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飲食店の中でいわゆる『重飲食』といわれる業態
特に焼肉・焼き鳥・中華・ラーメンなどは匂いなどの問題で開業時に苦労される方が非常に多いのですが、その大きな理由として

■匂い・煙の強い業態が入居できる物件が少なくなかなか物件が見つからない
■匂い・煙対策にお金がかかりすぎて予算が足りず開業できない

という2点が挙げられます。
今回は重飲食の中でも特に開業時のハードルが高いと言われる炭火を使った業態で、無事に匂い・煙問題を解決し念願の独立開業を実現された『もつ焼き尾勇びゆう』の牧尾オーナーのインタビューを通じて飲食店における匂い・煙問題とその対策法について考えていきましょう。

創業の経緯

(左)もつ焼き尾勇 牧尾勇希オーナー  (右)開業コンサルタント 大森 智幸

(大森)今回は2024年11月29日にオープンした「もつ焼き尾勇」にて、そのオーナーの牧尾さんにお話をお伺いします。牧尾さんよろしくお願いします。

(牧尾さん)よろしくお願いします。

(大森)牧尾さんと最初にお会いしたのは、牧尾さんの先輩がオープンするところを当社でお手伝いさせてもらった際に、そのお店の立ち上げスタッフとして牧尾さんがいらっしゃったんですよね?

先輩も牧尾さんも、結構長くもつ焼きのチェーン店で働いていらっしゃいましたが、先輩が独立する時に一緒にそこにスタッフとして入ったのは、牧尾さんもその時からある程度落ち着いたら「自分も独立する」っていう思いで一緒にやられた感じですか?

(牧尾さん)そうですね。自分もいつか独立するつもりで、お店を立ち上げることを経験したくて、一緒にやりました。独立については想定よりは少し早くなりましたけど。

(大森)元々はどれぐらい先輩のお店で勤務される予定だったんですか?

(牧尾さん)3年ぐらいはそこで働いて、ちょっと落ち着いてから・・・とは思っていましたね。元々「独立」は頭にあったんですが、お店を作るところ(立ち上げるところ)も見たかったので。

(大森)結局その予定より少し早まったってのはどういう経緯でしたか?

(牧尾さん)一番はやっぱりちょっと気になる物件があったっていうのが理由ですね。
物件の内覧とかはしてないんですけど、先輩のお店を立ち上げている時から、一応サイトとかで探してはいて、たまたまちょっと気になるところがあったっていうのがきっかけですね。

お店の紹介

(大森)もつ焼き尾勇さんのこだわりとか特徴を簡単に教えてもらえますか?

(牧尾さん)コンセプトとしては、芝浦直送の新鮮なもつを使ったもつ焼き、もつ刺し、もつを使った料理など、「もつ」の専門店ですね。

(大森)もつ焼きは炭でやってらっしゃるんですよね?

(牧尾さん)そうですね。

(大森)芝浦の食肉市場から朝仕入れたものを、その日に出しているっていう感じでしたっけ?

(牧尾さん)そうですね、朝つぶれたものをその日のうちに毎日芝浦に直接通って取りに行ってます。

(大森)毎朝ほぼ毎日仕入れに行ってる感じですか?

(牧尾さん)平日は毎日行ってます。

(大森)やっぱり新鮮なもつってその日に食べるのと翌日に食べるのは全然違いますか?

(牧尾さん)違いますね。

(大森)そこが一番のこだわりっていう感じですか?

(牧尾さん)そうですね、一番はやっぱりもつは鮮度だと思います。

物件について

(大森)物件にもちょっとこだわりがあったというか、物件を探す範囲をある程度最初から決めていらっしゃった感じでしたよね?

(牧尾さん)そうですね、範囲としてはやっぱりお肉の仕入れが芝浦、品川駅ということと、自宅もちょうど京急線沿線であったのでその近くですね。
やっぱり毎日仕入れに行くことってなりますとその取られる時間もありますので。
品川からやっぱりアクセスがいいところで探してましたね。

(大森)今回思ったよりスムーズに物件は見つかったんですけど、焼き鳥とかもつ焼きとかやる方で、特に炭を使う業態って、匂いとか、煙、火事のリスク等が大きいので、特に家主さんから一番嫌われる業態なんですよね。

最初にお会いした時に「物件探しは結構苦労しますよ」ってお話しさせてもらったと思うんですけど、元々ここ(梅屋敷の物件)は焼き鳥をやってたんですよね?

(牧尾さん)そうですね。

(大森)居抜きの状態や立地、家賃などの観点から「ここでイケそうだな」っていう感覚はあった感じですか?

(牧尾さん)はい、そうですね。
住宅街になりますけど、こういうところでゆっくりお客さんをつけていこうかなという面では自分に合ってるかなと思っていました。

(大森)ワンオペであんまり大きな箱だとやっぱりオペレーションが回らないですし、ワンオペでやっている以上、クイックオペレーションにも限界(売上の限界)があるので、家賃を少し抑えた物件を選び、落ち着いた環境で経営をするというところですよね。
立地とか家賃はしっくりきたので「ここでやりたいです」と申し込んでみたら、家主さんから『炭でやるんだったら、「ダクトの対策」はしっかりやってくれないと』という話があって。。。

匂い・煙対策について

通常、焼き鳥とかもつ焼きなどの重飲食業態で、「匂い・煙」問題の対策としては、ビルの屋上までダクトを上げてしまうという処理が、実は一番クレームが少なくなるやり方なんですけど、今回の物件は屋上にダクトが上げられないという事情があって、それ以外の方法で何とかするしかないっていう感じでしたね。

(牧尾さん)はい、そうですね。

(大森)内装屋さんも含めて色々と協議検討を進め、最終的にはどういう処理で行いましたが?

(牧尾さん)アクアフィルターという水のフィルターに煙を通すダクトを入れました。
(大森)その上に脱臭機も入れてますもんね。
かなり対策を練って、それを家主さんに提示し、家主さんから『そこまでやるんだったら』ということで、了解をもらって、ようやく出店に至った感じでしたよね。

開業から約2ヵ月が経ちますが、実際にどうですか?煙の出方というか処理とか、近隣からクレームとか来たことないですか?

(牧尾さん)ないですね。
自分も焼いている時、試しにちょっと表回ってみたりとかほぼ煙は出てないかなという状態なので、それに関しては入れて良かったなと思ってますね。

(大森)私もすごく気になって、この間お食事来させてもらった時に、食べてる途中で一回外に出てダクトのところに行ってみたら、匂い・煙が全くないわけじゃないですけど、対策していないお店と比べると圧倒的に少ないですね。
これだったらクレームになるリスクは少ないだろうなという感じでしたね。

その分、お金かかりましたけどね。

融資申請について

(大森)今回融資のところもお手伝いさせてもらいましたが、融資そのものはスムーズでしたよね。

(牧尾さん)そうですね、と言ってもやっぱり大森さんに色々助けられて、僕は本当に正直面談も大森さんについていっただけのようなもので気づいたら終わっていたというような形だったので。

(牧尾さん)本当に一緒に来て頂いてこっちも安心しました。

(大森)結果的には面接もスムーズだったんですけど、それは事前にしっかりと計画を吟味して、本当にこの物件で商売が成り立つか?というという視点で「事業計画書」を作ってみて、「これぐらい売り上げ出さないと自分の求める給与・所得は望めない」という損益分岐点の観点から、一日何組に来てもらわなきゃいけないのか?などを一緒に考えて、これだったら出来そうというところまで打ち合せした内容で、しっかりと精査した事業計画を書類にまとめて提出をしているから、結果的に書類を見た段階で、金融機関の担当者も「ここまでしっかりと計画が作れる人であれば大丈夫」という判断があったと思います。
事業計画がしっかりしていることと、もう一つ、牧尾さん自身がその計画を実現できるだけのキャリアをしっかり積んでいらっしゃったことが、融資面接や融資審査がスムーズに進んだ大きなポイントですね。

牧尾さんのキャリア

(大森)飲食業界のキャリアで言ったら、トータルで何年ぐらいになりますか?

(牧尾さん)トータルだと15年ぐらいで、もつ焼き自体は13年ですね。

(大森)飲食キャリアのほとんどがもつ焼きでやって来られていた感じですね。

芝浦市場について

(大森)芝浦市場から食材を仕入れるっていうのもそう簡単じゃないですよね?

(牧尾さん)そうですね。
一般の方は中に入ることはできても、中々取引っていうのはしてもらえないですし、同じような金額では出してもらえないですね。

資金繰りについて

(大森)調達できた資金の中で何とか収まるように、内装屋さんにも協力してもらいましたが、牧尾さんも一部妥協した部分もありますか?

(牧尾さん)いや、でも融資に関して、自分が「このぐらい借りておけば良いかな」と考えていた金額に対して、大森さんの方から「借りれるだけ借りておいた方が良いですよ。」っていう話を頂いて、それですごい助かった部分がありますね。あそこでもう少し融資の金額を減らしていたら正直、資金繰りがちょっと厳しかったと思います。大森さんのアドバイスを聞いていて、良かったなと思いましたね。

(大森)余ったら早めに返してしまえばいいんですけど、足りないって状態が一番怖くて、足りないからもうちょっと貸してくださいってなかなか難しいんですよね。
最初の立ち上げの時って売上もなかなか安定しないので、運転資金をちゃんと残しておくと、今はまだ売上が少なくても、来月再来月でしっかりと売上が上がっていければ大丈夫っていうちょっと心のゆとりというか出来るというか、精神的にも楽になると思うので。

開業予算が予め決まっていると、内装工事に使える費用ってある程度決まってきちゃうので、その中でやれる方法を一緒に内装屋さんにも考えてもらう感じになりますね。

お店の立ち上げについて

(大森)結果的にすごくいいお店が出来たと思いますね。2024年11月にオープンしてちょうど2か月ですが、今のところお客さんの反応とか、お客さんの入り具合とかって、どんな感じですか?

(牧尾さん)まだちょっと認知がされてないかなっていう部分も多分あると思うので、日によってなんですけど、来て頂いたお客様には、結構満足して頂いて2か月でかなりリピートして頂いているお客様もいるので、このまま続けていけば何とかありそうですね。

(大森)私も食べさせてもらいましたけど、これだけこだわったメニューを提供しているので、くめちゃめちゃ美味い!!

(大森)本当に美味しいお店は、お客さんが放っておかないので、じわじわとお客さんの認知が広がって、確実に売上が上がっていくと思いますので、初心を忘れずに、こだわりをしっかり守りつつ、これからもぜひ頑張っていって下さい。

これから開業する方へのメッセージ

(大森)これから開業する人に何かアドバイスや応援メッセージを、ひと言お願いできますか?

(牧尾さん)やっぱり物件を探すところから、例えば、飲食を長く経験したからといって、そういう開業経験ってなかなか出来ないと思います。
例えば、店長で長くやってたとか、料理長で長くやってたといってもやっぱり自分のお店を探すっていうのは初めての経験になると思うので、色々難しいこともありますし苦労することもあると思うんですけど、いざもう立ち上げて自分の店でやっていくってなったら、僕は今ちょっと楽しいので、そこですよね。
自分の思ったことを思った通りにできるっていうのが、やっぱり自分でお店を持って良かったなとまだ2か月ですけど、そう思っているので、ぜひ頑張って自分の目指すお店を作ってほしいと思います。

(大森)そうですね。
僕らもお手伝いしたオーナーさんが開業して少ししてお伺いした時に、独立して良かったです、楽しいですって言ってもらえるのが一番の喜びです。
まだ売上的にはこれからというところではありますけど、でもやりたいことが出来ていて、良いお客さんに囲まれて、オーナーさんが楽しくやれているとお店の雰囲気も良くなっていきますし、来てる人も楽しい気持ちなるんですね。
そこを継続してもらえれば、どんどん良くなっていくと思います。

サポートについて

(大森)ちなみに、今回、物件探し、資金調達、内装工事など、当社にて総合的なサポートをさせて頂きましたが、当社のサポートはお役に立ちましたか?

(牧尾さん)もうサポートなしでは厳しかったなと思いますね。
いろいろ初めてのことが多くて、実際に前のお店で立ち上げから見て数字の面でもこれぐらいで、こういうものだろうなと思ってはいたんですけど、いざ事業計画書をちゃんと作ってもらうと、また色々と見えてくることもあるので、サポートを受けて本当に良かったなと思ってますね。

(大森)牧尾さんぐらい飲食の現場でしっかりと経験を積まれていて、調理技術、接客、仕入先との信頼関係など、多くの強みを持たれている方は、自分の戦う土俵が出来てしまえば本領発揮できるんですけど、お店を作ること自体は初めてのことなので、お店が出来上がるまでに苦労される方がすごく多いですよ。
物件探し、資金調達、内装工事など、ご自身の得意分野でないところはある程度プロの力を借りてでもスムーズに進めていった方が、結果的に良い開業が出来るのかなと思いますね。

最後に

(大森)ここからが本当の勝負というか、本当のスタートになりますので、ぜひ私が入れないぐらいの繁盛店を作ってもらって、「あのお店、私がお手伝いしたお店だぞ」って自慢できる状態にしておいてください。(笑)

ぜひ頑張ってください!また食べに来ますので!

(牧尾さん・大森)ありがとうございました。

もつ焼き尾勇びゆうの店舗情報

店名:『もつ焼き尾勇びゆう
業態:もつ専門店
住所:〒144-0031 東京都大田区東蒲田1-2-15
アクセス
営業時間:不定休 17:00~23:00
※営業時間は予告なく変更になる場合があります
TEL:03-6424-8529
オープン日:2024年11月29日

インタビュー動画: 以下からインタビュー動画をご視聴頂けます

編集後記(開業コンサルタント大森から見たポイント)

今回インタビューにお答えいただいた「もつ焼き尾勇」の牧尾オーナーは、匂い・煙問題を解決するために、焼き鳥店の居抜きを活用。匂い・煙を軽減するためのアクアフィルターを設置。
その対策費用を金融機関からの借り入れでカバーするなどの方法を用いて、スムーズな開業を実現されましたがここで改めて匂い・煙の強い重飲食業態でスムーズな開業を実現するポイントについて整理していきましょう。

1.匂い・煙の強い業態は家主・貸主から嫌われやすい業態であることを理解しましょう
匂い・煙の強い業態は火事のリスクや近隣からの苦情が発生するリスクが高く、また建物の劣化が早くなるというイメージが強いため貸主・家主から嫌われやすい業態であることをまず正しく理解しましょう。
例えば同じ物件にカフェと焼き鳥店が同時に申し込みをしたら、家主・貸主にとってリスクが低いカフェが選ばれる可能性が極めて高いと考えてください。
立地や家賃などの条件の合う物件が見つかったとしても、匂い・煙などの問題で家主・貸主から入居を断られるケースが多くなることをあらかじめ想定して開業準備を進めるようにしましょう。

2.物件を探す際には重飲食可または重飲食の居抜き物件を探すということ
物件を探す際に多くの方が不動産サイトを利用されると思いますが、主要な不動産サイトでは重飲食可という条件検索ができるようになっていますので重飲食可の物件に絞って探していくのが効率的だと思います。
ただし、重飲食可となっていても、匂い・煙の強い業態は不可、焼肉・焼き鳥は不可など特定業種について不可という記載がある場合には、問い合わせや申し込みをしたとしても断られるケースが多くなりますので注意が必要です。
その点、元々匂い・煙の強い業態の居抜き物件であれば、同程度の匂い・煙であれば許容されることが多いため、同業態もしくは類似業態の居抜き物件を中心に探す方法もおすすめです。

3.匂い・煙の対策方法を知り、その予算を確保しておくということ
匂い・煙の対策方法として一般的に用いられるのは「ダクトを屋上まで上げる」、「アクアフィルターや脱臭装置など匂い・煙を軽減する装置を設置する」のいずれかになりますが、どちらの方法にしても数十万から場合によっては数百万のコストがかかる対策となります。
予算に余裕がないとこうした対策を講じることもできませんので、匂い・煙の対策方法とその費用については事前にしっかりと調べ、必要に応じてその資金を調達する方法まで考えておきましょう。

4.匂い・煙の出にくい調理方法やメニューに変更するということ
匂い・煙の出にくいメニューに変更したり、調理方法を工夫して匂い・煙を軽減する方法も有効な手段の一つです。
例えば、炭火ではなく遠赤外線やセラミック等を用いた調理器具・調理方法に変更することで煙・匂いの発生を軽減するなどの方法です。
ただし、匂い・煙対策を意識しすぎて商品の価値が下がってしまったりお店の魅力が落ちてしまったりして、お客さんの満足度が下がる、お客さんに選ばれないお店になってしまってはそもそも商売として成り立たないという本末転倒な結果になりかねませんので注意が必要です。

匂い・煙の強い業態はそうでない業態に比べて開業時のハードルが高くなりますが、そのハードルをクリアしなければ残念ながら開業には至りませんので、開業に向けて何かご不安なことやご心配なことがある方は、ぜひ当社の無料セミナー無料個別相談にお越しいただければと思います。

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