値段かどうかです。
ただし、これが全メニューの原価率を30%にする必要はありません。
原価20%以下で提供でき利益が出しやすいメニューや、
逆に原価40%を超え単品で利益は出にくいものの顧客満足度が高いメニューなどを織り交ぜることが必要です。
これをメニュー構成と言います。
また、原価を考えるときに注意したいのが「歩留り」です。
全体量のうち、実際に商品化できる部分(可食率)を考えます。
例)1kg2000円で購入した牛肉をステーキで提供したい
骨や筋など食べられない部分をのぞくと、可食部位は800gに。
つまり歩留りは800gです。
一人前の原価=仕入れ額÷歩留り×1人前の量(200g)=2000÷800×200=500円
500円を30%で割る、つまり原価率30%で考えると1670円ほどの価格で提供できそうです。
歩留りを考慮せずに、価格を決めていると、出せるはずの利益も出ません。
オープン後にコロコロ値段を変えるわけにはいかないため、慎重に考えましょう。
価格を設定したら、お客様視点で値ごろ感・納得感があるか確認します。
魅力的でなければ、材料・調理方法・盛り付けなど見直しが必要です。
あえて素人の友人に意見を聞くのも、顧客感覚を確かめるには有効な手段です。
これを1000円で提供したいんだけど、どう思う?
1000円にしてはちょっと量がたりない気がする。味は美味しいけど
1ヶ月前:食器・備品の発注
食器や調理に使う備品、客席の備品を揃えていきます。
開業時はかなりの量になるため、必ずリストを作り、買い忘れがないようにします。
特に提供時に使う食器が不足しているとせっかくのオーダーが受けられず、売上を失うことになりかねません。
食器の発注
メニューを見返し、どの料理にどんな皿がどれくらいの枚数が必要か考えます。
出数が多い料理の皿は多めに揃え、
出数の少ないであろうものは少なめ、もしくは他メニューと併用できないかという視点も重要です。
例えば、メインのメニューで使う皿は席数の2倍、デザート用の皿は席数の半分など。
食器や盛り付けは料理の印象・満足度を左右するので、よく吟味しましょう。
ただし、必ずしも高価なものを買う必要はありません。
特にオープン間もない時期は、スタッフもホールでのオペレーションにも不慣れ。
落下や破損も起こりやすいタイミングです。
予備も踏まえ、予算内におさめられるものを選びましょう。
備品発注
客席と厨房とで分けて考えると、漏れもなくスムーズです。
厨房は調理器具を中心に揃えていきます。
保管用のバットやタッパーなども忘れずに購入しましょう。
複数個購入するものは、個数もメモしておきます。
客席の備品は、店のイメージを決めるものです。
コンセプトに基づき、統一感を意識して揃えましょう。
メニューや卓上の調味料入れなどお客様が使うもの、伝票やレジなど店側が使うものの両方が必要です。
お客様が来店した時の流れをイメージしながら、必要なものを書き出しておきましょう。
食器や備品の発注の詳細はこちらをご覧ください。
2週間前:開業手続き
保健所と税務署にそれぞれ届け出る必要があります。
提出先 | 内容 |
保健所 | 飲食店営業許可 |
税務署 | 個人事業主の開業届出書
所得税の青色申告承認申請書 給与支払い事務所の開設届 |
飲食店営業許可のために必要な資格
食品衛生責任者の資格が必要です。
食品衛生協会が各地で開催する6時間ほどの講習を受講すると、資格を取ることができます。
ただし1〜2ヶ月以内の近い日程ではすでに満席になっていることもあるので、早めに申込みましょう。
費用は大体1万円~2万円程度で、受講の当日に必要となります。
なお、調理師資格を持っている方は受講する必要はありません。
さらに詳細が知りたい方はこちらの飲食店営業許可(参考記事)をご参照ください。
税務署へ3つの書類を提出
「個人事業主の開業届出書」は必ず提出が必要です。
「所得税の青色申告承認申請書」は青色申告をする場合のみ提出が必要です。
青色申告は大きな節税に繋がるため、個人事業主は1度検討してみることをオススメします。
「給与支払い事務所の開設届」は人を雇う場合は必ず提出しなければいけません。
開業手続きの詳細についてはこちらをご覧ください。
1週間前:レセプション・プレオープン
オープンまであとわずかになりました。
本番を想定した練習をつみ、スムーズにお店を回せるようにしましょう。
レセプションとは
レセプションは関係者へのお披露目・お礼をこめた場。
稀に有料で行う店舗もありますが、無料で行うお店がほとんどです。
感謝を伝えるのはもちろんですが、店舗を軌道にのせるために意識しておくべきことが2つあります。
①オープン後の口コミ集客を狙う
②クオリティーアップ!知り合いからの気兼ねない意見・感想
せっかくレセプションを開くのですから、今後に繋がる場にしましょう。
プレオープンとは
本番直前に行う試運転です。
目指すべきレベルに接客・料理が達しているかの最終チェックです。
お店がスムーズにまわっていない原因をチェックし、改善します。
プレオープンでは必ず満席(ピーク)状態を経験しておくことが重要です。
多くのお客様がお越しになっても対応できるようにしておきましょう。
オープンは最もお客様に来てもらいやすいタイミングだからこそ、不満の発生には細心の注意を払います。
何かあれば、ネガティブな口コミがリアルはもちろんSNSでも広まってしまい、その後の集客につまづく要因になることも。
準備万端の状態でオープンを迎えられるようにしましょう。
レセプションやプレオープンをどう行うのかの具体的な詳細はこちらをご覧ください。
コンセプト決めが大切
最初に決めたコンセプトをもとに全て進めていくことが実感いただけたでしょうか?
ここがブレてしまうとその後もグダグダになってしまいます。
まずはコンセプトをきっちり定め、進むべき方向をはっきりさせましょう。
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年間300件超、累計6500件以上の飲食店開業をサポートしてきた株式会社M&Aオークションの専門家集団。個人店から大手チェーンまでさまざまな業態・立地の飲食店の開業コンサルティングを行ってきたノウハウをブログで発信します。