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写真左 加藤様/右 開業アドバイザー 大森

開業から2年。
神田で成長を続ける『ももんじ屋』オーナー加藤様にお話をお伺いしました。
「中途半端ならやらない方がいい」、これから開業する人へ厳しい言葉をかけるその真意とは?

神田駅南口からすぐ、高架下にある「ももんじ屋神田本店」。
新鮮な豚・牛・鶏が人気の串焼き居酒屋です。

飲食店がやりたい!“ありがとう”と言われる仕事

ずっと飲食で働いてこられたんですか?

僕自身、ずっと飲食で働いていました。20代の時に当時働いていたところのオーナーさんより「一緒にやろう」 と誘われて、その方が独立する形で一緒に大阪でお店をやりました。
ただ、1年経たずにそのお店を潰しちゃったんですよ。上手くいかなくて。

それで、こっち(東京)に戻ってきたんですけど、当時はオシャレなダイニングが流行りでした。僕も創作料理の店で働きまして、そこはランチは行列が出来て、3回転ぐらいするんです。「ズームイン」にも取り上げられてすごく人気はあったんですが、夜はガラガラ。儲かっていませんでした。上手くいってない中で「どうしようかな」となった時に『独立したいな』と思ったんです。

独立するために、まずとった行動とは?

自信もなかったので、アルバイトで色々な業態を掛け持ちしました。昼間に居酒屋、夜に焼肉やったり、カルフォルニア料理、オイスターバーとか。可能性ありそうな業態のお店で取りあえず働いてみるんです。そうするとどんなことをやっているのか分かるじゃないですか。それで自分で出来るのか、またやったとしたらどうなるか考えていました。

加藤さんが飲食ビジネスにこだわった理由とは

飲食って好きじゃなきゃ出来ないですけど、ちょっと特殊で。こっちがお金もらっているのに「ありがとう」って言われるんです。そういうのってなかなか無いじゃないですか。面白いなって、やるなら飲食がいいと思いました。

飲食をやるなら自分でやりたくて計画を詰めていきました。例えば、お金はどの位準備できるのか。僕の場合、お金かけないで独立できて、自分の得意なこと、やりたいことを考え抜いくと肉の業態になりました。その中でも居抜き物件を使って、焼肉屋かもつ焼屋か、自分で出来る可能性のあるものを考えました。

店主 加藤様。
朝5時まで営業していたにも関わらず、午前中の貴重な時間を空けて下さいました。取材にご協力いただきありがとうございます。
写真は2階のキッチン部分。1階のカウンター内が調理としてはメイン。

繁盛店の2店舗目の立ち上げでも、苦労があった

肉の業態に絞った後、どう行動されましたか?

社員を募集しているところを探して、もつ鍋・もつ焼屋に入りました。それが田町の鉄火。田町はNECの街でサブプライムもはじける前で元気でした。店の売り上げも伸びているところでした。
2店舗目出す時に店長にしてもらい、オープンにも関わったんですよ。

実はこれが大変でした。
1店舗目は8坪で最高750万円売る店。なので、店にお客さんが入りきってなかったんです。予約も取ってなくてもそんな状況だったので、2店舗目は「予約だけで十分な売上がいける」という考えでした。

でも実際はそんなことなく。

店舗は専用階段で2階、田町から慶応に向かう人通りのあるところ。でも、歩くスピードが速くて、人通りもあり過ぎて入店しない。全然、結果が出なかったので、「やるだけやろう!」と。

お金をかけずに出来る方法を考えて、キャッチを出したり、営業時間を変えたり色々しました。そうしたら1年ぐらいで結果が出て、評価もされて、次の出店に関わることになりました。

次も店長として店舗の立ち上げを?

ええ。次は新橋でした。魚金と塚田農場があるあたりの地下店舗で、専用階段なし、看板も指定のものを1つしか出せませんでした。それしか看板出せないのは入ってから知ったんですよね
結局、立ち上げから売上が伸びず、赤字ではないけど利益も出ませんでした。排気の問題もあり、焼いてると店の中が煙で真っ白になっちゃうんです。「演歌みたいでいいでしょ」とか言いながらやってたんですが、限界もあって(笑)そんな時に田町にもう1軒出す話が出て、人員を集中させた方が効率が良いんじゃないか、と言って閉めることになったんです。

トータルで鉄火で4年半働き、店の立ち上げで注意しなければいけないことや店長としての業務、売り方・仕入を学ぶことができましたね。

元ラーメン店を居抜きで入居。改装し使用中。
1・2階の店舗で1階はカウンター、2階はテーブル席が主。合わせて13坪、約30席。

断られ続けた物件探し、決まるまでに9ヶ月

物件探しはどのような基準で行っていましたか?

蒲田・大森は実際に歩いて町を見に行きました。蒲田では実際に良さそうな居抜き物件が出てきたものの、場所に対して家賃が高くて合わなかったんです。ワイン業態とかなら良いのかもしれないですけど、うちみたいな業態は単価も上げづらいし。大森では良い候補物件はでなくて、もう本当に物件が出ませんでした。

めちゃめちゃ良い物件が出たのが自由が丘でした。駅前で半地下の焼き鳥屋だったんですけど、家賃20万で席が12席くらい。アッパー系の焼き鳥屋だったのでうちであればもう4席ぐらいいける計算でした。あの辺はオシャレ業態ばっかりで高いので、うちみたいなのは少なくて出店しやすいんです。出店したら『絶対勝てる』と思ったんですけど、競争が激しい地域で審査で落ちていまいました。

物件自体としては路面か専用階段のある地下か2階に絞って探しました。
場所として、商店街のはじなど駅から近過ぎず、歩いていてお店を探すところ。交差点から覗いた時に見えるなど、人が居るポイントからの距離などを見ていました。 そのポイントから人を引っ張ってくることは出来るので。

物件探しにはトータルでどのぐらいの期間がかかりましたか?

店舗を辞める前から物件は探してました。働きながら探していた頃を抜かしても半年はかかりました。ただ自分の場合は保証人が用意できず、やっぱり良い物件ほど条件がつけられて厳しかったです。店舗の実績がないから保証人と言われるけれど、用意できず、断られるといった形でした。勤めている時はこのパターンで断られ続けたので辞めてからはまず自分で会社を作りました。法人になっておくと、法人で申し込んで自分自身で代表人保障に入れるんです。

働いていたところの定款を借りて、公証人役場に通いつめて延々やりとりしながら作りましたね。すごく良いおじちゃんがいて。自分でやるとそんなにお金かからないですし。

どうしてこの物件(神田の高架下)にされたんですか?

正直、この物件に決めたのもずっと探してきたのに今まで「決まらなさ過ぎ」たから。

この物件、パッと見ただけでは魅力的だと思えませんでした。
1・2階だし、席数とれない、家賃高い。神田は人も多いけど競争が激しいなど、前評判で良い話を聞いたことがなく、出したくなかったエリアなんです。

でも断られ続けてましたし、「逆に、皆が避けるエリアで成功できたらどこでも通用するんじゃないか」って。

この物件の場所は神田の中で抜群に良いわけではないけど、路面店だし知名度を上げるにはありだと思いました。エリアに焼き鳥店も多く、老舗もあって、競争も激しくて、そこでちゃんと経営できて知名度が上げられれば面白いかな、と。

単価も上げられないし、1・2階でフロアの人員もいるしそこまで儲からないかも、とは思いました。でも、負けない経営が出来れば次に繋がるじゃないですか。利益は少なくても、自分とスタッフの給料が確保できて次に繋がるのであれば面白いと思ったんです。

のれんには「炭火串焼と朝挽きホルモン」の文字。
基本的に毎日、芝浦から仕入れを行い新鮮な肉を提供。その日の仕入れにより変わる日替わりのメニューも多く用意。「鮮度」と「手作り」にこだわっています。

自己資金だけで開業しようとしたけど

資金面はどうされたんですか?

最初は自己資金だけでやろうと思ってたんです。1人ないし、2人で出来る物件を考えていたんですが、でもそういうのは競争が激しく取れる物件も限られてくるんです。しかも、1人2人くらいでできるお店の規模だと先に売上の上限も決まっちゃうじゃないですか。だったら、お金を借りて、先にお客さんが来やすい物件を借りちゃって売上作って、返そうかと。

融資を使って出店をしようとしていたわけではないんですね

ええ。資金調達は考えていなかったので不安はありました。その時、店舗そのままオークションに登録していて、色々なセミナーをやっているのに気が付いたんです。「時間を情報収集に使えるのは物件を探している今だけだな」というのもあって行ってみました。住んでる池上からバイクで会場(池袋)行ったら距離はありましたけど、結構色々なセミナーに行きました。物件探し、資金調達など。

創業融資の勉強会にも出られたんですね

その借入の勉強会に参加したのが、物件の申込みをここも含め3件ぐらい入れているタイミングでした。ここの物件オーナーと話してから急に話が進んで契約が差し迫っていたんです。

そのまま、資金調達のサポートもお願いして良かったです。めっちゃ早かったですね、仕事が。セミナーが終わってから大森さん(※弊社開業アドバイザー)と少し話して、後日1回打ち合わせしてその場で事業計画作りました。もうその週の内に公庫と面接してましたから。
3日単位で話がどんどん進んで行って、紹介してもらった税理士事務所で面接だったんですよね。結果出るのもめっちゃ早かったです。ゴールデンウィーク絡んでるから時間かかるかも、って言われてたんですけど早かったですね。

やっぱり借入は必要でしたか?

そうですね。結果からすると、お金借りておいてよかったです。

5年で組んで、丁度いいぐらいですね。利息も払いたくないんで、2年ぐらいで返そうと思ってたんですけど、今の売上からは良いペースで返せていると思います。売上も上がってきていますし。現在、借金を抱え頑張っております(笑)

2階客席部分。
貸しきりでの使用も受付中。
ランチ・ディナーの営業をやっていた際、ちょっとした休憩にこのソファーを使うこともあったそう。

最初は店に寝泊まり!?飲食店経営者の生活とは?

1日のタイムスケジュールを教えていただけますか?

まず家を12時ぐらいに出ます。銀行に寄ったり、買い物を済ませます。

五反田と品川で仕入れます。品川に屠場があってその近くに内蔵を仕入れている店があるのでそこに行きます。基本的には毎日仕入れています。

店に着くのが14時30分。そこから仕込みを始めて18時オープンです。

そこから朝の5時まで営業で、食事のラストオーダーは4時です。3時ぐらいに人がいなければ閉めちゃいますけど。家帰ると6時ぐらいですね、今日は6時30分でした。

以前はランチもされていたんですよね?

ランチやってる時は店に泊まっていました。最後、締めの作業中に寝ちゃうんです。翌朝、ランチのバイトの子が来て起きるみたいな(笑)それが朝10時で一緒にコーヒーを飲んで、シャワー浴びにカプセルホテルに行ってました。その時間だと安いんですよ。それから、五反田で仕入れして、戻ってランチの営業、片づけ、昼食、品川へ仕入れ。そこから仕込み、夜の営業です。この時ばかりは家には帰れなかったですね。この生活、1年半続けました。

現在ランチをしていない理由は?

人材の問題です。

そもそも宣伝と割り切ってやっていたので利益もほぼ出ない。売上高はあがるから家賃比率が変わるぐらいです。社員で人件費かけないでやって、良いのは宣伝・売上高・仕込みなんです。バイトさん雇ってやると何も残らないのでやらないんです。夜の営業への告知にはなりましたけどね。

ももんじ屋の名物!とにかく食べていただきたい逸品です!
左上:「厳選ホルモン辛味噌焼き」
右上:「レバーレアー串焼き」
左下:「新鮮!コブクロ刺」
右下:「濃厚!牛もつ煮込み」

「100年続く店を作る」ために

開業して今ちょうど2年。現状いかがですか?

ランチはやめましたけど、売上が前年比10%ぐらいは上がってます。そういう意味では悪くないですし、利益もあげやすいし、時間の余裕もできました。

うちは、ランチから夜に来てくれたお客さんも多かったんで、その点は惜しいんですけど。今は若干客層が狭まっている感じ。でも、お客さんの紹介が多いので助かってます。

売上高ってすごく大事で、お客さんが来てくれる証拠であり、基(もと)なので。同じく、その内容っていうのも大事で次に繋げられるかなんです。売上が上がって、皆のスキルが上がって次(の出店)に繋がるかというと、今社員がいないんで難しいんです。バイトさんで回しているので、そういう意味では内容があまり良くない。売上があがっても人材が育たないまま、という課題はまだあります。

人材が課題ということですね?

商売っていうのは、お金を生む作業なんですけど、絶対に目的があるはずです。自分は「100年続く店を作る」こと、これがそもそもの目標なんです。その目標に対しての人材が育ってないのは問題だと思います。長く続ける商売をやりたいので、人が本当に。

飲食の良いところは、色んな業態があって自由なところだと思うんです。でも、今の飲食は寿命が短い流行のなかで皆やってるじゃないですか。そうではなくて、和食、そば、天ぷらとか、波はあっても昔からずっとありますよね。そういうのをやりたいんです。

目標の100分の2はもう達成できてるんです。老舗と呼ばれる店も絶対どこかしらで変化はし続けていて、でもブレない芯があってやってきてるわけじゃないですか。そこを目指してやっているのに、人が育っていないから問題なんです。

単価を7,8千円ぐらいの新たな店を出しても良いかなと思います。今の単価(約3千円)ではずっと忙しくしてないとダメなんです。店はオープンしてから絶対売上にヤマが出来ていつかは落ちてきますよね。その落ちた時にこの単価でどうやっていけるのか、というのは考えます。

加藤さんの写真を撮らせて下さい、とお願いしたところ快諾。「アレ風にしよう」とご提案いただき、本物のレモンを用意してくださいました。加藤さんの明るい人柄にひかれて来店するお客さんも多数。
後ろのメニュー文字は加藤さんの自筆。店内には多数のメニューが貼ってあります。

これから開業する方へ向けてアドバイス

これから開業する方へアドバイスをいただけますか?

人の話を聞く余裕がある方が成功するとは思うんですけど、最後は自分が思ったことを全力でやるしかないんです。

人の話を聞くのも大事ですが、アドバイスを選ぶっていうのも大事ですよね。全部聞いてると主観がなくなってブレちゃいますから。人の意見ばかり聞く人って点数でいうと60点くらいになっちゃうんです。そこそこいい止まりで、突き抜けられない。でも、個人経営ってそうじゃないでしょ。

皆成功しようと思ってやっているわけですから。そこそこで良いというので始めるのであれば、はじめからやめれば、と。

加藤さん自身、覚悟を決めてやっている部分がありますよね

大事なことがあって。
ここまでやってる奴いないじゃないですか。すごく目立つんです。

それで来てくれるお客さんもいて。キャッチとか出てると周りのお店が話しかけてくるんです。「すごいよね」とか「いつ寝てるの?」とか。そこで「気合い入ってるね」となると「今度行くね」みたいな。そこから広がる話は早いです。

最初に来てもらう理由は何でも良い。同業呼ぼうと思ったら「こんなにやってるんだ」っていうのを示せば、それだけで人は来ます。自分が多額の借金背負って勝負かけてるんだから、多少の犠牲は必要かと思いますけど。

お店って始めると辞められないはずなんです。投資もそうですけど、お客さんがいるんですから。上手くいかなくても、どんだけ諦め悪いかなんだと思うんです。どれだけ可能性を探ってやり続けられるか。だから中途半端にやるならやめた方が良い。

加藤さんが1番しんどかった時期はどう乗り越えられましたか?

辛かったのはオープンから3か月経った9月です。オープンしてからすぐは「とにかく1度来てもらおう」と、終日生ビールとハイボール280円でやってたんです。それでそこそこ売ってたんですが、止めたらびっくりするぐらい売上落ちて

本当に、平日でランチ入れて売上4万とか。キャンペーンをもう1度やろうか迷ったんですが、我慢かな、と。キャッチは出していたので、交渉して引っ張ってくるならいいかな、ぐらいに考えていました。でもお客さんひけなくて、人は抱えているし、食材も回転しないし、最悪。
ほんと悪循環でした。

その9月が1番辛かったです。朝4時までは何が何でも開けると決めてたんですが、2時から4時までノーゲス(※ノーゲスト:お客様が入っていない状態)で過ごしたり、暇だから仕込みもなくて。眠いし、閉めちゃおうと思いましたけど、閉めずにやりきりました。

その後は徐々にお客さんがついて、今だいぶ落ち着きましたけどね。
ちょっと厳しいこと言いましたが、「独立したら楽しいですよ!」これは本当です。

1度、「ももんじ屋神田本店」でこだわりの炭火串焼きを食べてみてください。
忙しい時でなければ、開業のお話もオッケーとのことなので、直接聞くことで新たなヒントがあるかもしれません。

「エゾ鹿の串焼き」食べにきてください

最後に、「ももんじ屋」に来たら、コレ!というメニューを教えてください

エゾ鹿の串焼き。

「ももんじや」っていうのが東京近郊で獣肉を扱ってる人のことを言うんです。
漢字で書くと「百獣屋」。
日本人は昔からジビエと呼ばれる、鹿・熊・猪を食べてきてるんです。
そういう文化、そもそもの肉食の文化を形にしているというか。
うちがお願いしている仕入れ先は、鹿と熊の猟師さんが腕利きで処理の上手さも抜群なんです。

ぜひ食べてみてください!

インタビュー店舗 「ももんじ屋」

開業情報
物件取得 260万円
居抜き譲渡代 180万円
内装工事 400万円
厨房機器 150万円
備品 40万円
初期販促 20万円
坪数 13坪 (1・2階合計)
席数 31席
・カウンター 7席
・テーブル席 8席
・外立飲み席2席
売上 約400万円(インタビュー当時)
店舗情報
オープン日 2012年6月1日
住所 〒101-0044
東京都千代田区鍛冶町1丁目 2-13
JR山手線「神田駅南口」出てすぐ駅高架下
電話 03-6206-9986
営業時間 [月〜金]
夜 / 17:00〜翌5:00
[土曜・祝日]
夜/17:00〜24:00
夜10時以降入店可、夜12時以降入店可、始発まで営業

[定休日]
日曜 連休時は日曜営業、翌日休み

食べログ
年間300件超、累計6500件以上の飲食店開業をサポートしてきた株式会社M&Aオークションの専門家集団。個人店から大手チェーンまでさまざまな業態・立地の飲食店の開業コンサルティングを行ってきたノウハウをブログで発信します。
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