ひとり客、カップル客、ファミリー客、宴会客など、店内は様々な属性のお客さんで賑わい、オープンから2ヶ月で早くも繁盛店の片鱗を見せる『もつ鍋 無二彩』。
学校卒業後にミュージシャン5年→漫画家5年→飲食店5年と、ユニークな人生経験をお持ちな『もつ鍋 無二彩』オーナーの高濱さん。
順調な立ち上げの秘訣をお伺いすると、
「たまたま運が良かったんじゃないですかね?(笑)」
と高濱さんは笑って答える。
いやいやいや。
「たまたま」や「運が良い」だけで成功するほど、飲食店経営は甘くありません。
そこで年間100超の出店支援を行っているわたし大森の視点で、『もつ鍋 無二彩』の成功要因をわかりやすく紐解いていきます。
コンセプトの作り方、予算・立地・店舗デザインの考え方、店舗の立ち上げ方、どれをとっても参考になるものばかり。
開業する方の一助となるよう、この「みんなの飲食店開業」に記事としてまとめました。
特に「自分の弱みを正しく知ってカバーする方法」は、これから独立開業される方や脱サラを考えている方にとって必読の内容。
『もつ鍋 無二彩』のスムーズな立ち上がりには、4つの成功ポイントと飲食店開業の王道ともいえる道筋があったのです。
<成功のポイント①>
経験を最大限に活かせる業種・業態で開業する。
<成功のポイント②>
「弱み」を正しく知り、それをカバーする方法を考える。
<成功のポイント③>
お客様や利用シーンをできる限り鮮明に想像する。
<成功のポイント④>
まだ一度も来店したことのないお客様に魅力を伝える
これら4つの成功ポイントを具体的に解説していきます。
懐の深さが『もつ鍋 無二彩』の魅力
2018年10月1日に西武新宿線・鷺宮駅近くに新しくオープンした『もつ鍋 無二彩』。
一般的な「もつ鍋居酒屋」のイメージとは一線を画し、デートや女子会にも適したシャレた雰囲気のお店です。
老若男女誰でも、どんな利用シーンでも、受け入れてくれる懐の深さと居心地の良さが『もつ鍋 無二彩』最大の魅力。
ドリンクは豊富に取り揃えられ、ひとりひとりの好みに合ったお酒が選べます。
あらゆるニーズに対応できる構成で、華やかなカクテル類からこだわり焼酎まで多種多様。
「もつ鍋居酒屋」というと、おひとり様利用のイメージがないかもしれません。
しかし『もつ鍋 無二彩』は1人前から頼める絶品もつ鍋が3種類。
ひとりでも利用しやすい適度な間隔のカウンター席も用意されています。
『もつ鍋 無二彩』最大の魅力を繰り返しましょう。
【どのようなニーズでも、居心地よく過ごせる】
仕事帰りの一人飲みからデートや大人数の宴会でも、いつでも優しく迎えてくれます。
つい、リピートしたくなる。
思わず、誰かを連れて行きたくなる。
そんな「雰囲気の良さ」がネットや口コミで伝わり、オープン直後から地元のお客様が続々と来店しています。
来てみた。 (@ もつ鍋 無二彩 in 中野区, 東京都) https://t.co/o2uT7VlXJg pic.twitter.com/XFpNJePyYt
— タカ (@saginomiyaro) 2018年10月4日
ここ美味いらしい。行きたいメモ→鷺ノ宮にある居酒屋のもつ鍋無二彩はもつ鍋を提供しています https://t.co/5dqnABF3cZ
— イシダアキユキ (@ishi912) 2018年11月6日
@pirai1417 さんに教えていただいた
鷺ノ宮のもつ鍋 無二彩
美味しかったです!!#メシテロ#メシテロセカイ#飯テロ#深夜の飯テロ#キリトリセカイ#ファインダー越しの私の世界 #写真で伝えたい私の世界 #写真で奏でる私の世界 #写真好きな人と繋がりたい #写真撮ってる人と繋がりたい pic.twitter.com/vYNNY79wGl
— M.T.(Shacebron) (@Mvat127M) 2019年1月27日
『もつ鍋 無二彩』4つの成功要因
オーナーの髙濱さんが、数多ある業種業態の中から「もつ鍋屋」での開業に踏み切った理由はなんだったのでしょうか。
ある意味、とてもシンプル。
髙濱さんが選んだ理由・・・それは、「もつ鍋屋」で働いてきたから。
とは言え前述のように、高濱さんは少しユニークなキャリアの持ち主。
学校卒業後、ミュージシャン5年→漫画家5年→飲食店5年となかなかドラスティックな人生を歩まれています。
第3のキャリアとして選んだ「飲食業」。
そのほとんどを「もつ鍋居酒屋」のチェーン店で過ごしました。
約5年間勤めたもつ鍋居酒屋は、一般職からスタートして最終的に店長に。
「もつ鍋」について知り尽くしている高濱さん。
仕入れ・仕込み・調理・サービス・オペレーションなどの実務から、業態としての「強み」「弱み」も全て把握済み。
むしろ実務オペレーションより、商売の結果に影響が大きい経営としての知識の方が重要です。
そんな髙濱さんが「自分の経験を最も活かせる業態」=「もつ鍋居酒屋」で開業したのは、とても自然な流れですよね。
商売の成功確率を上げる上で、正しい選択であったと思います。
では、髙濱さんの成功のポイントを紐解いていきましょう。
成功のポイント① 自分の経験を最大限に活かせる業態
飲食店経営の最大の成功ポイントは、自分の経験を最大限に活かせる業種・業態で開業する。
前述と重複しますが、最重要なので伝えさせてください。
え? 経験を活かすのは、当たり前でしょ?
そう思うかも知れません。
しかし、独立開業される方の中には『まったく経験したこともない業種業態』を選ぶ方も少なからずいらっしゃるのです。
「今、流行っているから」
「なんとなく儲かりそうだから」
「お洒落でカッコイイから」という理由だけで。
開業後に一番閉店しやすいのがこの「未経験からの開業」。
異業種(脱サラ等)から飲食未経験で独立開業というパターンはリスクが高い、というお話は常々お伝えしている通り。
同じ飲食店でも、料理メニュー・客単価・客層・ホールなどのオペレーションが別ものであれば未経験も同然。
たとえば、カフェと居酒屋、バーと焼鳥店、イタリアンと割烹料理店など。
「カフェで5年の経験を積んだ人が焼肉屋で成功できるか?」と聞かれれば「そうは思えない」と答える方がほとんどのはず。
現実では、「飲食業界に5年もいたら大丈夫」と思い込んだかのようなチグハグな開業をする方が少なくありません。
カフェで経験を積んだのであれば、経験を活かせるカフェ開業を。
居酒屋で経験を積んだのではあれば、居酒屋開業をおすすめします。
他業態にチャレンジするより、よほど成功確率が高いからです。
もし、どうしても居酒屋で開業したいのであれば、居酒屋での実地経験を積んでから開業しても遅くはありません。
『もつ鍋 無二彩』高濱さんとは別の方ですが、広告代理店から脱サラで開業したオーナー様もいらっしゃいます。
元々は大手広告会社のキャリアウーマンで約20年ガムシャラに働き、第2のキャリアとして飲食店開業を選んだ松本さんです。
有名和食レストランで5年実務の経験を積んだうえ、今までのサラリーマンとしてのキャリアも最大限に活かして開業しました。
やはりここでも調理などの実務オペレーションではなく、店舗経営の知識や工夫こそが重要であることが描かれています。
松本さんが辿った準備〜開業までの道筋は「みんなの飲食店開業」の別記事で紹介しています。
参考記事:広告代理店キャリアウーマンが和食店で起業!そのしなやかな出店戦略を紐解く【飯場 松の葉】
「経験を活かせば、経営リスクは必ず下がる」とは限らない
経験を活かせる=商売の成功確率が高い、のではありません。
未経験の方より、「綿密に弱みを補完」「効率的に強みを強化」できるから成功率が高いのです。
「もつ鍋」業態の強みも弱みも知り尽くしている高濱さん。
業態の弱みを克服できるよう対策をたて、より確実性の高い開業計画をつくりあげました。
もつ鍋屋の弱みは、季節変動が大きいこと。
秋冬は温かい鍋ものの需要が大きくなりますが、真夏に鍋をつつこうという方は多くはありません。
「夏の対策ができるかどうか」が高濱さんのモツ鍋店の命運を握ります。
高濱さんはリスクヘッジのため、飲食店の少ない『住宅街』への出店を選びました。
『「鍋」を囲んで飲もう』となるのは冬だけで、夏はお客様の行き先候補から漏れてしまいます。
居酒屋が豊富な繁華街やオフィス街に出店してしまうと、来店チャンスが減るのは自然の流れ。
(暑いし鍋モノはちょっとな。普通の居酒屋でどこかないかな)
しかし、選択肢の少ない住宅街であればチャンスが広がります。
ちょっと飲むならココかな
選択肢が少ないぶん激しい競争にさらされることなく、広く居酒屋需要を狙えます。
『もつ鍋 無二彩』では、夏に居酒屋として使ってもらえるようメニューを充実。
鍋を頼まなくても満足いただけるラインナップを用意していたのです。
この後解説しますが、『住宅街』への出店は資金面から見てもベストチョイスでした。
成功のポイント② 弱みを知り、カバーする
さて、高濱さんの話に戻りましょう。
自分の「強み」を最も発揮できる業態として「もつ鍋居酒屋」開業を決意した髙濱さん。
しかし、ここで問題が発生します。資金力です。
髙濱さんが勤務していたもつ鍋居酒屋(チェーン店)は、どのお店も都内オフィス街の駅近立地で30~60席の比較的大箱と言われるお店。
チェーン店の勤務経験をそのまま活かすために「全く同じ店をやるなら」、同じような立地・規模の物件を借りるべきですが、個人開業者にそこまでの資金力はありません。
もし勤務していたチェーン店と同程度の物件で出店すると、初期投資コストが2000万以上かかります。自己資金1000万あっても、融資制度を活用し、追加で1000万円が必要になります。
都内の駅近30坪物件で開業するなら、1000万円必要
出店コストを試算してみましょう。
都内でオフィスが集まっているエリア、その駅近くの家賃相場は安くありません。
坪当たり家賃の目安は1階路面なら3~5万円、2階や地下でも坪2万円は下回らないでしょう。
60席を確保するなら、30坪程度の広さは必要です。
仮に坪当たり賃料が2万円だとしても、家賃は30坪×2万円で月額60万円。
30坪・家賃60万円の物件で、飲食店の初期投資概算を出してみましょう。
・スケルトンの場合:2800万円
物件取得費約800万円+工事費用2000万円(厨房機器込み)
・居抜きの場合:1500万円
物件取得費約800万円+造作譲渡代200万円+工事費用500万円
さらに上記とあわせ、開業諸経費や運転資金も開業予算としてみておきましょう。
居抜きを上手く活用し、物件取得と改装が合計1500万円で済んでも、開業諸費用や運転資金を考えると、2000万円程度の開業資金を準備しなければなりません。
仮に2000万円の半分、1000万円を日本政策金融公庫の融資で賄うにしても、1000万円の自己資金が必要。
※1000万円以上の借入も可能ですが、過剰な借入は経営リスクを高めます。当社ではオススメしていません。
限られた予算のなかで、個人開業者が勝負する方法
チェーン店と比べれば、『資金力』は独立開業者に共通した「弱み」です。
高濱さんに限らず、ほとんどの開業者の方が同じような状況。
とは言え大手チェーンに比べて、個人事業主の予算が少ないのは当たり前のこと。
限られた予算で無理のない開業を実現する方法を考えればいいのです。
まずは、自身の最大(上限)予算を知りましょう。
創業に掛けられる「上限予算」を決定することがスタートです。
上限予算が決まると、どのような物件を探せば良いかが自ずとわかります。
上限予算=現在の自己資金+融資獲得可能金額
物件取得と内装工事で使えるお金=上限予算-運転資金-諸経費
出店できる物件を資金面から考えていきます。
上限予算が決定したら、そこからまず事業用の運転資金を確保。
(運転資金の目安は、月にかかる固定費の6か月分)
次に、どの物件にも必要な諸経費を差し引きます。
開業諸経費とは、備品購入費・初期仕入れ・初期販促・許認可申請費用などのこと。
目安は、初期仕入:想定売上の30~40%、その他経費:50~200万円です。
上限予算から運転資金と開業諸経費を引いて残った金額が、物件取得と内装工事に割り当てられる予算。
この予算が分かれば、現実的に出店できる物件の経済条件がはっきりしてくるのです。
では、自己資金300万円で、どのような物件に出店できるでしょう?
《自己資金300万円のモデルケース》
まずは上限予算から確認しましょう。
上限予算は「現在の自己資金+融資獲得可能金額」。
融資については、最も利用される日本政策金融公庫の創業融資をベースに説明します。
公庫の必須条件は、飲食店の開業予算のうち1/10は最低限の自己資金。
「制度上」、開業予算が1000万円なら、100万円の自己資金を基に900万円の借り入れができます。
ただし、あくまで制度上の話。
9倍の額で融資申請しても、満額での通過はかなり厳しいのが現実。
過去に何百件と融資のサポートを行ってきましたが、必要調達金額の3分の1は自己資金で確保しておくのが無難です。
現実的なラインで考えると、自己資金300万円を基に、借入ができる額は600万円ほど。
次に自己資金と融資額を合計します。
創業に掛けられる総予算は900万円ということがわかりました。
総予算900万円から「運転資金」・「諸経費」を差し引きます。
運転資金の目安は、月にかかる固定費の6か月分。
開業諸経費の目安は、初期仕入:想定売上の30~40%、その他経費:50~200万円。
事業規模により差が出るのが運転資金です。
実際に計画を立てる時は、数回試算してみてください。アタリを付けた金額で試算し、無理が出ないラインを探りましょう。
今回は、それぞれ150万円ずつ、計300万円を差し引きます。
900万円から300万円を引き、残る予算は600万円。
「600万円で出店できる物件」について考えていきます。
まずは、お店の坪数・広さ。
どのようなお店をやりたいか、コンセプトをまず1度確認してください。
今回は、『居酒屋業態で宴会需要も取り込めるお店』としましょう。
宴会需要を取り込むには、ある程度の客席数が必要。
20~25席の確保を考えると、お店の広さはざっくり15坪前後は欲しいところです。
続いて工事費用を考えていきます。
工事費用の目安は以下の通り。
・スケルトン:50~80万円/坪
・居抜き活用:5~50万円/坪
600万円の残予算ではスケルトンからの出店は厳しそうです。
(15坪×50万円=750万円)
居抜きを活用することにしましょう。
居抜き工事(リフォーム工事)の費用を坪20万円程度と想定。
15坪 ×20万円 = 300万円
最後に物件取得費用です。
残る予算は300万円。
総予算900万-運転資金150万-諸経費150万-工事費用300万=300万
この予算で居抜き物件を取得しなければなりません。
居抜き物件では、不動産の契約費用に加え、居抜き譲渡代金(造作譲渡代金)がかかります。その譲渡代金を仮に100万円と考えると、残りの200万円が不動産契約に充てられる予算です。
不動産契約費用の目安は、家賃の10カ月分。
物件を借りる際には、仲介手数料、礼金、保証金、前払い家賃、家賃保証料などの費用がかかります。
物件取得費を200万円で抑えるために、家賃は20万円以内が目安。
ここまで考えて、ようやく出店できる物件のスペックが見えてきました。
【15坪で家賃20万円以内(坪当たり賃料 約13000円)の居抜き物件】
希望エリアでこの条件に見合う物件を探していきます。
条件が厳しいと候補物件が見つからない可能性も。
そういった場合は、店舗規模の見直し・予算増額・エリア再選定などを行わなければいけません。物件探しについては、「みんなの飲食店開業」の別記事で詳しくご紹介しています。
参考記事:「良い店舗物件に出会えない」2つの原因と対策を、年間100店舗支援の辛口コンサルタントが解説
15坪で家賃25万円以内を探した『もつ鍋 無二彩』
高濱さんの店舗物件選びの話に戻りましょう。
上記のロジックで、高濱さんも開業の総予算から逆算し、出店できる物件を条件を明確化しました。
出店業態は「もつ鍋 居酒屋」。
宴会需要・パーティ需要・貸し切り需要を取り込める席数(広さ)は欲しいところ。
先例と同じく15坪前後で考えました。
総予算をもとに、賃料を試算すると25万円が限度。
15坪で家賃25万円以内、坪当たりの賃料は約16000円が物件探索の条件となりました。
駅からは徒歩5分以内がいい
日常遣いで、週に何度も使ってもらえるような店にしたい
駅から徒歩5分圏内の賃料相場をチェック。
最初はやはり繁華街やオフィス立地をイメージしていた高濱さん。
都内の繁華街立地では1坪あたり3~5万円、オフィス立地では坪2~4万円程度。
残念ながら予算(16000円/坪)に収まる物件は簡単には見つかりそうもありません。
では駅から離れたところに出店すべきでしょうか?
しかし、高濱さんが目指すお店の方向性からすると、得策ではありません。
日常的に使ってもらうためには、お客様の利便性も大切です。
そこで、駅から比較的近くても家賃がそれほど高くならない「住宅街立地」に探索エリアを絞り込むことにしました。
住宅街立地と言っても、都内の駅周辺には、どの駅もそれなりにオフィスや商店があります。
競合が少なければ、「十分勝負になる」と考えたのです。
西武新宿線「鷺ノ宮駅」徒歩約5分の物件に出店
最終的に髙濱さんが出店したのは西武新宿線「鷺ノ宮駅」徒歩約5分の物件ですが、最初から「鷺ノ宮駅」に絞っていたワケではありません。
自宅が豊島区内でしたので、ご自宅から通える範囲(ドアツードアで1時間以内)で広く探索。
JR山手線では居住性の強い大塚駅、巣鴨駅、駒込駅の周辺、私鉄沿線では西武池袋線、西武新宿線、東武東上線など、東京メトロの有楽町線・丸ノ内線の池袋駅以西の駅など。
家賃相場から考えて条件に合い、物件が出てきそうなエリアを候補としていました。
上述のエリアで、坪数・家賃が希望条件に当てはまる物件があれば、すぐに現地を確認。
検討できそうな物件があれば、内見して内装工事の見積もりを取り、投資額や収支バランスや競合状況などを考慮し、出店可否を判断。
このような具体的な物件検討を、なんどもなんども繰り返しました。
ここなら十分に勝負できる
半年以上に渡る物件探しの末、予算的にも収支のバランス的にも納得し、決断したのが「鷺ノ宮」の物件だったのです。
「弱み」を正しく知り、カバーする
少し長くなってしまったので、まとめます。
大手チェーン店で勤務した経験を活かすにしても、前職と同じような立地・規模の物件を借りるべきではありません。
高濱さんは、大手チェーン店より資金力が乏しいという「自分の弱み」を直視。
「弱み」をカバーしつつ他店に勝てる戦略が描ける、無理のない開業を実現しました。
髙濱さんの経営者としての冷静な視点がなければ、決して得られなかった結果と言うことができるでしょう。
成功ポイント③お客様を鮮明にイメージした店づくり
「もつ鍋屋」というと、サラリーマンで賑わう赤提灯系・純和風の「居酒屋」テイストをイメージしませんか?
『もつ鍋 無二彩』は、そういったお店と一線を画し、バルや洋食レストランといってもオカシクないお洒落な内装。
ここにも高濱さんの成功ポイントがありました。
立地に合わせた内装
高濱さんがオシャレな内装を選択した理由。
実は”住宅立地”という立地環境と密接に関係しています。
『もつ鍋 無二彩』がある鷺ノ宮は住宅立地。
飲食需要の高い商業立地(繁華街)やサラリーマンの飲み需要が高いオフィス立地とは、利用シーンが異なります。
サラリーマンがいないワケではありませんが、どちらかというと都心で働くサラリーマンが「帰ってくる町」。
会社帰りに職場の仲間と飲むというのはあまり期待できないため、職場の仲間と飲みに行く・食事に行くという利用は少なめ。
となると、ファミリー利用・ママ会・シニア層の食事利用などを取り込んでいく必要があります。
赤提灯系のワイワイガヤガヤした雰囲気の居酒屋では、こうした利用には向かないですよね。
だからこそ、女性にも好かれるお洒落な内装である必要があるのです。
あらゆるお客様に来店いただける工夫
『もつ鍋 無二彩』では、内装以外にも幅広い来店客を取り込む工夫が。
老若男女のお客様に幅広くご利用頂けるよう、メニュー・サービス面でも気を配っています。
鍋は複数人で食べるイメージがあるため、1人ではなかなか入りづらいもの。
1人や少人数のお客様にご入店いただくため、『もつ鍋 無二彩』では3種類のもつ鍋は全て1人前から対応。
外にある立て看板にも、『1人前からOK』を明記し、来店を促しています。
グループ利用には、充実のサイドメニューで対応しています。
「もつ」の好き嫌いは人それぞれ。
大人数で集まると、もつが苦手な方がいる可能性は十分あります。
もつが苦手な方が食べられるものがない・楽しめないお店は選んでもらえません。
サイドメニューやデザートを充実させ、もつが苦手な方であっても楽しめるよう配慮。
このような気遣いが、どんな利用シーンでも受け入れてくれる『もつ鍋 無二彩』をつくっています。
《1人や少人数の受け入れ》
お仕事帰りの一人飲みや少人数のお客様にも対応。
- 3種類のもつ鍋は全て1人前から対応
→ ひとりでも気軽に利用しやすい
- カウンター、テーブル席をバランス良く配置
→ 少人数でも大人数でも利用しやすい
《女性・子ども・年配の方への配慮》
様々なシーンで利用できるよう、「利用しづらさ」を感じやすい方への配慮。
- もつ鍋以外のサイドメニューやデザートを充実
→ 女性、お子様、もつ鍋が苦手な人でも利用しやすい
- 明るめの照明、明るめ色調の家具、徹底した衛生管理
→ 女性・年配のお客様が気持ちよく利用できるように
- 地元商店街と連携(クロスクーポン、イベントへの参加等)
→ 年配・主婦層が安心して利用できる
《さまざまな目的の宴会に対応》
様々な創作料理を楽しめるコースから女子会向けコースも準備。
- コースメニューも充実
→ 地元の集まり・パーティにも使いやすい
お客様に合ったお店づくりを
どういう内装にすべきか?
どういうメニューにすべきか?
どのような価格設定にすべきか?
飲食店オーナーの悩みは尽きません。
飲食店経営における問いの「答え」は、オーナーさんでも、ましてやわたしどもコンサルタントでもなく、常に”お客様”が持っています。
ここなら、仕事帰りに1人で気軽に飲める!カフェみたいで入りやすい
落ち着いた雰囲気でデートにもぴったり。料理もシェアしやすい量
結婚式二次会のため、貸し切りできるお店を探していました
出店するお店のイメージが鮮明であればあるほど、答えは自ずと見えてくるハズです。
どのようなお客様に、どのようなシーンで、どのように利用してもらいたいか?
髙濱さんが内装デザイン・席レイアウト・メニュー・価格設定を比較的スムーズに決定できたのは、お客様やお客様の利用シーンを、くっきりと鮮明にイメージできていたからでしょう。
成功ポイント④まだ一度も来店したことのないお客様に魅力を伝える
お店のコンセプトもバッチリ決まり、素敵な内装も美味しいメニューもイメージ通りに完成。
・・・さぁ、あとはお客様にお店に来てもらうのを”待つ”だけ!
いえいえ、そうはいきません。
残念ながら、待っているだけではお客さんは来ません。
内装が素敵なこと、料理が美味しいこと、老若男女あらゆるお客様に喜んでいただけるように細部まで気配りをしていること。
これらの魅力を知っているのは高濱オーナーと一部の関係者だけ。
ただ待つだけでは、来店は増えません。
さらに1階路面店ならまだしも、『もつ鍋 無二彩』は2階店舗。
表の通りからは店内の様子はほとんどわかりません。
空中階のため、店の前を通っても存在に気づかない方も。
運良く気づいたとしても、「あ、なんか新しいお店ができたらしい。」「ちょっと気になるなぁ。」と思うだけ。
店内の様子やメニュー・価格が分からなければ、怖くて入ってこないものです。
もつ鍋 無二彩も味はたしかです。
一度来店してもらえれば、一度食べてもらえれば、お店の魅力は十分に伝わります。
そう、『一度食べてもらえれば』。
重要になるのは、まず一度食べてもらうためにどうするか。
いかに「初回来店」を促すかです。
”まだ一度も来店したことのないお客様”に、どのように店の魅力やコンセプトを伝えれば良いでしょうか?
リアル・ネットの両面から告知
(左:立て看板、右:自社ホームページ)
『もつ鍋 無二彩』ではリアル・ネット両面から告知を行いました。
2階店舗ではありますが、店前の人通りは多い立地。
立て看板や2階窓面などで「新店オープン」の認知を広めやすい環境でした。
自社ホームページはオープンより前に準備。
9月末のオープンですが、9月半ばには、ブログを更新を開始しています。
非常にマメに情報を発信されており、ほぼ毎日情報を更新。メニュー紹介などをされています。
スマホ時代にネット対策は欠かせない
いつでもどこでも気になったらスマホで調べる時代。
インターネット対策は欠かせません。
「無二彩」または「もつ鍋」で検索した時に、すぐに自店の詳細な情報(住所・営業時間・席数・メニュー・店内写真・料理写真・予算など)に辿り着くように準備しておきたいもの。
特に地下や2階以上の店舗は、1階路面の店よりも「店名検索」がされやすい傾向があります。
多くの人がネット検索で得られる情報を頼りにお店を選びます。
逆に言えば、ネット検索で出てこない・正しい情報が表示されない・情報が不足している(営業時間が分からない、メニューや店内の写真が表示されない)というのは、実は、お店側にとってはかなり致命的な問題です。
髙濱さんは、店長としての経験から、ネット検索の重要性が分かっていました。
自社ホームページの設置にくわえ、Googleマイビジネスにも登録し、ネット対策をしっかり行いました。
とくに自社ホームページは自店の「コンセプト」「魅力」をしっかりと伝えきれるものを準備。コンセプトやこだわり、店内の様子などを写真と文章で伝えています。
まとめ ~「無二彩」に学ぶ成功ポイント~
今回は、鷺ノ宮に新しくオープンした『もつ鍋 無二彩』さんを例に取りながら、個人店開業の「成功のポイント」を4つほどご紹介しました。
<成功のポイント①>
経験を最大限に活かせる業種・業態で開業する。
<成功のポイント②>
「弱み」を正しく知り、それをカバーする方法を考える。
<成功のポイント③>
お客様や利用シーンをできる限り鮮明に想像する。
<成功のポイント④>
まだ一度も来店したことのないお客様に魅力を伝える
成功パターンは必ずしも1つではありませんが、キャリアを活かした高濱さんの開業は、まさに王道。
髙濱さんのコンセプトの作り方、予算・立地・店舗デザインの考え方、店舗の立ち上げ方は、どれをとっても参考になるものばかり。
より確実に開業で成功するために、計画・考え方のチェックとしてお使いください。
■ もつ鍋無二彩
東京都中野区鷺宮4-34-9 トラスト店舗2F
電話番号:03-5356-9991
営業時間:16:00~23:30
定休日:不定休
ホームページ:「もつ鍋無二彩」
「出店コスト・初期投資額」の計画作成ツール
飲食店開業時に策定する、事業計画書のサンプルを用意しました。
事業計画書は(1)投資計画(2)売上計画(3)収支計画(4)資金調達計画(5)返済計画の5つから成り立っています。今回は(1)の投資計画の箇所をご活用ください。
LINEで新着情報を配信中!
飲食店開業・経営に役立つ情報やセミナーの特別無料ご招待を月2回ほどお届けします。
開業に役立つ記事や勉強会
- 「飲食店の出店にいくらかけた?」3人の先輩開業者に学ぶ、リアルな投資費用の内訳を公開
- 「良い店舗物件に出会えない」2つの原因と対策を、年間100店舗支援の辛口コンサルタントが解説
- 広告代理店キャリアウーマンが和食店で起業!そのしなやかな出店戦略を紐解く【飯場 松の葉】
1975年生まれ。東京都出身。
東証一部上場のコンサルティング会社にて、数百店舗の飲食店チェーンの立地診断・出店判断を担当。また、大手チェーンのM&A業務に関わるなど、多岐に渡る豊富な経験を持つ。
実務経験15年、1000店舗以上の支援実績を誇る立地戦略・物件開発のスペシャリスト。長年の現場経験に基づいた的確なアドバイスは、個人からチェーン企業に至るまで、多くのクライアントから絶大な信頼を集めている。