フードビジネスの昔からの格言、「飲食店は物件(立地)が8割」。
この格言が、必ずしも飲食店経営に当てはまらなくなってきていることをご存じでしょうか?
口コミサイトやSNSの集客が増えて路地裏やアクセスが悪いお店への来店が増えたから、だけではありません。
「店舗不動産を借りて、ずっと同じ場所で営業し続ける」
飲食店経営の”当たり前”が崩れつつあるのです。
「お客様の目の前に、出向いて営業する」
「家やオフィスにできたて料理を届ける」
来店してもらう必要がなくなれば、物件や立地への依存度が大きく下がります。
出店コストは5分の1に、かつ集客の手間やコストから開放され、お客様へのサービス提供だけに集中できる飲食店経営が実現できるようになりました。
新たな飲食店経営とも言える、「フードトラック」と「ゴーストレストラン」。
フードトラックもゴーストレストンも、居抜き出店より「圧倒的に低コスト」な出店方法。
当然閉店リスクもより小さく、かつ従来とは異なる運営スタイルです。
飲食店開業オーナーからの問い合わせも多くなってきたため、みんなの飲食店開業で『新しい出店のカタチ!新時代出店セミナー』を8月に開催。
フードトラック「TLUNCH」Mellow社/ゴーストレストラン「Kitchen BASE(キッチンベース)」SENTOEN社との共催セミナーは、会場ギチギチの満員御礼!
活発に質問が飛び交い、参加者様の熱量がとても高いセミナーでした。
セミナーの内容を「フードトラック」と「ゴーストレストラン」の2つの記事に分けてレポート。
独立開業のテストや低コスト出店はもちろん、既存店をお持ちの方にも「さらなる増店の足がかり」「ランチ時の利益アップ」など新たな店舗経営手法として活用いただけます。
通常の飲食店開業は1000〜2000万円をかける大きな勝負。
一方、両社の新たな出店スタイルであれば200〜300万円で自分の店を持てます。
さらに『お客様の反応をみながらメニュー開発』『反響が良いエリアの把握』『オペレーションのクオリティーアップ』を行えれば、将来固定の場所に店を構えるときの閉店リスク低減にも繋がりますよね。
固定店舗の開業前にテスト営業としても運営できるなど、さまざまな活用ができます。
新規出店・増店の選択肢のひとつとして、「フードトラック」「ゴーストキッチン」も視野に入れてみませんか?
この記事ではまずは「フードトラック」のメリットや運営のポイントについて、株式会社MELLOWの向氏(※)のお話をもとに解説していきます。
※ぐるなびに新卒入社し1,000店舗超を見てきた経験からフードトラックビジネスに魅力を感じ、今は株式会社Mellowで活躍する飲食のプロ。
300万円で開業可能なフードトラック
フードトラックは似たようなイメージで言うと、「移動販売」や「屋台」でしょうか。
もちろんそれら従来のビジネスモデルとは大きく異なる点があります。
フードトラックはお店として開業しやすく、撤退リスクも固定の店舗にくらべると小さいのがメリット。
・250万円~500万円で開業可能
・1〜2人の運営が基本なので、人材採用も楽
・辞める時は、車を1台処分するだけ
処分といっても、捨てるのではなく、売却するケースも。
フードトラックは中古売買も盛んなため、状態が良ければ買い手がつく可能性も高いのです。
車内では本格的な調理ができないんじゃないの?
調理のプロであれば、そんな心配もあるかもしれません。
必要な厨房機器は問題なく積み込めるため、通常の飲食店と遜色なく、本格的な料理を作れます。
ただしスペースに限りがありますので、メニューを絞った”専門店形式”が基本です。
固定の店舗にはマネできない柔軟性
フードトラック最大のメリットであり、経営としてのリスクヘッジは、営業場所を移動できること。
固定店舗では”待ち”の営業になるため、『立地が合わず集客できない=撤退』のリスクが小さくありません。
フードトラックでは、業態に合った場所に移動して営業。
ニーズがある地域に移動して「攻め」の営業ができるのがフードトラック。
また、固定店舗の出店場所リサーチにも効果的。
「どのエリアに自店のメニューや商品を好む客層がいるか」把握することもできますよね。
フードトラックの出店は2パターン
フードトラックの出店は2パターンあります。
①飲食店スタイル:オフィス街の平日ランチ
②屋台スタイル:イベント
継続的にビジネスを行うためには、ランチでの安定収益がポイントに。
フェスなどのイベント出店は開催が不安定なうえ、チャンスもわずか。
仮に土日(月8回)すべてにイベント出店しても「96日/年間」の稼働日。
ランチは平日5日営業で、2.5倍の「約240日/年間」の稼働日。
安定性はくらべるまでもありません。
日々の営業で多くのリピーターを獲得することが成功への近道。
「ここでしか食べられない」「もう一回食べたい」という体験を提供できると、より多くの収益につなげることもできます。
ランチでお店を気に入ったお客さんが、会社のパーティー/イベントでケータリングの依頼につながることも。
ケータリングは「50食注文」など、指定量を買い取る形式。
売れ残る心配がないため、確実に利益が残せるチャンスです。
『TLUNCH』は空きスペースとフードトラックをマッチングするサービス
良いことずくめに見え、さまざまな場所で営業できるフードトラックですが、好きな場所でいつでも勝手に営業できるわけではありません。
許可を得ずに営業すれば、駐車禁止違反ですぐさま警察のお世話に…。
”適切な営業場所の確保”が、フードトラックビジネスでは重要。
『TLUNCH』はフードトラック事業者の重要課題を解決するサービスで、空きスペースとフードトラック事業者をマッチング。
フードトラック660店・空きスペース160箇所(2019年10月現在)を運営する強みをいかし、適切な出店機会を生み出しています。
曜日ごとにスケジューリングを組むことで、お客様に飽きないランチ環境を提供しつつ、フードトラック事業者にとっては異なる場所での営業機会に。
オフィスワーカーとフードトラック事業者の双方にメリット
銀座・神谷町・赤坂など、大手企業も多いオフィス街のビル前に出店。
ランチ難民となっているサラリーマンに、できたての温かい料理を提供します。
フードトラックは単なるテイクアウトではありません。
提供するのは、『シェフが作るこだわりのできたて料理』。
お客様も価格やボリュームだけを求めている客層と異なり、見た目や美味しさを重視する方も多い。
コンビニ弁当よりも高価な700円~1000円の価格帯で、味にも素材にもこだわった商品を提供できます。
「移動販売」「屋台」といったハデな外装とは、全くイメージが異なります。
平日のランチ営業では、オフィス街に合ったおシャレなフードトラックが多いのも特徴。
TLUNCHの出店コストは固定費ではなく「売上の15%」。
出店者にとっては、オフィス街の営業にぴったりの料金形態です。
企業が休みの土日はオフィス街は閑散としており、1月30日のうち8~10は日売上が立ちづらい日があるのです。
TLUNCHでは営業しない限り費用が発生しないため、無駄な固定費を支払うことはありません。
フードトラックの取り組み事例
店舗出店より圧倒的に初期投資を削減できるフードトラック。
具体的な活用方法をお伝えします。
リスクを抑えた開業方法
独立開業を考えていたシェフがフードトラック出店を選んだのは、なるべくリスクを抑えるためでした。
フードトラックで独立開業
自分の店を持ちたい!でも家族もいるし、失敗した時のリスクが大きい…
レストランで働きながら、開業の夢を胸に抱いていたシェフ。
家族と出かけた公園でフードトラックに出会い、奥様のススメもあり、フードトラックで出店。
フードトラックなら出店時に300万円程度。万が一失敗して廃業しても、1台廃車にすると思えば…
パエリアをメインにしたフードトラックを出店し、すでに10年。
今ではどこに出店しても、常連の列でにぎわう人気店になったのです。
ランチ営業の収益率アップ
もうひとつは、ランチ営業の収益率アップにフードトラックを活用した事例。
客単価は上げづらいランチ営業ではあるものの、
「少しでも売上の足しにしたい」
「認知度を上げて夜の集客に繋げたい」
こんな考えから、利益率10%程度でランチ営業に取り組む飲食店も少なくありません。
固定店舗のランチ営業からフードトラックでのランチ営業に変更することで、人件費を減らすことができます。
結果的に同じランチ営業でも、利益率が10%→30%に改善したお店も。
銀座のイタリアンがフードトラックに取り組む
お店では、1000円~1500円のランチで2回転していました。 売上の割には、準備にもサービスにもどうしても人件費がかさんでしまいます
フードトラックをはじめ、ランチの売上はお店の3~4倍に。
人件費も大きく下がり(33%⇒12%)、営業利益率も12%⇒32%と大幅アップ。
フードトラックの機動性をいかした「攻め」の営業
お客様がいるところに自ら移動して出店できることが、フードトラックの大きな強み。
特殊な業態の特性を考慮した結果、フードトラックでの出店を選択した例もあります。
だれも知らない民族料理の専門店で脱サラ開業
見たことのない食べモノは、だれしも手を出しにくい。自分もそうですから。
知名度が低く、一般的には売りづらいメニューをフードトラックの機動性をいかして解決したお店。
人がいるところに出向いて自分から知名度をあげていけるのがフードトラック。
メニューとして置いているだけでは、手に取ってもらえません。
専門店としてアピールしやすく、人が集まるところで営業できるフードトラックの強みを最大限に活用しています。
フードトラック出店の注意点
ただし、フードトラックの出店では、2つの注意すべき点があります。
①仕込み場所が必要
フードトラックで仕上げの調理はできますが、仕込みの場所は別途確保する必要があります。
保健所の規定をクリアしないと営業許可がおりないため、自宅の台所をそのまま使うことはできません。
「床は耐水性材料で掃除がしやすい」「2槽以上の流しがある」など細かな規定をクリアできるよう、工事を行わなければなりません。
※保健所の規定は地域で異なるため、管轄地域の保健所に確認しましょう
既存店がある場合は今ある厨房を活用できるため、別に仕込み場所を契約する必要はありません。
集客や来店を考慮しなくて良いため、仕込み場所は安い立地でOK。
「駅から離れている」「視認性が良くない」物件でも問題ありません。
各エリアの保健所から許可を得る必要がありますが、埼玉や千葉などで仕込みを行って、フードトラックの営業は都内で行うこともできます。
②売上を上げるために工夫が必要
フードトラックのランチ営業は11~14時が基本。
ディナー営業がある飲食店とくらべると、3時間のランチタイムでは出数は限られるため、売上の確保に工夫が必要です。
限られた時間で売上を確保するには、客単価の確保とスピード提供が肝!
特にスピードは重要で、提供時間1分を切れるかどうかが鍵を握ります。
なかには3時間で260食を売り切ったお店もあり、客単価が800円だとするとランチだけで20万円を超える売上に。
また、営業時間に限りがあるものの、売上に対して利益率が高くなるメリットは見逃せません。
フードトラックはテイクアウトが主で、客席に料理を届けるなどのホール業務がなくオペレーション効率が良いため、人件費率が低く抑えられます。
低投資で取り組める「フードトラック」
新しい出店方法である「フードトラック」のポイントについてお伝えしました。
・200〜300万円からの低コスト出店
・顧客のニーズがある場所に出向いて営業
・ランチ時の利益アップ
・反響が良いエリアの把握
・お客様の反応をみながらメニュー開発
・独立開業のテスト営業
リスクを下げつつフットワーク軽く営業できることはもちろん、固定店舗の出店を見据えた方にとってもトライアル営業として活用できるなど、さまざまなメリットがあります。
実店舗を持つ前のワンステップとしても、ぜひご活用ください。
『みんなの飲食店開業』では、現場で使えるノウハウを無料勉強会で公開。
出店手法のご相談はもちろん、コンセプト作成/物件探し/資金調達/フランチャイズ選び/内装デザイン/集客など、さまざまなテーマで開催しております。
過去13000人以上が参加したセミナーにぜひ足をお運びください。
「フードトラック」「ゴーストキッチン」についてのご相談は、お電話もしくはご面談にて受付けております。下記へご連絡ください。
担当:開業コンサルタント大森
03-5956-2333 平日10時~18時
■フードトラック:TLUNCH <トランチ>
LINEで新着情報を配信中!
飲食店開業・経営に役立つ情報やセミナーの特別無料招待を月2回ほどお届けします。
年間300件超、累計6500件以上の飲食店開業をサポートしてきた株式会社M&Aオークションの専門家集団。個人店から大手チェーンまでさまざまな業態・立地の飲食店の開業コンサルティングを行ってきたノウハウをブログで発信します。
アルコールに合う料理を作りたいため、アルコールも提供したいのですが、どのような許可が必要なのでしょうか?
ご質問ありがとうございます。
返信にお時間をいただき申し訳ございません。
キッチンカー(フードトラック)で許認可を取得する場合、管轄の保健所にて営業品目を指定して許可を得る必要があります。(※)
※提供する商品にもよりますが、通常は仕込み場所と車両、双方に対して許認可を取得する必要があります。
例えば、「カレー」という単品目で許可を得た場合、原則として、カレー以外の商品を製造・販売することができません。
フードと合わせて、アルコールを提供する場合には、アルコールを含めた複品目で許認可を得る必要がありますが、販売する地域(都道府県)によって許認可の要件が異なりますので、詳細は出店場所の管轄の保健所にお問い合わせ下さい。