飲食店開業は立上げ時期がもっとも重要で、オープンのやり方しだいでその後の店舗経営の成否を大きく左右します。
立ち上げに失敗したお店の行く末は非常に厳しく、30%の店舗は1年以内に閉店してしまうと言われる所以でもあります。
そのため、何百もの出店で多くの失敗も成功も経験している大手チェーンは、開業時に行うべきことはもちろん、「やってはいけないこと」を明確に定義しています。
個人店の開業は、まさに一発勝負。
ゼロからのはじめてのスタートだからこそ、「開業時にやってはいけないこと」には最大限の警戒をし、同じ轍を踏まないようにすべきです。
この記事では、大手チェーンに24年勤めた外食業界のプロが「はじめて個人店として独立開業を行うときにもっとも”警戒”したこと」とその解決策について紹介します。
結果的に懸念していた事態はうまく避けることができ、オープンわずか1か月ほどで早くも経営を軌道に乗せることができました。
そのお店は2017年10月2日に門前仲町に新しくオープンした、お洒落なワインビストロ「ワインカフェ門前仲町」。
どうやってスムーズな立ち上げを実現したのか、小原オーナーに直接インタビューしてきました。
- 自身の専門領域ではない部分をどう解決したのか
- 物件が見つかりにくいエリアでの変則的な出店
- オープン時にもっとも”警戒”したこととは
- 販促費用0円でも新規客を獲得した方法
- リピート率・来店頻度アップの施策
フードやドリンクさえ提供していれば何の苦労もなく経営が成り立つ、飲食店はそれほど簡単なものではありません。
小原オーナーが取り組んだのは、お金をかけずに行う集客の基本。
基本にも関わらず、意外と多くの店舗経営者ができていないからこそ差別化に繋がっています。
飲食店開業に奇策なし。
王道の施策の積み重ねだからこそ、個人店で独立開業を考えるあなたが実践できる内容です。
すぐに今日の営業から真似できるものもありますので、ぜひ経営にお役立てください。
50歳の節目で叶えた飲食店開業の夢
ワインカフェ門前仲町の小原オーナーは、外食大手チェーンで24年勤めあげたベテランです。
不採算店舗の黒字化や100名の社員研修、新業態の立ち上げなどに取り組み、常に高い成果を上げてきた店舗運営のプロ。
50歳の節目を迎え、かねてよりの夢だった開業に踏み出した小原オーナー。
華々しいキャリアをお持ちですが、飲食店での独立に拭いきれない不安がひとつあったのです・・・。
接客・フロア業務はプロフェッショナル、しかし…
小原オーナーはフロアに関しては数々のプロジェクトを成功させてきたスペシャリスト。
接客からスタッフ採用・教育など他の独立開業者が羨む経験とノウハウをお持ちでしたが、ひとつだけ未経験のことがありました。
それは、メニュー開発。
大手チェーン店のメニュー開発は専門の部署が請け負っているため、携わる機会がなかったのです。
お客様に満足いただくには接客や雰囲気だけでなく、高い商品力も必要だ…
メニュー開発が自分の店を持つうえでの弱点だと考えていた小原オーナー。
調理に関してはプロではないのに、満足度も高く・利益も残せるメニューを”開発し続けられる”のか?
来店客に飽きられず、売上を安定させるためのメニュー開発をどう行うのか。
「メニューを作れる料理人の採用」「調理を本格的に学んで自分でできるようにする」「外部コンサルタントに委託する」など様々な手段から、自身に不足しているメニュー開発力を補強できる方法を模索しました。
投資コスト・人的リスク・有限である自身の時間など、小原オーナーにとってもっとも最適な選択肢としてフランチャイズの活用を決めたのです。
そのフランチャイズは、気軽な雰囲気かつ本格料理とワインを売りにした『ワインカフェ Wine Cafe』。
『ワインカフェ Wine Cafe』のフランチャイズ本部では年間2000本のワインを直営のソムリエがチェック。試食会を毎月実施し、ワインとそれに合ったフードメニューを加盟店に紹介。
紹介されたメニューから気に入ったものを、各加盟店舗の判断で取り入れることができる自由度が高い業態でした。
売り切り型にするフランチャイズも多いなか、継続して新作レシピを導入できることに魅力を感じ、小原さんは加盟を決めたのです。
オーナーの目論見通り、定期的に新メニューを導入することが、来店頻度向上に一役買っているとのこと。
(参考サイト:ワインカフェの詳細は姉妹サイト「フランチャイズビズ」)
飛び込んだ不動産会社で、思い描く物件と運命的に出会う
取り組む業態を決めた小原オーナーは、自宅から通える範囲で物件を探しはじめましたのですが、これが簡単にはいきません。
ワインカフェの特性に合ったオフィス立地、もしくはオフィス&住宅立地に絞って居抜き物件を検討。
本部が算出しているワインカフェの出店物件の家賃の目安は、1坪あたり1万円。
賃料を抑えるために、空中階物件への出店も行っています。
しかし出てくるのは、1坪あたり2万円以上の高い物件ばかり。
人形町や小伝馬町に候補物件を見つけ、内覧するものの賃料に見合う売上が見込めず、物件契約を見送ることが続いていました。
そんななか、飛び込んだ不動産会社で運命的な出会いが。
事務所仕様だけど、工事すれば飲食店も入れる物件がありますよ
紹介を受けたのは門前仲町の、なんとスケルトンでも居抜き物件でもない、事務所仕様の物件。
門前仲町はオフィスと住居が半々で、どちらも自店のターゲットになりうる立地です。
メインから1本外れるとオシャレな個人飲食店が立ち並び、それを目当てに食事や飲みに訪れる人も多いことも確認。
近隣の人は個人店への心理的抵抗が少なく、出店場所として適したエリアでした。
本物件は15坪で20万円、坪あたり1万3千円と基準より30%ほど高めの条件。
店舗物件でもないため、初期投資コストも想定よりは高くなることは避けられません。
しかし、駅近・路面の好立地を考えると好条件だったため、事務所物件で飲食店という変則的な出店を決断しました。
あえてオープン販促をやらないのが堅実な戦略?
オープン販促はせず、サイレントオープンでのスタートでしたね?
はい。来店してくれた一人一人の方を大切にもてなしたい、と思ったんです。
2017年10月2日に新しくオープンした「ワインカフェ門前仲町」は、大々的な宣伝もオープニングキャンペーンも行わず、静かにひっそりとオープンしました。
※これを「サイレントオープン」と言います。
小原オーナーは長い飲食店経験のなかで「ひとりひとりのお客様」の大切さを痛いほど知っていました。
勇気を出して初めてのお店に足を踏み入れたお客様に、最大限のおもてなしを提供する。
あえてジワジワと認知を広げていくサイレントオープンの道を選んだのです。
オープニングキャンペーンは諸刃の剣
飲食店には「オープン景気」があるとよく言われます。
新しく誕生したお店は「新しい」というだけで目立ちますし、準備期間中も周辺住民・従業者の注目の的になっています。
ちょっとした特典を付けたオープニングチラシを配ったり、オープニングキャンペーンとして割引やドリンクサービスなどを実施すれば、来店数をグッと増やすことは難しくはありません。
しかし「オープニングキャンペーン」は、劇薬になることも。
集客効果が高いだけに、使いどころに注意しないと、逆に店舗経営をピンチに追い込むリスクもはらむ「諸刃の剣」なのです。
これが記事冒頭に出てきた、小原オーナーが開業時に最大限に”警戒”していたことなのです。
ではなぜ来店数を増やせるオープニングキャンペーンに、リスクがあると言われるのでしょうか?
問題点は3つあります。
①割引や特典で利益率が下がる
オープニングキャンペーンでは「フード20%オフ」「ドリンク半額」など割引・特典をつけることが一般的。
割引率やサービス内容がオトクなほどお客様に来店していただけますが、サービスしたぶんの利益は減ることになります。
②キャンペーン中に来るお客様はリピーターになりづらい
お店の雰囲気・メニュー・価格(通常価格)を吟味したうえで来店したお客様と、お得なキャンペーンに釣られて来るお客様の属性は大きく異なります。
割引(特典)あるし、とりあえず一度くらい行っとくか
割引だけが目的の来店客は「クーポンホッパー」と呼ばれることがあります。
かつてグルーポンのようなフラッシュクーポンのサービスで50〜70%の割引が行われることがありましたが、そのようなお客様をリピーターにするのは難易度が高いと言えます。
③悪い噂(悪い口コミ)の要因になりかねない
オープン当初は慣れないオペレーションにどうしても時間がかかります。
過度なオープンキャンペーンをやってしまうと、提供時間・味・品質・接客のどこかしらに問題が発生することも。当然、お客様が不満足だとリピートしてくれることはありません。
せっかく来てみたけど、料理が少し冷めててガッカリ
忙しいのはわかるけど、店員さんの態度が悪いから、もう行かない
料理出てくるの遅いし、レジもだいぶ待たされたな~。あの店は避けたほうがいいかも、って友達にも教えてあげよう
こりゃ、評価は2点だな。食べログにコメントしとこう。
リピーターを捕まえるどころか、お店に悪い印象を持つお客様を一気に増やし、悪い噂(口コミ)をバラ撒くような結果になりかねません。
良いクチコミと悪いクチコミがあった場合、「良いクチコミの方が気になる人」は全体の28.1%であるのに対し、「悪いクチコミの方が気になる人」は全体の71.8%で、悪いクチコミが与える影響の方が大きい ※gooリサーチ「購買行動におけるクチコミの影響」に関する調査
認知を広げて来店数・売上を増やすためのオープニングキャンペーンが、逆にお店をピンチに追い込んでは本末転倒。
実際によくある話ですので、オープニングキャンペーンを実施すべきかどうか、時期についても、ぜひ慎重にご検討ください。
サイレントオープンのリスクと対策
サイレントオープンであれば過度な来店を避けられ、「ひとりひとりのお客様に、しっかりと丁寧におもてなしがしやすい」というメリットがあります。
しかしその反面、ともすると「誰も入ってこない」「客数が増えていかない」という心配をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
対策その1:長期戦になっても耐えられる準備を
オープン販促は認知を広める絶好のチャンス。
それをあえて行わないということは、損益分岐点(黒字)売上に達するまでに時間がかかる場合もあります。
店舗が軌道に乗りきる前に資金が尽き、閉店のピンチを迎えてしまうかもしれません。
では立上げ時期に、どのような準備をおこなうべきでしょうか?
融資をうけてでも「運転資金をしっかり準備する」ことを強くおすすめします。
お金を借りると利息がかかるとはいえ、公的融資は1~3%の低金利。
もしもの備えとして1度検討して損はありません。
店舗を軌道にのせられさえすれば、繰り上げ返済をおこない、残金を返せば利息もかかりません。
(運転資金の重要性についての参考:飲食店の閉店は、よく赤字が原因だと「勘違い」されている。)
小原さんも日本政策金融公庫を利用し、1年分の運転資金を前もって準備。
6カ月で立ち上げることを計画では目標としながらも、念のため1年かかっても耐えられる資金を準備しておいたのです。
対策その2:プレオープンとグランドオープンの2段構え
飲食店業界歴20年を超える小原さんには必要ありませんでしたが、プレオープンとグランドオープンの2段構えにする方法をご紹介します。
こうすることで、オープン販促のマイナス面を無くし、その効果を100%発揮できます。
まずはプレオープンとして、あえて告知せずにオープン。
多少のミスや粗相があってもプレオープンであれば、お客様の理解は得られやすいため、このタイミングで実際の現場で起きた課題を解決。
プレオープンで練習を積み、オペレーションの完成度を高めます。
万全の運営状態になったら広告をうち、グランドオープンを迎えましょう。
また、プレオープン中は知り合いだけを受け入れることでも、練習期間を設けられます。
店舗開業直後は、「必ず」想定外のトラブルが起きるものと考えておいた方が無難。
経験をしっかり積んでおき、想定外の事態を修正しておけば、大々的に告知を行ってもきちんと対応できます。
オープン販促をおこなって来店が増えても、お客様に満足いただけるオペレーションが可能です。
(プレオープンについての参考記事:飲食店のレセプション・プレオープン【招待状ひな型】)
意外にも、多くの店舗経営者がおろそかにしている集客の基本
ワインカフェ門前仲町にわたしが訪れたのはオープンから約1か月後の木曜日。
オープン時の宣伝やキャンペーンなどは行わない、と伺っていたので、
今日は平日だし、まだまだお客様も少ないだろうから、今日はオーナーさんとゆっくりと話ができそうだな
失礼ながらこう思っていました。
しかし、予想は大きく外れました。
19時頃に来店した時には私を含めて2組しかお客様がいなかったのですが、あれよあれとお客様が増え始め、21時頃にはほぼ満席に。
その中には、明らかに「常連さん」と思しきお客様の姿も。
ひょっとすると、オーナーさんの元々の知り合いの方かな・・?と思いましたが、オーナーさんとお客様の会話を聞いていると、そういうワケでもなさそうです。
広告もせず、キャンペーンを打たず、どうやって集客しているのだろう?
オーナーさんに声を掛けようとすると
あ、すいません。ちょっとだけ失礼します。
とそそくさとお店の外に行く小原オーナー。
オーナーさんが向かった先に目をやると、そこに質問の答えがありました。
お店の前で中の様子を見ていた男性グループに、小原オーナーが声を掛けています。
2~3の会話を交わしたと思うと、ドアを開けてオーナーさんが笑顔で戻ってきました。
新規のグループ客5名を引き連れて。
新しいお客様達はどうやらお店の外で「入るかどうか迷っていた」ようです。
そこにオーナーさんから温かい歓迎の言葉をかけられ「今日はこの店にするか。」と全員一致で入店を決められたようです。
その後のグループの会話から聞こえてきたのは「気になってはいたものの、入るか迷っていた」らしく、今日オーナーさんが声を掛けてくれたのは、彼らにとってまさに「渡りに船」であったことが分かります。
そこで少しオーナーさんの手が空いた時に聞いてみました。
いつもああやって外のお客様に声掛けているんですか?
そうですね。無理にお誘いしませんが、入店を躊躇されているようなお客様には、声を掛けるようにしていますね。
今、来ていただいている常連さんも、ほとんど最初はそんな感じです。意外とみなさん、背中を押してくれるのを待っていたりするでしょう?
あたかも、そうすることが「当たり前」のように話す小原オーナー。
これが実は重要なんです。
「ドアを開けて声をかけるだけ」ができない経営者は多い
オープンから2か月3か月経っても、「なかなかお客様が来てくれない」と集客に悩んでいるオーナーさんから相談を受けることがあります。
もっとも簡単で、もっとも基本的な集客方法である「お店に入るかどうか迷っている人に声を掛ける」ことができていないオーナーさんが意外に多いのです。
お店の中に居て「どうしてウチにはお客様がこないのだろう?」と嘆いている暇があったら、お店の外に出て、道行く人に声を掛けたり、笑顔でチラシを配ったりする方が、よっぽど建設的かつ効果的です。
アイドルタイムに近くの企業に飛び込み、
今月オープンした◯◯です。近隣の企業様へご挨拶にきました。週末に飲み会などありましたら、一度ご検討ください
とその場で宴会の予約を取ってくるお店もあります。
声を掛けてみて、もし断られたら・・・
ウチは味がイイから何もしなくてもお客様が入ってくるはず
こういったおごりやプライドは、この際、一度思い切って捨ててしまうことをおススメします。
実際、入店を迷っている方がいたら、そっとドアを開けるだけでも効果があります。
もしやっていないなら、今日からやることをおすすめします。
何名様ですか? 今ならすぐご案内できます
メニューをご覧になりますか?ワインはボトルで2980円均一でご用意しています。ノンアルコールのカクテルもありますよ
お食事ですか?限定10食のメニューも今ならまだ注文いただけます
リピート率をアップさせる接客術
新規オープンから約1か月後に訪れた「ワインカフェ門前仲町」には、すでに多くのリピーター(常連客)が。
もちろん料理もワインも美味しいのは間違いないですが、飲食店にとって「料理が美味しい」というのは、いわば当たり前。それがなければそもそも飲食店が成り立ちません。
料理がおいしいお店でも「リピーターが増えていくお店」と「いつまでも新規の比率が高いお店」がありますが、この差はどこにあるのでしょうか?
私の経験上、リピーターが増えていくお店は、ほぼ例外なく「特別感」を上手に演出しています。
この「特別感」というのは、実は、それほど難しい話ではありません。
お店側の”ちょっとした気遣い”で、十分に演出することができます。
お客様になったつもりで想像してみてください。
2回目に来店した時に、こんな声かけをされたらちょっと印象に残りませんか?
いらっしゃいませ。先日はどうもありがとうございました。みなさん、だいぶ盛り上がっていらっしゃったようですが、無事に帰られました?(笑)
前回はあちらのテーブルでしたので、今日は少し雰囲気変えて、奥のテーブルになさいますか?
先日お飲みになって”美味しい”とおっしゃって頂いた〇〇産のワインですよね。今週新しい銘柄が入ったので、もし宜しければお試しになられますか?先日のワインより少しフルーティな味わいですが、お好みに合うと思いますよ。
前回の来店や自分のことを覚えておいてくれて、それにあった対応をされたら、どうでしょうか。
自分がまるで「特別扱い」されているように感じ、良い気分になるものです。
ワインカフェ門前仲町は小原さんにこんな質問をしてみました。
ココにいらっしゃるお客さんって、どんな方が多いですか?
そうですね~。やはり近くで働いていらっしゃる方が多いですね。
この間はこの近くの某メーカーにお勤めの部長さんが部下の方と一緒にお見えになって、あそこのテーブル席でお食事されていかれました。
その隣のビルにお勤めの方も良くフラッとお越しになって、カウンターで飲んでいかれますね。ワインがお好きなようで、先日はコチラの銘柄のワインをひとりでボトル1本空けていらっしゃいましたよ(笑)
サラッとお答えいただきましたが、実はコレがリピート率を高める接客の秘訣。
誰でももっとも関心があるのは、その人自身です。恋愛でも、自分に関心を寄せてくれた人には好意を持ちやすいですよね。
ワインカフェ門前仲町のオーナーさんは、お客様の以下のような来店時の情報をしっかり覚えていらっしゃいます。
・「どこ」から来たのか?
・「どこ」にお勤めなのか?
・「いつ」来店されたのか?
・「誰と」来店されたのか?
・「何を」注文されたのか?
長年の経験から、これをお客様とのコミュニケーションのベースとされているのです。
何度行っても「初めて来店したかようなよそよそしい接客」をするお店と、一度行っただけなのに、「自分のことや好みを覚えてくれて、それに合った接客」のお店、みなさんなら、どちらのお店に好んで行かれるでしょうか?
再来店して頂いたお客様に「ようこそ、またお越しくださいました。」という”感謝の気持ち”や”おもてなしの心”をさりげなく伝えることに、プラスはあってもマイナスになることはまずありません。
そのような気持ちを含んだ笑顔を送るだけでも、お客様は「特別感」を感じるものなのです。
記憶力に自信がない人は顧客メモを作ろう
記憶力に自信がないというオーナーさんは、お客様の特徴をメモしておきましょう。
会計時の伝票に書いておき、閉店後にノートにまとめます。
お客様の名前も一緒に管理しておくと、次回来店でお声がけするチャンスがあるかもしれません。ひとは名前で呼ばれると嬉しいものです。
・ポイントカード作成時にお名前を聞く
・オーナー名刺を渡し、きっかけをつくる
本日はありがとうございました。オーナーの鈴木です。(名刺を渡す)お前お伺いしてもよろしいですか?
佐藤です
佐藤様、またのお越しをお待ちしています
名刺を渡すだけで名乗っていただけるケースもあります。
こちらから名前を聞くのは失礼なんて思う必要はありません。
意外とお客様はお店とコミュニケーション取りたいと思っている人は多いもの。特に気に入ったお店ならなおさらです。
予約メインのお店の方であれば、より簡単。
予約時に聞いたお名前と電話番号といった事前情報に、当日の注文メニューなども紐づけて管理しましょう。
お客様がお店に来なくなるのは「不満」が理由ではない
何度か来店してくれたお客様が、足が遠のく原因はなんでしょうか。
実はほとんどの飲食店において、なにか不満足が生じたから来店しなくなるというケースはそこまで多くありません。
多い理由として「単に忘れられていた」もしくは「お店への飽き」です。
料理がおいしくても、接客が気に入っていても、同じメニューではどうしても「飽き」てしまいます。
「ワインカフェ門前仲町」では、月に1度フランチャイズ本部から新メニュー・ワインの提供を受けています。
そこからお店に合ったものをチョイスし加えることで、来店頻度を保っています。
原価計算や調理オペレーションや注文数の想定など、毎月新しいメニューを考えることは、それなりの手間がかかるもの。
本部のメニュー開発ノウハウをうまく活用することで、接客や経営管理など小原オーナーの得意分野に力を入れることができお店がうまく回っているのです。
差し込みメニューで来店頻度アップ
来店頻度を高める工夫として「差し込みメニュー」があります。
これはお店の定番商品を記載した「グランドメニュー」とは別に、おすすめメニューや季節メニュー、週替わり/日替わりメニュー等をお客様にお知らせするもの。
通常はグランドメニューとは別に、定期的に差し替えられるように「別紙」にすることが多いです。
お店によっては黒板や壁掛けの札などで表現しているところもありますね。
「差し込みメニュー」には、客単価UPや原価率(利益率)のコントロール等、様々な目的があります。
その最も重要な役割は「来店頻度の向上」です。
どんなに気に入ったお店でも、毎回同じメニューではどうしても「飽き」が来てしまいますし、次第に来店頻度は落ちます。
ひと通りメニューを制覇したら、自然と来なくなるお客様も、意外と多いのです。
「飽きたからもう来ないよ。」「全メニューを制覇したから、来週から別のお店に行きますね。」のように、お客様がお店に伝えてくれることはほぼありません。
ほとんどのお客様は飽きたら何も言わずにフェードアウト。
提供されたメニューや接客に満足していないわけではないにも関わらず、です。
お店側では「お客様に飽きられている」ことになかなか気づけません。
リピーターが増え続けているお店は必ず、お客様に飽きられないような工夫をしています。
ぜひ、定期的にメニューを入れ替えたり、季節メニューや日替わりメニューを投入するなどして、少しでも来店頻度を高める工夫をしていきましょう。
差し込みメニューの入れ替えは、来店頻度に合わせることがポイント。
例えば、近隣のサラリーマンをターゲットにしたランチ。
近隣の方は毎日食事をするとなると、日替わりメニューが喜ばれます。
全てのメニューを変える必要はありませんが、1品のみでも日替わりにすべきです。
では少し単価の高い居酒屋だったら、どうでしょう?
日常使いのランチより来店頻度は落ちるため、メニュー変更もそこまで頻繁に行う必要はありません。
週替わりや月替わり、季節メニューなど来店頻度に合わせます。
日替わりは効果的ですが、メニューは変えれば変えるほど手間がかかるもの。
メニュー開発に時間がかかるのはもちろん、使う食材が増えるためロスを防ぐ管理も煩雑に。
お店に合ったペースを見つけるようにしましょう。
リピート率と来店頻度の重要性
先に述べた「リピート率」と「来店頻度」ですが、これが改善するとお店の経営は、「劇的」に変化することになります。
1週間で新規のお客様が80人来店するお店を想定して考えてみましょう。
4つのパターンを比べます。
①リピーターなし
②20%リピート・月1来店
③30%リピート・月1来店
④30%リピート・月2来店
※計算を単純化するために、一度リピーターになったお客様は、それ以降、同じ頻度で来店するものとします。
リピート率の違いによって、来店客数に大きく差がつくのがわかりますね。
「20%リピート・月1来店」の6カ月目が640人に対し、「30%リピート・月2来店」の6カ月目は1248人。
リピート率の差がわずか10%でも来店頻度が高いだけで、半年後には倍近い客数の差がついています。
客単価が3000円と想定し、2カ月目と6カ月目の売上を比べると、よりその差が実感できます。
2カ月目には各グループごとの差はあまり大きくありません。
一生懸命に努力したのに「この程度か…」と思われるかも知れませんが、その後の経営への影響は非常に大きい。
どちらのお店も、同じリピート率・来店頻度をキープしていくとすると、6か月目の売上には大きな差がついています。
集客はお金をかければいいのではない
[左]開業アドバイザー大森 [中]ワインカフェ門前仲町シェフ [右]オーナー小原章弘氏「ワインカフェ門前仲町」が行なっていることは、何も特別なことではありません。
オーナーさんはそれを「当たり前」と思ってやっていますし、とても自然体で無理なく実践しているため、ご本人ですら「すごく集客に力を入れている」とは思っていらっしゃらないでしょう。
ですが、この「当たり前のこと(凡事)」ができているお店が意外に少ないのです。
新しくオープンしたお店がたった1年で”半数近く”潰れてしまう、という事実がそれを物語っているのではないでしょうか。
当たり前のことを当たり前にやる(凡事徹底)、それすらできないお店では「半年で経営を軌道に乗せる」道筋が描けません。
繁盛店を目指すのであれば、まずは「当たり前」を徹底的に実践することから始めましょう。
「集客」というと、どうしても、看板やチラシをどうする?グルメサイトは?SNSは?とテクニックに走りがちです。
色々な広告媒体にお金をつぎ込む前に、まずは「当たり前のことを当たり前にできているか?」という視点で、自店のオペレーションを見直しても良いかもしれませんね。
■ワインカフェ 門前仲町
住所:東京都江東区門前仲町1-3-2 山岡ビル 1F
アクセス:大江戸線「門前仲町駅」4番出口徒歩1分
電話:03-5809-8806(予約可)
営業時間:17:00~24:00
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開業前に知っておきたい!集客のイロハセミナー
『どんな人が、どの媒体を使っているのか』
『費用対効果が1番良い手法を選ぶには?』
ここを考えて動かなければ、効果の良い“当り”集客方法を選ぶことはできません。
「そもそもどのような集客があるの?」という疑問にお答えしながら、先輩オーナーが実践する「コレで成功しました!」という集客方法まで解説します。
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1975年生まれ。東京都出身。
東証一部上場のコンサルティング会社にて、数百店舗の飲食店チェーンの立地診断・出店判断を担当。また、大手チェーンのM&A業務に関わるなど、多岐に渡る豊富な経験を持つ。
実務経験15年、1000店舗以上の支援実績を誇る立地戦略・物件開発のスペシャリスト。長年の現場経験に基づいた的確なアドバイスは、個人からチェーン企業に至るまで、多くのクライアントから絶大な信頼を集めている。