飲食店での独立開業をお考えの方の中には、チェーン店で長く勤務されていらっしゃった方も多いと思います。
商品開発力を生かした高品質な料理、スケールメリットを生かした価格訴求力、 効率化されたオペレーションなど、チェーン店にはチェーン店ならではの強み、ノウハウがあり、その経験から学べることは多いと思います。
一方で、個人店での独立となると、資本力、組織体制、信用力などの問題でチェーン店と同じことを実現することは非常に難しく、チェーン店と同じ感覚で始めてしまって、残念ながら失敗される方が少なくありません。
今回取り上げるのは、有名チェーン店で長年店長を勤め、その実績から伝説の兄妹店長と評された池田ご兄妹が2023年に開業された蕎麦食堂いけちさん。
お2人の創業の経緯から、個人店ならではの大変さ、難しさ、チェーン店との違いなどについて、開業のご支援を担当させていただいた弊社コンサルタントの金子がお話をお伺いしました。
皆さんこんにちは。M&Aオークションの金子と申します。
今日は、板橋区役所前の駅からすぐの「蕎麦食堂いけち」さんにお邪魔しています。
よろしくお願いします。
(左)蕎麦食堂いけち 池田 晃久オーナー (右)蕎麦食堂いけち 池田 恵オーナー
「蕎麦食堂いけち」ってどんなお店?
(金子)「いけち」という店名の由来を教えてください。
池田さん(兄)私の小学校、中学校時代のあだ名を妹がいいんじゃないかっていうことで。やっぱ親しみがある。
池田さん(妹)いつでも会えるっていうところから(決めました)
(金子)妹さんの「いらっしゃいませ」は日本一だと聞きました。
池田さん(妹)声が大きいだけです(笑)
いらっしゃいませ~!(動画本編:2:06 辺りをご覧ください)
池田兄妹オーナーの経歴について
(金子)元々ご実家も飲食業をやられてたんですよね?
池田さん(兄)そうですね、喫茶店をやっていて、私は6年ぐらい手伝っていました。
池田さん(妹)私は学生の時、夏休みに手伝い行くみたいな。
飲食店でアルバイトとかしてたんですけど、絶対飲食店嫌だとか、こんな厳しいのは向かないなと思ってたんですけど、某チェーン店のこういう形態のお蕎麦屋さんで働いていたことがあって、そこで出会った上司の影響を受けて(今に至ります)。
(金子)お二人それぞれが(別店舗の)店長だったんですよね?
池田さん(兄妹)はい
(金子)伝説の兄妹店長って呼ばれてたんですよね?
池田さん(兄)いやいやもう恥ずかしいです。
(金子)ある程度注目されて実績もないとそうやって取り上げてもらえないでしょうしね。そういうとこでも接客とかいいっていうのがあったんじゃないですか?
池田さん(兄妹)自覚が・・・(あまりない)
池田さん(兄)自分たちは楽しいって思っていたので。
だから毎日毎日、常連のお客さんや一見のお客さんも含めて接することがすごく楽しくて、やめられないと思いました。
(金子)根本的に(人が)好きなんですね。
池田さん(兄)はい。本当は「人見知り」だったんですけど、父のカフェで払拭されて。
「こんなに人と接するのが楽しい!」っていうのに気づけて、もう飲食しかできなくなりました。
1回違う(業界の)会社に入ったんですけど、やっぱり飲食だなと思って。
(金子)では妹さんは?
池田さん(妹)大学卒業して、夜間の専門学校に行っていた時に、朝働ける時間帯がちょうど良かったので、その当時の店長さんと飲食店はこういうことが大事だよっていうのを教えてもらって、それで 売上とかも上がって、やっぱり「お客さんを大事にする」ことが「結果に繋がる」っていうのがすごい楽しくて。
数字とかが目に見えてわかったり、「今日もありがとう」などと言ってもらって、だんだんこういう仕事もいいなと思い始めました。
ちょうど専門学校の卒業の時に、もしよかったら店長としてやってくれないかっていうお話があって。
その時は、専門学校で取った資格の仕事に就こうと思ってたんですけど、すごい楽しくて、なんかやりがいを感じて、そのまま店長になりました。
(金子)そこから、二人とも別々の店舗で店長をされてたんですよね?
池田さん(兄)私の方がだいぶ後から入って、私は4年やっていました。
池田さん(妹)私は店長を10年ぐらいやってました。
開業のきっかけについて
(金子)そこから何年かやってきて、独立しようってなったきっかけは?
池田さん(兄)妹の方から独立しようと言ってくれました。
池田さん(妹)将来を考えたときに、「会社から言われてやっている」っていうのがすごい嫌で。
池田さん(兄)それを妹から誘ってもらって「妹となら頑張れる」じゃないですけど「楽しいお店を作れるな」と思ったので、自分たちで全部決めて、自分たちなりの接客で「良いのか悪いのか」も全部返ってくるので、自分たちでお店を作ったら、もう「楽しみしかなかった」です。
(金子)いざ動き出した中で最初は何から始めましたか?
池田さん(兄)本当にどうしていいか分からなかったので、株式会社M&Aオークションさんに相談しました。
(金子)ネットで調べた感じですか?
池田さん(兄妹)はい。
池田さん(兄)検索して一発目に出てきて電話しました。
(金子)そこから最初に「個別相談」に来られましたよね。
池田さん(兄)仕事もやりつつだったので「どこから動いていくか」っていうヒントをもらいに行きました。
(金子)当初は2~3年先とおっしゃってましたよね?
池田さん(兄)はい、私たちは2~3年後にやりたいね、そこまで決まったらいいなっていう話だったんですけど、どんどんうまい具合に進んでいったので。
池田さん(妹)テナントが空いたっていうお話を頂いて「ここの物件良いな」って思った時が、やっぱりタイミングがいいのかなと思って。
チェーン店と個人店との違い
(金子)みなさんそうなんですけど、特にチェーン店でやれれてた方はチェーン店の感覚になっちゃいます。
個人店だと同じ事は出来ないので、相談をお受けするかという時に、前にいたチェーン店と同じことをしようと思ったら「それはできないので無理です」ってお話ししたと思うんですね。
池田さん(兄)すごい覚えてます。
(金子)チェーン店だからできることもあるので。
ただ、今までのキャリアはあるのでそのキャリアを「最大限に活かした形」で「個人開業」だけれども、チェーン店に近いラインまで持っていこうっていうところまで約束するっていう話で始めたんですよね。
そこからコンセプト作りに。
池田さん(兄)2~3か月くらいかかりましたね。
(金子)それくらいでしたね、何回かお話しさせていただいて、それで形になっていったという感じですね。
それで次にお会いしようと言って、確か妹さんが来た時には「退職決めてきました」って言われて、あの辺から加速した感じですか?
池田さん(兄)はい。
(金子)やることをイメージできたということですか?
池田さん(妹)大体イメージできて、まずコンセプトが自分たちの中でどういうお店にするか、ボヤっとだったものをどう実現していくかを悩んでいたんですけど、できるところはこういう感じでいこうと。
(金子)ダーッといきましたよね。
池田さん(兄)スピード感すごかったですね!
池田さん(妹)これはチェーン店ではできないことでワクワク感をすぐにでも実現できるっていうのが本当に個人店の魅力でチェーン店だと上の人に相談して「稟議を通さないきゃいけない」とかでできなかったり。
個人店だと「ワクワクした気持ちのまま」でやれるので。
(金子)お客様の立場で見てると楽しいですしね。
池田さん(兄)妹はメニュー作るのがすごく上手だなと思っていて、妹が作るメニューはすごいバランスも良いしお客様に分かりやすいものを作っているから、これやると言ったらパッと出せるし「こんなの出たんだ」っていう新メニューに興味を持ってくれるお客様がいらっしゃるので。
池田さん(妹)オペレーションとかもこういう作りなので、どういう風にオペレーションしようかってちゃんと話した上でメニュー開発もやって、それで人気メニューになるとすごい嬉しい。
(金子)自分たちで独立してやって、個人店で「楽しいな・良かったな」っていうのはありますか?
池田さん(兄)お客様とお話しできたりっていうのが、会話が生まれるっていうことが楽しさですね。
池田さん(妹)やっぱり自分たちで考えたもの・作ったものをお客様が食べに来て頂けるっていう嬉しさがありますね。
池田さん(兄)これは自分でやった人たちしかわからないと思うんですけどね。
あとは開店から1年半が経って、お子様がすごい大きくなって「成長が見られる」というのもすごく楽しいです。
池田さん(妹)家族の方が来て、こんな小さいお子さんがだんだんと大きくなっていくそういう成長を見られるのが良いですね。
個人店の「苦労や苦悩」
(金子)逆に個人店での「辛さ・厳しさ」はありますか?
池田さん(兄)チェーン店のお店は「ネームバリュー」があるのですぐにお店に入ってくれるけど、それが個人店だと「ここはどんなお店なんだろう?」と思われる。
蕎麦屋なんだけどチェーン店に行ってしまうとか「認知されるまでのもどかしさ」というのがありますね。
(金子)それを乗り越えてしまえばという感じですよね。
池田さん(兄)会社員のお客様が増えてきたのがランチ帯では認知されてきたのかなっていうのはありますね。
池田さん(妹)でもまだまだだよね。
最初オープンした時に衝撃があって、チェーン店のつもりで絶対お客様が来てくれるだろうって思ってたら全然来ないみたいな・・・。これが個人店なんだっていうのはすごい思いました。
池田さん(兄)アピールの仕方とか、どう発信していくかとか
池田さん(妹)ポスターやポップとかもどういう風に認知されるかなとか見て、お客様が来ない時に外からも見て、どういうところにお客様の目がいくんだろう?っていうのを、二人でどうするか考えて話し合って。
池田さん(兄)チェーン店でやってると言い方悪いんですけど、ふざけたことができないというか、なのでその逆をやらないと知ってもらえないのかなと。
だからベタベタとポップを貼っていこうと。
貼っていったら見て頂けるお客様も増えて、ご来店してくれるお客様も増えました。
池田さん(妹)まずは知ってもらうことを大事にしてお店に入ってきてもらったら、必ず美味しいものを提供すること、お店の雰囲気は大事にしていきたいです。
サポートを受けて
(金子)開業に至るまで当社でお手伝いをさせて頂いたんですけど、当社の開業サポートサービスはどうでしたか?
池田さん(兄妹)もう本当に心強くて。
池田さん(兄)2人だったら頓挫してたかもしれないし諦めていたかもしれなかったところを引っ張って頂いて。
池田さん(妹)自分たちの甘い考えのところを金子さんに「それはダメ!」って言ってもらう。
池田さん(兄)無理なものは無理で、やれるところはいこう!と背中を押して頂きました。
池田さん(妹)自分たちもすごい悩んでそれで今があるので、1つでもいいから強みを見つけてっていうのを教えて頂いたので。
(金子)そのオーナーじゃないとできない店(=オーナーの個性や強みを活かしたお店)にするっていう部分はずっとこだわっているので。
池田さん(兄)それがあったので金子さんに付いていこうと。
池田さん(兄妹)本当にありがとうございました。
これから開業する方へのメッセージ
(金子)これから開業する方にメッセージとかがあればお願いします。
池田さん(兄)絶対楽しいので
無責任かもしれないんですけど、こんな楽しいことはもうやるしかないですね!それしかないです。
池田さん(妹)兄妹で始めて不安なこともあるんですけど、この開業を通じて分かったことは、やっぱり周りの方に支えられてるっていうのが、すごい感じたことで自分が迷っている時は、どんどん周りの方、M&Aオークションさんでもいいし、身近な人にどんどん相談していろんな意見を聞いて決断するっていうのも手だし、自分の強い気持ちを持って決断するのも大事だし、
楽しみながら頑張ってください!
蕎麦食堂いけちの店舗情報
店名:『蕎麦食堂いけち』
業態:蕎麦屋
住所:〒173-0004 東京都板橋区板橋2丁目61−4 板橋マリオン 1F
アクセス:東京都交通局三田線板橋区役所前駅 徒歩1分
営業時間:9:00~19:00
※営業時間は予告なく変更になる場合があります
オープン日:2023年4月24日
インタビュー動画: 以下からインタビュー動画をご視聴頂けます
編集後記(開業コンサルタント大森から見たポイント)
個人店とチェーン店との違いを改めて整理していくと、
1.チェーン店とは異なり、個人店の場合「知名度ゼロ」の状態からのスタートになる
そのため認知促進や新規集客の方法については、事前にしっかりとした検討が必要となります。
2.お客様の反応を見てすぐに改善の手を打てるというのが個人店の強みである
お店が提供する商品、接客、サービスに対する反応が全てダイレクトに返ってきますので、その結果を受けて、いかに早く適切な改善策を実行できるかが、成功、失敗を分ける大きな鍵となります。
3.良い結果が得られた時の”喜び”や”やりがい”がチェーン店に比べて大きい
その喜びややりがいをモチベーションにして、コツコツと地道な努力を続けていくことが大切だと思います。
チェーン店での実務経験を経て、独立開業を目指される方も多いと思いますが、個人店として開業する場合、個人店ならではの考え方・戦略が必要となりますので開業に向けて何か1つでもご不安やご心配がある方は、ぜひ当社の無料セミナーや無料個別相談にお越しいただければと思います。
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年間300件超、累計6500件以上の飲食店開業をサポートしてきた株式会社M&Aオークションの専門家集団。個人店から大手チェーンまでさまざまな業態・立地の飲食店の開業コンサルティングを行ってきたノウハウをブログで発信します。