飲食店開業って何から始めたらいいの?
そんな相談をよくいただきますが、当社では、そんな時は決まって、まずは『コンセプト作り』から・・・とお話しさせていただきます。
今回は『コンセプト作り』の大切さについて、実際に成功されている飲食店オーナーのインタビューを交えて、皆様にお伝えできればと思います。
今回インタビューにお答えいただいたのは、フレンチの業界では知らない人がいないと言われる銀座の老舗名店『銀座レカン』の第7代総料理長を務め、その後2022年7月に門前仲町で、独立開業された渡辺料理店の渡邉幸司オーナーシェフ。
今では 3、4ヶ月先まで予約で埋まってしまう超人気店ですが、その成功の裏には、2年にもわたる長い月日をかけて練り上げられた、渡辺オーナーシェフならではの『コンセプト作り』がありました。
■店名『渡辺料理店(わたなべりょうりみせ)』について
(左)渡邉幸司オーナーシェフ (右)開業コンサルタント 金子圭太
(金子)早速ですが、お店の名前が 「わたなべりょうり”てん“」ではなく「わたなべりょうり”みせ“」ってなっているのは、事前からそういう構想だったのでしょうか?
(渡邉)そうなんです。お店の名前っていうのは料理人であれば一度は考えたりすると思うんですけど、大阪と京都だけの文化なんですけど、老舗のお店とかデパートとか、そういう言い方するんですよ。例えば大丸デパートでは「梅田店=うめだみせ」とか「京都四条店=きょうとしじょうてん」とか。そういう言い方がアナウンスで流れたりするような文化で、私も幼少期から聞いていたので「みせ」って言うものだと思っていました。東京のお客様には、「なんで”みせ“なんですか?」って、よく言われますよ。(笑)
■渡邉オーナーシェフのご経歴について
(金子)渡邉さんといえば、素晴らしいご経歴で。銀座の老舗名店「銀座レカン」で総料理長をされていたんですよね?
(渡邉)最後はそうですね。東京に出てきてからずっとレカンさんにお世話になっていました。
(金子)最後は料理長まで務められて、その後、独立を決意して、スパッと退職されたのですか?
(渡邉)そうですね。独立というか「次の道を考えないといけないな」という風に思っていたので、退職しました。
(金子)退職された時、他店からの誘い(引き抜き・勧誘)とかも沢山あったんじゃないですか?
(渡邉)かなりありましたね。(笑)
(金子)でも、あえてそっちには行かずに、独立の道を進まれたんですね。
(渡邉)そうですね。色々なことを見つめながら、進んだり下がったり、「ちょっとそれは違うんじゃないか?」と自分で思ったりとか、方向性が変わったりした時に「これも違うな」と思ったりしながら過ごした期間ですね。
銀座レカン総料理長時代の写真(左)
■お店の『コンセプト作り』について
(金子)その期間に、このお店のコンセプトをどんどん詰めていったワケですね。
(渡邉)そうですね。色々なことを考える良い時間だったと、わたし的には思っていますし、それによってこのお店が出来上がってるっていう部分に繋がっていると思いますね。
(金子)ちゃんと考えて『コンセプトを煮詰める』って、やっぱり大事ですね。
(渡邉)そうですね。それは確かに大事だと思いますし、(コンセプトを作る際には)「お客様に魅力を感じてもらえる」というところを1番に考えましたね。
(金子)コンセプトを一緒に吟味してアウトプットに繋げていきましたが、コンセプトには柱が3つあって・・・1つ目の柱が『話せて選べる楽しみ』ですね。
(渡邉)やっぱり今の時代の流れっていうのを少し考えた時に、1本のコースしか選べなくて、そのコースをご用意して、お客様がそれを召し上がりに来る、(フレンチの業界は)そういうスタンスの店が多いんですよ。それには、色々なメリットがあります。「料理人のメリット」・「店のメリット」・「お客さんのメリット」、それぞれメリットは色々あるんですけども、それとはちょっと違うところを、私は魅力として伝えていきたいな、(私が)やらなければいけないんじゃないかな、と思ったのが1つありますね。
(金子)なるほど。黒板にも色々メニューが書いてありますけど、アラカルトで注文されるお客様が多いですか?
(渡邉)色々迷って「どうしたらいいですか?」と聞いてくるお客様には「コースもありますよ。」とご提案して「じゃあ、コースにしようかな。」となることもありますし、「アラカルトで頼みたいけど、どれを注文すれば良いのか分からない。」というご相談をされることも多々ありますし、それも色々です。でも、それがやりたかったことですし、それがお店の魅力だと思っています。
(金子)コンセプトの2つ目の柱は『見る楽しみ』ということで、「ライブ感のある厨房」を当初から構想されてましたよね?
(渡邉)そうですね。色々な意味で、空間に一体感が出るような、 そんな店をやってみたかったので。お客様がどこの席に座っても、何がどうなってるのか見えるような、そういう店をやりたいなと思っていました。厨房全部を取り囲むような劇場型とはちょっと違って、各々が(利用シーンに合わせて)色々な方向を見ながら楽しむのが1番良いと思っていて、カウンターの人はカウンターで厨房を見ながら楽しんで頂けますし、テーブル席は厨房を垣間見ながらお相手と(会話などを)楽しんで頂くというような、そんな多様性があっていいなと思います。
(金子)そして、コンセプトの3つ目の柱が『味わえる楽しみ』。これは、もう言わずと知れた、今までやられてきた(料理人としての)積み重ねがありますからね。
渡辺料理店 Instagramより抜粋
(渡邉)そうですね。そこは、自分としても経験があるっていうことは、自分の力っていうか、その魅力っていうか、 持ってるもんだと思ってますし、そこを認識しながら、それをどうやってお客様に伝えるかっていうことをしっかり考えたいと思ってますし、やっぱりこの店やった1つ(の理由)として、「フランス料理を楽しんでほしい」っていうのがありました。高級店もやってきましたけど、高級店っていうのは限られた人たちが行って楽しんだりするところであって、大体の人がそんなによく行かないですよね。だけど、 いろんな人が「フランス料理ってどんなもんなんだろう?」「ちょっと行ってみたいな」と思って、(気軽に)行ってみようかって思える、そういうお店をやりたいな、やってみたら楽しいかな、と思って。(フランス料理を)いいね、面白いね、楽しいねって思ってもらいたいですね。
(金子)今、お話し頂いた3つの柱が しっかりとした軸になって、お店が出来上がっているんですね。開業のお手伝いを始めた時に、最初に驚いたのが、想定単価が(想像より)低かったのですが、ここも「狙い」というところですかね?
(渡邉)そうですね。やっぱり「フランス料理」=「高級、堅い、美味しい」みたいなところがありますし、それが値段にも反映されているところがあるので、そこはもうちょっと敷居を低くして「軽くでもいいから1回行ってみたいな」「行ってみよう」と思えるという部分を反映させると、そんなには「高い」(という値段設定)にはならないですね。
(金子)ちょっと頑張ったら通えちゃう価格設定ですね。
(渡邉)そうですね、やっぱりいろんな使い方をしてほしいなと思いますし、色んなものを大勢で食べるのも1つだし、二人で2~3品頼んでしっぽりするのも良いと思いますし。
(金子)私も「超高級フレンチ」みたいなお店を幾つかお手伝いしたことがあって、最初はそういう路線で行くのかな?と思って色々ヒアリングしていったら、「単価はこれぐらい」で「最初の投資もこれぐらい」で、みたいな。「あ、こんな感じでやるんだ。」と意外に思いましたね。
(渡邉)そうですね。(これまでのキャリアに比べると)だいぶギャップがあると思います。そのギャップがこのお店の魅力に繋がってほしいな、と思っています。
(金子)その結果が出てますね。
(渡邉)なんとかお客様には来て頂いていますね。
(金子)オープンが2022年の7月で、まだ1年半経っていないぐらいですが、今のところは、狙い通りに来てるっていう感じですかね。
(渡邉)いえ。狙ってた状況ではないですね、逆に。こんな(予約が殺到する)状況は、自分の中でも想定してしなかったので。これからもしっかりと「このお店の魅力を伝えていきたいな」と思っています。
■開業までの道のりについて
(金子)開業までの苦労は色々ありましたけど、まぁ、物件はトラブルが付き物なので。。
(渡邉)そうですね。色々な決断をしながら、、でしたね。(物件は)出会いですからね。
(金子)色々な経営者さんを見ていると、うまく行く方って決断が早いんですよ。それはすごく思っていて、渡邉さんもフットワーク軽くポンポン決断されるので、これは上手くいくな、と思っていました。
(渡邉)ありがとうございます。でも、でも、色々な不安もあって、不安で寝れない夜もありましたよ。
■当社のサポートについて
(金子)今回、当社にて開業のお手伝いさせていただきましたが、渡邉さんのお役に立てましたでしょうか?
(渡邉)この出会いがなかったら、「今はどうしてんのかな?」というぐらいのところですし、皆さんに出会えて、本当によかったと思いますね。私は料理だけしかやってませんし、先ほどは「フットワーク軽く」とおっしゃって頂きましたけど、やっぱり自分たちが分からない「経営・開業」っていうことになると、足が重くて動かなくなるんですね。どうしていいか分からない。開業準備って、どうするんだろう?とか、あと融資や資金繰りとか、そういう面ですごく的確なアドバイスだったので。(飲食店を開業するというのは)「そういう世界なのか?」と。色々お話をしていただいて、進めていただいて、そのコネクションがなければ、今の自分はなかったので、すごく助かりました。そういう世界があって、そこに長けた人としっかり協力し合ってっていくというのが、当たる(成功する)方法の1つだと思いますね。
■今後の目標について
(金子)まずは、このお店をもっともっと繁盛させる、というところですよね、
(渡邉)そうですね。まだまだ1年半ぐらいですので、これからもっと頑張っていかないといけないです。
(金子)是非、スーパー店舗になってください。
(金子)本日は、長いお話いただいてありがとうございました。引き続きよろしくお願いします。
(渡邉)ありがとうございます。
■『渡辺料理店』の店舗情報
- 店名:『渡辺料理店』
- 業態:フランス料理店
- 住所:東京都江東区富岡1丁目2−9
- アクセス:東京メトロ東西線「門前仲町駅」より徒歩約3分
- TEL:03-6381-8899
- 営業時間:ディナー 18:00~21:00 ランチ(金土日のみ)11:30~13:00
※いずれも要予約
※営業時間は予告なく変更になる場合があります
- オープン日:2023年7月21日
- インタビュー動画: 以下からインタビュー動画をご視聴頂けます
■編集後記(コンサルタントから見たポイント)
いかがでしたでしょうか?
誰もが憧れるような華々しいキャリアを持つ渡邉シェフですら、長い時間をかけて開業の第一歩としてしっかりとしたコンセプトを練り上げているのです。
具体的に「コンセプト作り」とは、自分の出すお店が
・いつ
・どこで
・誰に
・何を
・なぜ
・どのように
商品を提供するのか?ということを明確にしていくプロセスのことですが、渡邉シェフがおっしゃっていた通り、ただ 自分がやりたいことを書き出すのではなくて、それが「お客様にとって本当に魅力的なものになってるかどうか?」「お客様にどんな価値をもたらすのか?」そういったところまで徹底的に考えることが大事です。
残念ながら、飲食店を開業する際にこのコンセプト作りを しっかりやっていなかったり、軽く考えてる方が非常に多いのですが、これまで1000店舗以上の 飲食店開業をお手伝いしてきた経験上、このコンセプト作りをどこまでしっかりやるかによって、お店の成功・失敗が決まってくると言っても過言ではありません。
これからの開業を目指す方は、開業の第1歩として、お客様にとって魅力のある、お客様にとって本当に価値のある、そして皆様の強みをしっかりと活かせる「コンセプト作り」から始めてみていただければと思います。
記事をお読み頂いている皆様も、開業に際して何かご不安な点があれば、ぜひ無料相談や無料セミナーを活用いただければ幸いです。
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