広島お好み焼きOCOの仲井オーナー

素人でも開業の戦略しだいで、プロの飲食店に勝つことも決して不可能ではありません。

 

確かに飲食店で独立開業する方は10〜20年の経験を積んだ「飲食のプロ」も多く、

一方、異業種からの飲食業界経験のない脱サラオーナーは、いわば「素人」

 

ビジネスでもスポーツでも、何の準備も戦略もなしに素人がプロに勝てるほど甘い世界ではありません。

脱サラ・未経験者による飲食店は、3年以内に90%が閉店し、生き残れるのは10%のお店だけと言われています。

 

ですが脱サラオーナーには業界未経験ならではの戦い方があり、失敗率も大幅に下げることができます。

それどころか、業界のプロ以上の繁盛店を作る人も多くいらっしゃいます。

 

そこで今回は、脱サラオーナーならではの「賢い戦略」を実践するお店をご紹介。

「異業種からの脱サラオーナー」の飲食店開業でも業界のプロに勝てる4つの戦略を、

広島お好み焼き「OCO」の仲井オーナー様の実例で解説します。

飲食未経験の脱サラ開業が、成功しにくいと言われる理由

独立開業に失敗し、悔しがる店舗オーナー

なぜ未経験では失敗リスクが高いと言われるのでしょうか。

主に、2つの要因があります。

①料理・サービスのクオリティーが低い

当たり前ですが、やはり技術において経験の差はあります。

 

全てのお店がそうではありませんが飲食業界で長年働いてきた方に比べると、料理もサービスも少し見劣りすることも。

 

それではリピーターを獲得できず、なかなか軌道に乗せられず、経営も安定せず。

いずれ閉店せざるをえない状況になるかもしれません。

②ハードワークにオーナー様が耐えられない

こんなはずじゃなかった。サラリーマンの方がよかった

 

人によるとはいえ、脱サラ開業オーナー様の正直な感想かもしれません。

肉体的・精神的にかかる負荷は、人によっては想像以上。

 

ではデスクワークなどの仕事と違って、飲食店を運営するときにどのような負担がかかるのでしょうか。

事前に知っておくことが大切です。

飲食店経営者にかかる負荷:①肉体面

・労働時間が長く、休息がとりずらい

・そのうえ、立ち仕事が大半を占める

 

飲食店経営者は起きてから寝るまで、どのような生活をしているのでしょうか?

スケジュール例を2パターンご紹介します。(あくまで一例です)

例1)ランチ・ディナー営業のお店

 

昼と夜営業した場合の生活スケジュール

 

例2)深夜営業のお店

深夜営業した場合の生活スケジュール

運営に慣れるまで、もしくは自分以外の人が育つまでは休日も取りにくく、多忙で体力が必要な商売だと肝に銘じておく必要があります。

飲食店経営者にかかる負荷:②精神面

・お客様への気遣いはもちろん、スタッフにも気を配らなければいけない

・オープン直後は赤字が続くケースもあり、目減りする運転資金に追い詰められる

運営戦略を決めなければならず、「ミスをすると閉店」というプレッシャー

 

などなど怖いことばかりを先に述べさせて頂きましたが、もちろん飲食店開業はマイナス面だけではありません。

 

自分の好きな内装や雰囲気の中で好きなBGMを流し、目の前のお客様と交流し、他の誰でもない自ら作ったものを直接提供する。

「また来ます!」「美味しかった!」「良い店だね!」

など、目の前で商売の手応えを感じられるのは、飲食店経営の醍醐味と言えます。

 

ではどうやって、脱サラ異業種オーナー特有の弱みを強みに変え、失敗率を下げ、

業界のプロにも勝てるお店にしていけば良いのでしょうか。

【実例】IT業界から飲食へ!脱サラオーナーの戦略

お好み焼きOCO

飲食店激戦区である赤坂に新オープンした「広島お好み焼き OCO(オコ)」

オーナーの仲井様は、IT業界から飲食へ飛び込んだ脱サラ組です。

さっそく、仲井様が実践した「脱サラ開業でプロに勝つための4つの戦略」を見ていきましょう。

【賢い戦略その1】一点集中

お好み焼き

居酒屋や定食屋など多品種業態でなく、品で勝負

 

専門店にすることにより、素人でも短期間で味のクオリティや調理技術を高めることができます。

 

OCO(オコ)の仲井オーナーは、本場広島の有名店で短期集中の武者修行を敢行!

朝から晩まで、イヤというほど”広島お好み焼き”を作りまくったそうです。

【賢い戦略その2】ライバルとは同じ土俵(競争が激しい場所)で戦わない

OCO店内

仲居様の非常にクレバーなところは「店を出すなら◯◯駅」と決め打ちで出店物件を探していたのではなかったこと。

 

飲食店が多い赤坂ですが、実はお好み焼き店はあまり多くなかったのです。

しかも、本格的な広島お好み焼きをカウンターで提供するお店はココだけ

 

赤坂エリアでカウンタースタイルの広島お好み焼きを楽しみたい人は、ココに来るしかありません。

同業種が多く供給過多な場所にお店を出すのでなく、需要と供給のバランスが崩れているところを狙ったのです。

 

このパターンと逆のケースを考えてみて下さい。脱サラ素人が、

「もんじゃ激戦区の月島でもんじゃ店を出す。」

「ラーメン激戦区の池袋でラーメン店を出す。」

「串カツ激戦区の大阪新世界で串カツ屋を出す。」

そのいずれも厳しい戦いになることが想像できるのではないでしょうか。

【賢い戦略その3】異なる戦術・武器(異業種の強み)を使う

OCOオープン

飲食店でのキャリアはありませんが、仲居オーナーには異業種で培ったキャリア・経験・人脈がありました。

 

・語学力(英語ペラペラ!)で、海外のお客様を積極的に受け入れられること。

・IT業界の幅広い人脈を活かし、SNSで口コミを広げられること。

 

ご自身の今までの強みをしっかり「武器」として使いこなしています。

【賢い戦略その4】長期戦・持久戦に持ち込む

開業当初は飲食未経験でもオープン後は、オーナー兼店長として毎日経験を積むことになります。

「雇われで働くより、遥かに濃い実務経験」を積むことになりますので、数ヶ月もすればもはや「素人」ではありません。

 

そうなれば戦略その3にあるような「異業種の強み」を発揮することはもちろん、

半年~1年も経てば、調理技術も「プロ」に負けない部分をつくることも。(※もちろん提供する料理にもよります。)

 

ですから、長期戦・持久戦に持ち込めば、業界経験者とも十分に渡り合える状態までもっていくことは十分可能です

 

しかしそのために必要なのは、『お金』。

開業してしばらくの期間の運転資金は、十分に確保しておくべきです。

 

できれば、固定費で12ヶ月分の資金を用意しておくことが理想。

一般的に飲食店の開業では6ヶ月分を目安に準備しますが、未経験の脱サラ開業者の方であればその倍額を確保しておきましょう。

(※固定費:売上に関係なく、毎月必要なコスト。物件の賃料など)

 

未経験の方が、オープン直後からスムーズに軌道にのせられるとは限りません。

資金面では徹底的に安全策をとるべきです。

 

もし運転資金が十分でなければ、以下のような手段もあります。

・賃料を見直し、固定費を抑えられる別の候補物件を探す

・日本政策金融公庫より新創業融資を受ける

 

運転資金さえ尽きなければ、赤字でも閉店はしないことは覚えておきましょう。

運転資金についてもう少し知りたい方は、下の記事もご覧ください。

(参考リンク)飲食店の閉店は、よく赤字が原因だと「勘違い」されている。

 

仲井オーナーが実践した「失敗しないための4つの戦略」はいかがでしたか?

成功への道は必ずしも1つではなく、「これが正解」という答えが明確にあるわけではありません。

 

・どうすれば自分の「強み」を活かせるのか。

・飲食経験者に負けない店をつくるにはどうすべきか。

ご自身の異業種での経験からも、じっくり考えていきましょう。

 

最後に、未経験から飲食店開業にあたって【共通して絶対にはずせない】対策がありますので2つご紹介します。

脱サラ対策1:短期間でも、飲食店で経験をつむ

料理人

経験不足をカバーするには、実際に働いてみるのが1番です。

ここで積むべき経験は主に2つであり、「小規模店とチェーン店の両方」で働いてみることをオススメします。

①料理を覚える

飲食店の最低条件は、美味しい料理を作れること。お客様に出せるプロレベルのものをマスターしましょう。

とはいえ多くの料理を学ぶ必要はなく、自店で使うジャンルに絞って学びます

 

調理技術の習得のために働く場合は、小規模店舗がオススメ。

大手のチェーン店では調理済みのものが配送され、厨房では加熱して出すだけということも。

揚げる・焼くなどの調理の最終工程だけでなく、下ごしらえなど様々な作業を自店で行っている店を選ぶことで技術を身に付けます。

②店舗運営について学ぶ

店舗運営

衛生管理や数値管理、アルバイト管理などについても知っておきましょう。

店舗を運営していくうえで必要なのは、料理や接客だけではありません。

 

・衛生面について知らなければ、食中毒でお客様が苦しむことに。

・数値管理ができなければ、原材料費・人件費と利益が釣り合わず赤字に。

・アルバイトの管理ができなければ、採用する・辞めるの繰り返しに。

 

大手チェーン店では、店舗運営を高いレベルで行っているケースが多いです。

仕組み化できたからこそ、チェーン化できたのですから当たり前ですよね。

その内部の運営や仕組みを見ることは大きな武器になります。

 

最後に、「これが事前に経験できれば最高!」ということがあります。

なかなか難しいかもしれませんが、この機会には迷わず飛び込むべきです。

それは、「店舗の新規オープン」に携わること。

③店舗の新規オープンと通常の運営は全く違う

立ち上げ業務と通常の店舗運営は、全くの別モノ。

必要とされる知識・経験が違います。

有名店で修業してきた開業者でもなかなか経験しておらず、逆にそこを体験しておくと大きな強みに。

 

バイトでも社員でもオープンに携わった経験があれば、自分の店の開業後でも慌てずに計画的に軌道に乗せやすくなります。

なぜなら落ち着いて、道に乗せる「道筋」を考えられるようになるから。

以下のような思考をできるかどうかで、大きな差が生まれます。


① 採算(黒字)がとれる、平均月間客数の設定

② 目標客数①をクリアする時期の設定(季節変動を考慮)

③ ②の時期を考慮して、そこに至るまでの月次目標設定

④ ③をリピート客と新規客にわけ、全体の来店客数を設定

⑤ 月次の新規客目標をクリアするための集客施策を立案

 

店舗を軌道にのせられるかは、集客施策をどれほど具体的に考えられるかが重要です。

 

例えば、

・知り合いで何人見込めるか?

・どのようなチラシを何枚撒けば反響が何件あるか?

・周辺に宴会などの営業提案ができる法人が何社あり、そこから何人見込めるか?

・どのグルメサイトのどのプランを使えば何件予約が入るか?

・上記の集客施策を実行する適切なタイミングは?

 

こういった経験が一度でもあれば、落ち着いて考えることができます。

 

飲食業界で働いていても、集客策の具体的な立案経験を持つ方は多くありません。

修行先を探すときに新規オープンの店を見つけることができれば、それは最高の出会いかもしれません。

 

地域の求人誌で新規オープンの店を探す、もしくはタウンワーク・ジョブセンス・アン・バイトル・フロム・エーなどの求人サイトの条件検索で「オープニングスタッフ」や「新規オープンの店」などを探すと良いでしょう。

対策2:グランドオープンの前に、プレオープン期間を長めにとる

飲食店オープン

いち早くオープンしたい」というオーナー様のお気持ち、よ〜〜くわかります。

 

お店を借りれば、賃料が発生。バイトを雇えば、その人件費も。

1日でも早くオープンして、売上をつくっていきたいですよね。

 

しかし、ちょっと待ってください。

 

オープン当初は、経験の少なさがもっとも影響するタイミング

長めのプレオープン期間をとっておき、リスクを徹底的に抑えるべきです。

 

プレオープン期間を長くとるメリットは2つあります。

①お客様の理解を得た環境で、練習・ブラッシュアップができる

店を完全にオープンしてしまえば、プロとして言い訳はできません。

プレオープン期間は、多少のミスや至らないところがあってもお客様の理解が得られる最後のタイミングです

 

「味の感想」や「運営における改善点」など、お客様の意見を全てそのまま取り入れる必要はありませんが、改善すべきところはキッチリ改善しましょう。

 

「料理提供に時間がかかりすぎる」「スタッフの採用が終わっていない」など、どんなに準備しても「必ず想定外のことは起きる」とお考え下さい。

 

また、プレオープンなら、メニューや営業時間を絞って営業することもできます。

問題を発見し、日々改善を行う期間に充てられます。

グランドオープンまでに、お客様に満足いただける店をつくっていきましょう。

②オープン販促の効果を最大限に発揮できる

オープンは、販促の効果がもっとも見込めるタイミング

 

しかし、使い方を間違えると諸刃の剣であることも知っておくべきです。

オープン当初は、スタッフも不慣れでオペレーションも回らないかもしれません。

 

皆さんもお客として行ったオープンしたての店で、

「いつまで経っても料理が出てこない」

「注文したものと違うものが来た」

「会計が間違ってる」

ここには二度といかないな…と感じたことはありませんか?

 

・将来のリピーター候補を潰してしまう

・悪い口コミにより、今後の集客効率が悪化

 

そんなことは絶対に起こしてはいけません。

いきなり大勢のお客様対応は簡単ではないからこそ必要な、プレオープン期間。

 

プレオープンでサービスの質を高め、グランドオープンを万全の状態で迎えます。

販促はグランドオープンにあわせて行うことで、最大の効果が発揮できます。

 

お客様が満足する対応できるという安心感があれば、販促も全力で行えます。

効果が出やすいタイミングをしっかりものにし、リピーターを積み上げて早期に立ち上げを行いましょう。

 

ちなみに「広島お好み焼きOCO」は大々的に告知せずサイレントオープンするやり方を選びました。

OCO仲井オーナー

すべての商品を自信を持って提供できる環境が整うまで、メニューを絞って営業しようと考えています。接客も含め、来ていただいたお客様に満足のいくサービスが提供できるまではサイレントオープンという形で、ひとりひとりお客様の声を丁寧に聞きながらサービス品質を改善していくつもりです。

味やサービス品質に対する、仲井オーナーの「こだわり」が伝わってきますね!

※メニューを絞った営業は2016年の2月まで、現在OCOではフルラインナップで楽しめます。

未経験の脱サラオーナーだからこそ

OCO仲井オーナーと大森

せっかく脱サラで開業で自分の城を持つなら、激動の時代を勝ち抜いていく”強いお店”をつくるべき。

 

そのためには戦略を幾重にも張り巡らし、日々変化する戦況に合わせ、柔軟に対応していかねばなりません。

未経験だからこそ、開業前にできるだけ多く「策」を用意しておきましょう。

 

飲食店において素人がプロに勝てる可能性は十分ありますし、さらにこうも言えます。

脱サラ未経験の独立開業オーナーだからこそ、外食業界の固定概念を崩すような、画期的なお店を作れる可能性もある、と。

 

■店舗情報

店名:広島お好み焼き OCO (オコ)【閉店】

住所 :東京都港区赤坂3-6-18 ニューロイヤルビル B1F

(赤坂駅/赤坂見附駅  各徒歩5分)

営業:[月~金]
11:00~14:00/18:00~23:00(L.O. 22:00)

電話:03-6441-0468

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