移転で業態変更。「エスニック料理」で再スタート
5年間営業してきた焼肉店を閉め、場所だけでなく業態も変更!
タイ料理「パクチリ」で新たなスタートを切った上野オーナー。
店舗移転に加え業態転換という大仕事をやりきり、お顔に情熱と充実感が溢れてます!
しかし一歩間違えれば、この晴れやかな顔はできなかったかもしれません。
なぜなら店舗移転は大きなコストがかかる分、実行すべきことやその手順を一つ誤るとリスクが大きいからです。
・収入が0になることも。移転の危険性とは?
・お金の準備はどれぐらい必要?
・閉店時にかかる解体工事費は1坪10万円!?コスト削減の方法
通常、店舗移転を行う理由はどんなものがあるのでしょうか。
ビルの立て直しによる立ち退き、今の業態により合ったスペック・立地の物件で再スタート。およそこのような理由が大半を締めます。
今回は場所の移転と併せて業態転換も成功させた「パクチリ」の経緯も解説しながら、飲食店の移転について詳しくご説明します!
収入が0になることも。移転の危険性とは?
当たり前ですが、移転には2つの工程があります。
・現在の店舗の閉店(売却)
・移転先の物件を見つけて開業
出店か閉店かどちらかひとつでも大変なのに、両方を時期をずらさず同時に行う。その難しさは容易に想像できますよね。
片方が順調に進まなかった場合を考えると、更によく分かります。
(ケース:1)移転先は見つかったが、既存店の売却先が見つからない。
現在の店舗も解約届けを出してもすぐに撤退できるわけではありません。
賃貸契約の内容にもよりますが、解約を出してから実際の解約まで(一般的には3〜6ヶ月間)は賃料を払い続ける必要があります。
空家賃を払う期間が長くなってしまい、次の出店資金を食いつぶしては意味がありません。
そもそもせっかく見つけた物件も資金の目処がたたなければ、ライバル(他の出店者)にとられてしまいます。
(ケース:2)閉店期日なのに、次の移転先となる物件が見つからない。
移転先が見つからなくても、引き渡し日の変更はできません。
閉店を余儀なくされ、収入が途絶えてしまうことに。雇用しているスタッフの行き場(次の職場)も考える必要があります。
閉店と出店は必ず同時進行で進めていきましょう。
加えて、見落としが甘いと痛い目にあってしまうのが「移転コスト」。いくら必要となるのか、しっかりと確認が必要です。
店舗移転に必要な2つの費用とその目安額
現在の店舗の閉店費用と移転先の開業資金、この2つの費用がかかります。
(1)現在の店舗の閉店費用は?
通常、お店を閉める場合にはスケルトン戻し(内装や設備をすべて撤去し、何もない状態に戻す)のが原則。
その店舗の解体工事には1坪あたり5〜10万円のコストがかかります。
店舗の階数や基礎設備などの諸条件にもよりますが、20坪のお店なら100万〜200万の工事費がかかるということですね。
ただし閉店は支出だけではありません。
店舗解約から少々時間はかかりますが、預けていた保証金が返ってきます。
賃貸借契約で指定されている時期(3~6ヶ月後)までは返金されません。
償却分を除き、必ず戻ってくるお金なので、次店舗の運転資金に組み込むことができます。
(2)移転先での開業に必要な資金は?
大きく分類すると4つの費用がかかります。ご自身の店舗規模に合わせて考えてみてください。
①物件取得費
賃料の9~12ヶ月分、居抜きの場合は造作代金 50~300万円
②内装工事・設備
スケルトン:50~80万円/坪、居抜き活用:5~50万円/坪
③開業諸経費
初期仕入:想定売上の30~40%、その他経費:50~200万円
④運転資金
月間固定費の6か月分
閉店コストは「居抜き売却」で削減(相殺)できる
閉店コストをできるだけ減らすための一番良い策は、そのまま店舗を居抜き売却することです。
売却できれば原状復帰の工事費用は不要なうえ、「造作譲渡代金」(引き継ぎ先が設備を買取る代金)を移転先の物件取得費に充てることも。
ただし問題は、「閉店時期」のコントロールが難しいこと。
通常の解約は指定した月に手順に沿って手続きをするだけですが、居抜き売却はどうしても次の買い手があっての話。
「誰がいつ買ってくれるか?」「本当にこの店舗に手が挙がるか?」「どのくらいのスピードで成約まで進むのか?」これは募集してみないとわかりません。
居抜きで売却する場合は、引き継ぎ先を募集するための余裕を持ったスケジュールが必要です。
居抜き物件やその売買を扱う不動産会社へは早めに、査定及び売却先の募集を依頼し、スケジュール感を早めに確認しておきましょう。
行政関連の手続きを、漏れなく行う
店舗移転では、既存店舗の営業と同時に移転先の準備などもあるためやることが山積みになりがち。
その忙しい最中でも、行政関連の手続きは漏れなく進めないといけません。
「どこに」「何を」届け出る必要があるのか把握し、各所に相談。スムーズに進めていきましょう。
届け出先を以下にまとめたので、ご確認ください。
①保健所
開業する際、営業許可を受けた保健所へご相談ください。
開業時に警察で「深夜における酒類提供飲食店営業開始届出」をしている場合は、あわせて警察へもご相談ください。
②税務署
管轄区域が決まっています。
閉店する店舗、移転先を所轄する税務署へそれぞれ行く必要があります。
まずは既存の店舗の税務署へご相談ください。
③労働基準監督署
「労働保険確定保険料申告書」を移転先に提出します。
社会保険労務士による代行も可能です。
④社会保険事務所
閉店する店舗を管轄している事務所へ、所在地の変更を届け出ます。
《従業員がいる場合》
➄ハローワーク
雇用保険をかけている場合、事業所の変更届が必要です。
お客様に移転をお知らせする
せっかく今までご贔屓にしてくれているお客様。移転でなくしてしまうのはもったいない!
「移転のお知らせ」をしっかり準備し、移転先のお店にも足を運んでもらいましょう。
では、一体何を伝えるべきでしょうか?
おさえるポイントは4つあります。
①今までのお礼
②閉店・移転の日付
③移転先の住所・地図
④店名、営業時間、連絡先、SNS、ホームページの情報
イメージとしてはこのようなものでしょうか。
最低でも3カ所でお客様へお知らせしましょう!
・店舗への貼り紙(手書きだとなお良し)
・SNS、ホームページで告知
・次店舗のチラシや名刺を直接渡す
より強く誘導したい場合はクーポンも有効な手段です。
有効期限を設定し、移転のご案内とあわせてお渡ししましょう。
今まで営業してきた何よりの財産はお客様です。新規の顧客を獲得するには、リピーター獲得に比べ約5倍のコストがかかります。
このように数字上のメリットは大きいことは間違いありませんが、それ以前に常連様にまた通って頂けるのは何よりの喜びですよね。移転によりご不便をおかけすることにはなりますが、引き続き通っていただけるよう必ずお伝えするべきです。
【実例】店舗を移転し、再チャレンジ中のお店
焼肉店のオーナーとして5年ほど堅実に経営を続けてきましたが、経営環境が変化。
仕入価格の高騰や他店との競争激化など、収支のバランスが悪くなってきたのがきっかけでした。
かねてより持っていた、「最も得意なエスニック料理で勝負したい」という想い。
業態転換し「エスニック料理」で再スタートを切ることを具体的に考え始めた折、弊社にご相談いただきました。
もちろんまず最初に考えたのは、できるだけコストをかけずに今のお店の改装だけで再オープンさせること。
しかし、同じ場所では下記のような問題点があったのです。
・自宅から少し離れているため、通勤が負担に。
・エスニック料理店の場合、焼肉屋の設備が不要。
・席数が多すぎる、箱が大きいため家賃を下げたい。
コストや使い勝手や、新しい店のコンセプト。色々悩んだ末に、新たに物件を取得することに。
カウンターのみの物件を見つけ、移転を決定!
今回は、移転先の物件が見つかった時点で、既存店(の内装・設備)を一旦当社にて買い取らせて頂きました。
設備を売却できたことにより、出店資金に余裕が。
上野オーナーは閉店直後からスムーズに次の開業準備に取り掛かれ、わずか約2ヶ月で新たなスタートを切ることができました。
新しいお店は、まだまだ立ち上げ途中。それでもご自身が「元々やりたかったこと」に全力でチャレンジされている上野様の笑顔には、溢れんばかりの情熱と充実感が滲み出ていました。
みんなの飲食店開業では、これからも飲食店の新規開業・再チャレンジを全力で応援していきます。
■店舗情報
店名:パクチリ
住所:神奈川県川崎市幸区下平間213-9 林ビル 1F
アクセス:JR鹿島田駅から徒歩7~8分、JR新川崎駅から徒歩10~12分
営業時間:11:00~15:00 / 17:00~23:00
定休日:火曜日
TEL:044-589-6376
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1975年生まれ。東京都出身。
東証一部上場のコンサルティング会社にて、数百店舗の飲食店チェーンの立地診断・出店判断を担当。また、大手チェーンのM&A業務に関わるなど、多岐に渡る豊富な経験を持つ。
実務経験15年、1000店舗以上の支援実績を誇る立地戦略・物件開発のスペシャリスト。長年の現場経験に基づいた的確なアドバイスは、個人からチェーン企業に至るまで、多くのクライアントから絶大な信頼を集めている。